青銀狼の一匹劇場

青銀狼の一匹劇場

第45話 沈黙の調べ



玉乗り6兄弟の物語

第四十五話 沈黙の調べ

籠いっぱいに入っていた果物を、4匹の幸運種たちはあっという間に平らげた。すると、レッシュがルガウィに話しかける。
「ねぇ、ルガウィ。ちょっとお願いがあるのですが、聞いてくれるですか?」
「どうした、レッシュ。」
「さっきお城に戻って行ったアク、いや、オクルスをここに連れてきてほしいのですが、できるですか…?」
レッシュが頼んだこと。それは、氷幸運種をここに連れてくることだった。どうしても確かめたいことがある。あの氷幸運種がアクティなのかを。
「うぅ…わかった。王子、お城の最上階に居る。何とか連れてくる。」
ルガウィが出した答えはYESだった。でも、あの二頭の竜に見つからないようにしないといけない。
「あ、ありがとうです!」
「レッシュ友達。みんな友達。」
早速ルガウィは王国の最上階へと向かった。二頭の竜、セルシウスとヒールにバレないように…。
お城の最上階に着くと、他の場所にはないバルコニーがあった。と、そこでただ一匹ポツンと夜空の星を見上げている、氷幸運種の姿があった。表情からして、何か思い詰めている様子だった。
「はぁ…何で僕、この王国に居るんだろう…。」
ため息をついて独り言を言った。
「王子、王子。」
氷幸運種の耳に、冷たい風が入り込むと同時に低い声も聞こえてきた。バルコニーからちょっと身を乗り出すと、その下にルガウィがいた。
「君は確かルガウィ。どうしたの?」
氷幸運種はルガウィに聞く。
「王子、ついて来てほしい。伝えたいことある。」
「伝えたいこと?でも、ここで僕に言ったほうが早いんじゃ…。」
それもそう。確かにここで伝えたほうが早い。
「ここじゃ言えない。王子に見せたいものある。ついて来てほしい。」
何とかルガウィは氷幸運種を説得する。
「う~ん…見せたいものがあるなら…じゃあついて行くよ。」
氷幸運種はルガウィについて行くことを決意した。よし、うまくいった。氷幸運種はルガウィの背中に乗った。
そして…。
「あ!ルガウィが戻ってきたよ!」
アクリュが上空に気づいて言うと、他の3匹も空を見上げる。そして、ルガウィが着地すると、背中から氷幸運種が降りてくる。
「あ!………。」
氷幸運種はそっぽ向き、しょんぼりとした顔をした。と、それを見たアクシスが口を開く。
「沈黙するのはやめようアクティ。他の兄弟はごまかせても、僕には通用しないよ。」
やはりこの氷幸運種、アクティのようだ。兄弟の中でも兄分であるアクシスならよく分かっているはず。アクシスは若干脅しをかけるようにアクティに言った。
「……………。」
「アクティ、これまで何があったか、僕たちに話てもらうよ。」
アクシスは追い討ちをかけるように言った。しかし、アクティは沈黙したまま何も喋ろうとはしない。しばらく様子を見ても全く喋らない。と、次の瞬間だった。
「むぅ…アームズブロー!」
ドスッ!と、アクリュが体当たりをした。
「あ、アクリュ!?」
それを見た他の幸運種は驚いた。アクティは吹き飛ばされると、アクリュがすかさずアクティにのしかかる。と、アクリュは何度もぶつ。
「お前なんか…お前なんか…!」
「やめるですアクリュ!」
「どうしたのよ突然!」
慌てて3匹の幸運種が止めに入る。アクリュを引くと、ルガウィはアクティを保護する。
「そこまでだ!」
と、上空から声が聞こえてきた。セルシウスとヒールだ。まずい状況を見られてしまった。このままだと、今度は氷付けだけじゃ済まされない。
「あ!いや…ち、違うです!こ、これは…。」
「言い訳は無用だ!よくもオクルス様に傷を…お前たち無礼者は生かしてはおけぬ!」
セルシウスが怒った口調で言った。
「ルガウィ、何があったかは知らぬが、その者たちを食うことができなかったようだな。お前ができなければ、この私が殺ろう。」
と、ヒールが幸運種たちに向かって一歩踏みだそうとした。
「待つ、ヒール!この者たち悪くない!何も悪くない!」
ルガウィは幸運種たちをかばう。たださっきのは軽はずみの行動。幸運種たちには罪はないと主張する。
「退いてもらおうかルガウィ!さもなくば貴様も…!」
「待って!」
すると、割ってアクティが入る。
「ど、どうなされたのですかオクルス様!」
突然喋ったアクティにセルシウスは驚いた。
「ご…ごめん…セルシウス、ヒール…!ぼ…僕、今まで黙っていたけど…本当は…本当はオクルスでも王子でもないんだ!」
ついに本当のことを二頭の氷竜にぶつけた。これでアクティだということが確定した。
「な…何を申されますかオクルス様…ご冗談は…。」
「これは冗談じゃないんだ…僕の本当の名前は…アクティなんだ!そこにいるみんなは、僕の兄弟なんだ…。」
驚きを隠せないセルシウスはなかなか信じることができなかった。アクティは泣きながら謝罪をした。
「王子ではない…それじゃ王子はいったい何処に…!」
「・・・これでアクティということが分かったね。でも、どうしてアクティが王子と思ったの?」
少し一安心した兄分のアクシスが言った。そんなにアクティとオクルス王子は似ているのだろうか。そのことにセルシウスが話し出す。
「オクルス王子はいつも気楽で、おっちょこちょいな性格です。どちらかといえば王国内に居ることを嫌っていて、いつも外に出たがっていました。ある日、私が王国内を見回っている際、最上階の部屋にオクルス様が居ないことに気づいたのです。オクルス様のことだからまた勝手に雪原に遊びに行ったのだと思いそこへ向かいました。そしたら雪原で氷幸運種が倒れているのを発見して、私は急いで王国へ運んだのです。その幸運種がオクルス様ではなかったなんて・・・。」
セルシウスはがっかりした表情をした。自分が連れて帰った幸運種が王子でなかったことに痛みを感じた。
「きっと少しの時間のうちにすれ違いになったのかもしれないわ・・・。」
つまり、先に外で遊んでいたオクルスが居なくなり、そこへ迷ったアクティが歩いてきて力尽き倒れたということになるのだろうか。これ自身途中で倒れたアクティも、よく覚えてはいなかった。
「大丈夫です、オクルス王子はきっと生きているです!」
レッシュが励ますように言った。
「そうだな・・・オクルス様はきっと生きているはず・・・無礼を叩いたのは我々の方。本当に申し訳ないことをした・・・。」
セルシウスは兄弟達に頭を下げて謝った。でも、もう過ぎたこと。このことは兄弟達も全く気にしなかった。
「今更分かっても仕方ないです。皆でオクルス王子を探せばいいです。」
レッシュが一声掛けた時だった。
「キキキキ、リオートの王子ならもうとっくに死んでるぜ。」
奇妙な笑い声が聞こえてきた。また上空を見るとドラゴンが居た。しかも変わった身体をしている。4つの手足には、長い二等辺三角形のような武器を身につけていて、くっつければ四角錐の槍にもなる身体をしている。それにその竜だけでなく、周りには氷の弱点である炎属性のドラゴンも何頭か飛んでいる。
「何者だ!」
セルシウスがその竜に聞く。
「キキキ、俺の名はトライザード。ネルヴァ様に仕えし無のドラゴンだ。ご命令によってこの王国を滅ぼしに来たんだよ。」
ネルヴァに仕えし竜。着実に奴の動きも整ってきているということだろうか。しかし、このドラゴン、新種の無属性のオーラを感じる。
「貴様、オクルス様が死んだと言ったな。どういうことか説明してもらおうか!」
ヒールが先ほどトライザードが言った言葉に疑問を持って聞く。
「なぁに、簡単なことだ。オクルスは俺がさらって、今上空に飛んでいる炎竜の餌食になったんだよ。灼熱の炎に炙られながらな。ま、これもこの王国を滅ぼすためのことだからな!ハハハハハ!」
オクルス王子が殺された!?ヒールの頭の中で見えない光が走った。
「くっ・・・アイス・・・!」
「待ってヒール!」
攻撃を仕掛けようとしたヒールをアクティが呼び止めた。
「(オクルス様・・・。)・・・どうしてですか!」
一瞬オクルスが浮かび上がった。目の前に居るアクティがオクルス王子と感じたのだ。
「ここは皆で戦おう。幾つかに分かれて、このリオート王国を守ろう!」
さすがにいきなり攻撃を仕掛けるのはまずい。アクティはそう思ったのだろう。それに敵はトライザードだけではない。何頭ものの炎竜も居る。ここは幾つか分かれて戦ったほうがいい。
「分かりました。では、2頭ずつに分かれ、私はセルシウスと共に戦います!」
アクティの意見に承知しヒールはセルシウスと共に戦うことにした。
「さ、僕たちもこの王国を守ろう!」

第45話「沈黙の調べ」おわり

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: