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青銀狼の一匹劇場
第46話 壊された結晶
玉乗り6兄弟の物語
第四十六話 壊された結晶
他の幸運種たちは戦闘体勢を整える。と、一頭のドラゴンがこちらに近づいてくる。
「ユフィル!」
エルムのパートナーでもあるユフィルだった。ヒールたちに捕まる前に、間一髪逃れていて辺りを数時間回っていたようだ。
「心配していたのよ。でも、無事でよかったわ。」
「これでまた戦力が増えたです。」
ユフィルが再び加わったことで戦力が増した。これでちょっとは楽になりそうだ。と、密かにそぉ~っとアクシスが何処かへ行こうとしていた。それをエルムは見逃さなかった。
「お兄ちゃ~ん?」
「(ギクッ!)な…何?エルム…あはははは。」
ギュゥッ!エルムはアクシスの頬を引っ張る。
「何度も言わせないでよね!もう。」
「痛たたたた!ご、ごめんなさい!ごめんなさい!」
「私はお兄ちゃんと一緒に行動するわ。ほら、早く乗る!」
エルムに言われた通りアクシスはユフィルの背中に乗る。
「それじゃ僕はルガウィと一緒に戦うです。」
「レッシュ、一緒に戦う。」
レッシュはルガウィと共に行動することにした。残ったのはアクティとアクリュだけだ。しかし、二匹とも沈黙したまま喋ろうとはしない。まださっきのことを気にかけているようだ。
「…僕は一人で戦うよ…。」
と、アクリュが一言言った後、アクティの下を離れようとした。
「…待ってよアクリュ!」
側を離れようとするアクリュをアクティは呼び止める。その言葉に反応して、素直にアクリュは立ち止まった。
「ごめん…本当にごめん…。あのとき本当のことが言えなくて…。」
「じゃあ何で言おうとしなかったんだよ!」
こっちはあと少しで死にそうになったんだ。これだけはアクリュ自身に怒りはあった。
「そ…それは…。側にセルシウスとヒールも居たし…。」
セルシウスとヒールが居る中、アクティはあのときなかなか自分のことを言い出すことはできなかった。むしろ言いづらかっただろう。
「…もういいよ…。」
「え…?」
アクティはきょとんとした表情をした。
「もういいって言ったんだよ…ほら、みんな戦っているんだし、僕たちも急ごう。」
許してくれたのか、そうでないのか。微妙な感じでよく分からずアクリュは後ろを振り向いて言った。鼻をすする音をちょっと立てて、泣いているようにも伺える。
「アクリュ…うん、分かった。」
とりあえずアクティとアクリュの見えない傷は治ったようだ。さぁ、王国を守らなければ。
一方、こちらはセルシウスとヒール。無の竜トライザードとにらみ合いになっていた。他のドラゴンたちは炎竜たちの奇襲を止めるべく戦っている。
「オクルス様をどこへやった…。オクルス様は何処にいる!」
ヒールが大きな氷塊を投げつけるように、トライザードに言う。王子は生きている。そう言い聞かせるように言うのも相手は敵。
「だから言っただろ?リオートの王子なら死んだと。」
「信じぬ!貴様の言うこと、誰が信じるものか!」
間をとることなくヒールが怒鳴りつける。オクルス王子は生きているんだと。
「俺がせっかく伝えているのに分からない野郎だな。ならばそれを証明するために、お前等も天へ送ってやるよ!」
と、次の瞬間ヒールの周りに透明な光が現れた。
「くっ…!(何だ…?一瞬重りに圧された感じがしたが…。)」
ヒールには何か、重石を乗っけられた感覚がした。既にトライザードが何か仕掛けたのか。見ていたセルシウスにも緊張が走る。
「どうやら気づいていないみたいだな。今俺はお前に、祈りにかからないように無垢の呪文を唱えたのさ。」
「祈りに…かからないだと…?」
いったいどういう意味なのだろうか。
「祈りの結界。つまり、氷の呪文精神統一の調べ等はできなくなったってことだ。ハハハハハ!」
祈りの結界…やっかいなものを受け取ってしまったようだ。自分に祈り技がかけられないとなると、やや不利な状態だ。
「ここは私がやつの動きを封じて…。」
「待てセルシウス。…既に相手も祈りの結界を張っている…打撃封じや魔法封じは効かない…。」
ならば此方もと、セルシウスがトライザードの攻撃を封じようと試みるが、既に相手も自分に祈りの結界を張っていた。氷属性特有の祈り技、打撃封じの調べや魔法封じの調べは効かない状態だ。
「お前たち氷竜の動きなんざお見通しなんだよ。そっちの亜種が精神統一をしようたって同じこと。すぐに俺の不信の言葉でかき消される運命だからな!串刺しになりな!」
と、トライザードは身体の形を変え、四角錐になった。勢いづいてセルシウスとヒールに襲いかかる。ボディパニッシャーだ。いきなり強烈な技をしかけられるが、二頭はうまく交わした。
「…うっ!」
「ヒール!」
どうしたのか。ヒールは少し痛みを感じた。確かによけたはずなのに、ヒールの身体から少し出血していた。どうやらトライザードの身体がかすったようだ。
「どうした。反撃してこないのか?いや、できないだろうな。この俺を受け止めようとすれば串刺しになるのだからなぁ。」
下手に反撃を狙おうとすれば、大きな槍で串刺しになる恐れがあった。アサシンニードルぐらいに恐ろしいやつだ…。ここはうまく魔法技で攻めるしか方法はなかった。
「白き霧に潜む冷たき氷の精霊よ。凍える息吹を巨大な氷柱に変えよ!アイスバーグスピア!」
と、セルシウスが氷魔法最大の技、アイスバーグスピアを放った。
「ふっ、まんまと罠にかかってくれたな。その技を逆に返してやるよ!」
すると、トライザードはすぐさまにシールドを張った。反射の盾か…いや、違う。反射の盾にしては色が少しにじんでいる。
「まさか!危ないセルシウス!」
「もう遅いんだよ!ファイアテンペスト!」
ヒールがセルシウスの前に割って入り、シールドを張る。セルシウスが放ったアイスバーグスピアが、逆の属性ファイアテンペストとなって返ってきた。トライザードは反転の盾を張ったのだ。ミシッ、ミシミシッ!と、ヒールのシールドにヒビが入る音がする。
「くっ…耐えるのだ!………うぁぁぁあ!!」
ドーン!と、大きな爆発音が響き渡る。シールドが砕け、煙に包み込まれるとヒールは雪原へ落下していった。
「ヒール!…くっ…よくもヒールを…!」
「ハハハハハ!自ら庇いにくるとは馬鹿な野郎だな。」
ヒールが戦闘不能となってしまったため、トライザードとセルシウスの1対1になってしまった。更に不利な状態になってしまった。
「(どうすれば…どうすれば動きを封じることが…。)」
祈りの結界がある以上、攻撃を封じることはできない。どう攻めればいいのだろうか…。すると次の瞬間だった。トライザードの横から水色の光を纏ったドラゴンが体当たりをしてきた。だが、トライザードはすぐにまた四角錐の形になり、見事に体当たりを防いだ。
「不意打ちとは卑怯な真似だな。」
トライザードに体当たりをしたのは、氷最強種のルガウィだった。一緒にレッシュも乗っている。
「お前、許さない。ヒール、倒した…許さない!」
どうやらルガウィはヒールが落下するのを見ていたようだ。
「活気のいい氷最強種だなぁ。まぁ、お前も後でじっくり料理してやるよ。ハハハハハ!」
「うぅ…グォアア!」
と、トライザードの言ったことに頭にきたのか。ルガウィは再び打撃技で攻める。もう一度スペルデストロイヤを打つ。
「同じ手が二度通用すると思うか。愚かな。」
しかし、トライザードはまた四角錐になりルガウィの攻撃を防いだ。と、ここでルガウィはトライザードと組み合いになるとしっかり捕まえる。
「セルシウス、今のうち!」
「なるほど、シールドを使わせないようにしたですか!」
ルガウィがとった行動。そう、相手を捕まえてシールドを使わせないようにする作戦だった。
「わかったルガウィ!ヒールの借り、返させてもらう!マインドブラスト!」
と、セルシウスはルガウィに危害がないようにと、ダメージを受けないマインドブラストを放った。セルシウスは精神を吸い取れば、攻撃を封じられると考えた。ところが、魔法が当たる前にルガウィの体勢が崩れてしまった。すると、レッシュの方を見ると、シールドを張って何かを防いでいた。上から火山弾が降ってきている。炎竜の奇襲、ボルケーノミサイルだ。体が離れトライザードはシールドを張る。今度は普通に反射の盾を張った。マインドブラストはそのまま跳ね返り、セルシウスの精神を吸収したが、同属性の技でそれほどMPへのダメージは大きくなかった。
「うぅ…炎竜、来るな!」
するとルガウィはターゲットを炎竜に変える。それを見たセルシウスはトライザードに打撃技ですぐさま仕掛ける。
「王国のためだ!貴様を倒す!」
すさまじい勢いでトライザードに向かっていく。ハードインパクトだ。
ドスッ!
「…うっ!…(しまった・・・このままでは…。)」
自分へのダメージも大きかったか。セルシウスは力尽きて雪原へ落下してしまった。
「くっ…今のは効いたぜ・・・だが、愚かだったな。」
だが、相手はそれほどダメージを喰らってはいなかった。急所に上手く当たらなかったのだろう。と、トライザードは炎竜のほうに向かって行ったルガウィを追う。
「シールド!…うぅ…うぁあっ!」
「レッシュ!」
と、レッシュのシールドが壊されてしまった。残った一発の火山弾が当たってしまい、レッシュは怯んでしまった。更に炎竜の奇襲が続く。
「ブリザードストーム!」
何とかルガウィが1頭1頭氷付けにしていくが、次から次へと炎竜が襲いかかる。と、ルガウィはレッシュを抱えて王国の最上階へ向かいはじめた。
「レッシュ、ここで待ってほしい。一旦離れよう。」
怯んでいたレッシュをバルコニーに降ろす。一旦離れる作戦に出た。しかし・・・この作戦が大きな誤りになろうとは予想もしなかった。
「ご、ごめんですルガウィ…ちょっと一息いれ…!!ルガウィ危ないです!」
ルガウィが後ろを振り向く前だった。ザシュッ!!…とてつもない大きな槍が刺さる音がした。
「グガァッ!!…アグッ!…。」
何とルガウィの背後から、四角錐になったトライザードが突き刺さって、ルガウィの腹部を貫通していた。おびただしい血が腹部から零れ落ちる。
「料理ではなく、ワインを注いでしまったなぁ。それもよく冷えた赤いワインを。」
「グハッ!・・・。」
と、トライザードはルガウィの身体から自分の身体を抜く。ルガウィは意識を失い地上へ落下していってしまった。
「ルガウィ!!」
バルコニーの柵から飛び出して、レッシュも地上へと一気に駆け下りる。
「愚かな。ふっ。」
そして・・・。
「ルガウィ・・・ルガウィ!しっかりするです!」
「うぅ・・・レッ・・・シュ・・・。」
かすかにルガウィは意識を取り戻した。だが、相当な重傷だ・・・この様子からすれば、ひとときのいやしなんか効くはずがなかった。
「ルガウィ・・・。」
「レッシュ・・・ごめん・・・俺、早く気づけば・・・。」
「ルガウィは悪くないです!悪いのはあいつです!僕がもう少し早く気づいていれば・・・そ・・・そうだ、エルムを呼べば治るよ!」
後ろからものすごい危険が迫ってきていることに気づかず、こんなことになってしまった。もっと早く気づいていれば・・・。レッシュはエルムなら傷を治せると思って、急いで呼びに行こうとする。
「レッシュ・・・いい・・・呼ばない・・・。」
「で・・・でも!・・・呼んでくるから待ってるです!」
と、レッシュが2、3歩踏み出したときだった。
「・・・レッシュ・・・・・・ありがとう。」
「え・・・?」
レッシュは後ろを振り向く。掠れたルガウィの声がレッシュに聞こえた。
「レッシュ・・・友達・・・ずっと・・・とも・・・だち・・・・・・・・・。」
レッシュはルガウィの下に戻る。
「・・・ルガウィ・・・?・・・ルガウィ?・・・・・・ルガウィ、返事をするです。・・・ルガウィ!」
ポタッ、ポタッ・・・レッシュの目から涙があふれ零れ落ちる。ルガウィから返事はもう返ってこなかった。暫くするとルガウィは光の粒子となって天へと昇っていった。せっかくまたここで出会えたのに・・・友達になったのに・・・。
「うぅ・・・うぅ・・・どうして・・・どうして・・・!・・・うわぁあああああ!!」
すると、レッシュの周りから眩い光が放たれた。この光はまさか・・・!
「今のはレッシュの声だわ!」
戦っていた他の幸運種たちにもはっきりと聞こえた。レッシュに何が・・・。
第46話「壊された結晶」おわり
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