青銀狼の一匹劇場

青銀狼の一匹劇場

第39話 時の竜



玉乗り6兄弟の物語

第三十九話 時の竜

気づけば雲の隙間から、月が明かりを照らしていた。ルミナードからボルトストームを喰らったアクリュの容態はだいぶ回復したが、ユフィルのほうはまだ怪我がひどく回復には時間がかかりそうだ。エルムは暫くユフィルに寄り添っていた。
「きゅ~!きゅ~!」
狼の遠吠えのように、船からアクシスの鳴き声が聞こえてきた。
「アクシス兄さん。…(涙…?もしかしてあの雷最強種を追い払うことができなかったから、悔やんでいるのかな…。)」
こっそりと、マストの陰からレッシュが見ていた。そこにはアクシスが鳴きながらが涙をこぼしている姿があった。もしかして、自分があのときに止めていればと後悔しているのだろうか。レッシュにはそう見えた。アクシスもきっとそう思っているに違いないだろう。でも、内心レッシュも本当は悔やんでいた。気持ちとしては、アクシスと同じだった。片手に握り拳を作っていた。と、アクシスの様子がおかしくなった。両手で口を押さえ、船体から身を乗り出した時だった。
「うっぷ!…@#*$%!!」
バタッ!様子を見ていたレッシュが思わず倒れてしまった。
「アクシス兄さん…船停泊している状態なのに…酔っていたのですか…。」
さっきの涙は船酔いしたせいもあるのでしょうか。

翌日、空は雲が広がる天気となった。暫くしたら雨が降ってきそうな感じだ。どんよりとしたこの天気。ちょっといやな予感もしてきた。
「ここから北東に向かえば、フェアフォレスの森に着く。そこで妖精から話を聞くといい。」
ゴルドが幸運種たちに、次なる目的地の場所を教えた。
「ゴルドはこれからどうするの?」
祠の住処を無くしてしまったゴルドにアクリュが訪ねた。
「新しい住処がみつかるまでは、この海原に居座ることになるであろう。我のことは大丈夫だ。さぁ、行くがよい幸運種の戦士たちよ。検討を祈っておるぞ。」
「ありがとうです。」
行く先は精霊が住むフェアフォレスの森。幸運種たちは、次の目的地へと出発した。

「ねぇエルム。今思ったんだけど、ユフィルを使って空を飛んでいけないの?」
歩いている幸運種たちの後ろに、ユフィルも続いて歩いていた。アクリュが空を飛んでいかないかとエルムに言った。しかし、ユフィルに四匹も背中に乗せるのは限界があった。と、エルムがあることを思いつく。
「う~ん…あ!じゃあお兄ちゃん、アクリュ、レッシュでジャンケンをしてくれる?(ちょっと強引かもしれないけど。)」
エルムに少し笑みが見えた。いったいどんな方法で行くのでしょうか。エルムの言われた通り三匹はジャンケンをする。
「ジャンケン…!」
「あ、アクシス兄さんの負けです。」
「あぁ…僕の負けだよ。」
アクリュはチョキ、レッシュもチョキ。アクシスはパーを出した。
「それじゃ、アクリュとレッシュは乗って。お兄ちゃん、悪いけどうつ伏せになって、尻尾を立ててくれる?」
「こ、こうでいいの?エルム。」
そう言われると、アクシスは不安げにうつ伏せになって、尻尾を立てる。
「そのままじっとしててよ。」
と、エルムはユフィルに乗って指示を出した。すると、少し浮き上がりアクシスの上にくると、ユフィルは足を使って、アクシスの尻尾を掴んだ。
「へ…?わっ!あわわわわ!」
「ごめんねお兄ちゃん。森に着くまで我慢してて。」
徐々に高度を上げ、みんな一緒に森へ向かう。エルムが考えた案。ある意味強引どころか、罰ゲームみたいな感じだ。
「うわぁぁあ!ひ、ひどいよエルム~!」

数分後、幸運種たちはフェアフォレスの入り口に到着した。まずはアクシスを降ろし、次にアクリュ、レッシュと続いてユフィルから降りる。
「あぅ…死ぬかと思ったよ~…。」
「でも、森に早く着いたんだしいいでしょ?」
「わかったよ…それにしても、何か木々が輝いて見える。」
目の前の木々がキラキラと輝いて見える。パッと見ただけでこの森がとても豊かだと分かった。ゴルドが言っていた森の精霊とはいったいどんな精霊なのだろうか。すると、どこからか羽音が聞こえてくる。幸運種たちが上を見上げると一匹の虫がこちらにやって来るではありませんか。でも…何か大きさからして、虫にしてはとても大きく見える。頭には一本の角、まるでカブトムシだ。と、幸運種達の前に着地した。
「ふぅ、ん?何だお前たち。この森に何か用なのか?」
このカブトムシ、どうやら口は聴けるようだ。というよりカブトムシなのでしょうか。
「あ、はい、僕たち冒険の途中で、ここの森の精霊に会う為に来ました。」
珍しくアクシスが驚くことなく質問に応えた。
「マテリア様のことか。俺の名前はラークビル。フェアフォレスを守る時のドラゴンだ。」
「えぇっ!ドラゴンだったのですか?!てっきり虫かと…。」
レッシュが驚いて言った。もちろん他の兄弟も驚いた。大きな身体をしたカブトムシがドラゴンだったとは。
「あまり俺のことを虫呼ばれしないことだ。」
「ごめんなさい。突然のことだったからつい…。」
「まぁいい。ところでお前たち、マテリア様に用があるみたいだが今は居ないぞ。」
今はフェアフォレスの精霊マテリアは居ない。ラークビルが言った。
「どこか出かけているの?」
「マテリア様は今、いろいろと忙しいんだ。戻ってくるのも時間の問題だ。」
ゴルドが言っていた通りだ。めったに会うことができないというのはそういうことだった。
「とりあえず待ってみるです。」
幸運種たちは精霊マテリアの帰りを待つことにした。
「しばらくは時間がかかる。もしよければ森の中を見てみるか?」
やはりまだ時間がかかるみたいだ。ラークビルは少しの時間森の中を見ないかと誘った。
「そうしましょ。」
「少しの間暇を潰せそうだしね。」
ラークビルに誘われ幸運種たちはフェアフォレスの森を見て回ることにした。

「この森はマテリア様と俺以外に、もう一頭のドラゴンで守られている。」
フェアフォレスはマテリア、ラークビルの他に、もう一頭のドラゴンで守られている。このとき幸運種たちは思った。マテリアとそのもう一頭のドラゴンがどんなドラゴンなのだろうかと。
「そのもう一頭のドラゴンはどんなドラゴンですか?」
「もう少しで答えが解る。…着いたぞ。」
すると、耳に水が流れる音が聞こえてくる。幸運種たちが着いた場所、そこには大きな器から流れる噴水があった。
「水がわき出てる。ん?…誰か居るよ。」
噴水の陰に誰か居るのをアクリュが見つけた。と、こちらに気づいたのか。その陰はゆっくりと歩いてくる。
「何だラークビル、ずいぶん早かったんだな。」
「異常は無しだ。」
「また虫…!?」
陰の正体が明らかになり、幸運種たちは同時に驚いた。今度は頭に鋭いハサミを持つ昆虫、いやドラゴン。その姿はクワガタムシの形をしている。
「虫?俺はドラゴンだ。って、ラークビル。こいつらは何者だ?」
「あぁ、入り口でたまたま会ったんだ。何でもマテリア様に用があってここに来たらしい。安心しろ、森を荒らしたりするようなやつらではない。しばらく居座るつもりだからここまで案内してきたんだ。」
ラークビルはクワガタムシのドラゴンに事情を話してあげた。
「僕たち、旅の途中でフェアフォレスの精霊の話を聞くためここに来たです。」
「マテリア様に用があって来た・・・か。っと、言い忘れていたが、俺の名はブレイビル。マテリア様は暫く戻られるのに時間がかかる。それまでに、俺たちのことなどについて話を聞きたいか?」
「うん聞きたい!」
幸運種たちは、ラークビルとブレイビルやフェアフォレスについて話を聞くことにした。
「俺たちは見た目は虫に見えるが、れっきとしたドラゴンなんだ。それに、属性も皆と違って時属性という性質を持っているんだ。世界でも極めて数が少ないとも言われている。今確認されているだけでも、マテリア様とブレイビルと俺ぐらいだろう。だが、ここ最近になって、俺たち以外にも二頭の時属性竜を目撃したという情報もある。詳しいことはまだわかっていないが…。」
自分たちが知っている属性と言えば、光・闇・氷・炎・金・雷・そして無の七つの属性。時属性という属性は幸運種たちも聞いたのは初めてだった。聞いた話から、その時属性竜は数知れないほど極めて少ないドラゴンだという。
「過去の12年前、世界は大戦期あたる年。この頃までは、俺たち時属性竜は数多く存在していた。だが、大戦中に時属性竜は多くの命が犠牲になり、生き残った俺とブレイビル、マテリア様でこの森を守ってきたんだ。」
するとここでアクシスが口を開く。
「ご主人から聞いたことがある。12年前、人々がドラゴンを使ってかつアクアラ争奪戦を繰り広げられていたってこと。そこには確か無のドラゴンが居て、ドラゴンだけでなく人間も食い殺した…その無のドラゴンが原因とみて、3つの秘宝、ペンダントで封じることができた。そして、ペンダントは悪に災いをもたらす鍵となるため、各地に封印をした。そうだよね?」
アクシスは記憶にあたることを、二頭の時属性竜に話した。
「その通りだ。そして、ペンダントの3つのうち大地のペンダントがこの噴水の器で守られているってことだ。しかし、よく知っていたな。」
「あ、偶然に思い出しただけだから、あははは…。」
「そういうことだったか。これで大地のペンダントの在処がわかったぜ。」
何処からか誰かの声がした。と、後ろを振り向くと突如雷最強種が現れた。
「ルミナード!」
またしても雷最強種ルミナードが現れた。しかし、いったいどうやってこの森の中に入ってきたのか。秘宝の在処を知られたからには、フェアフォレスが危ない。

第39話「時の竜」おわり

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: