青銀狼の一匹劇場

青銀狼の一匹劇場

第48話 記憶



玉乗り6兄弟の物語

第四十八話 記憶

「そうか…それで旅をしてきたのか…。お前たちなら世界を救うことは可能だ。私は信じている。」
ヒールは冷静な口調で言ったが、内心は驚いていた。こんな小さなドラゴン達に、そんな大きな使命があったとは・・・。
「そういえば・・・セルシウスが見当たらないけど・・・。」
セルシウスが居ないことに気づいたアクシスが言った。
「セルシウスなら、少し南へ下った街に行ってオクルス王子の行方を聞きに言っている。」
オクルス王子の本当の正体がアクティだったことが分かったいじょう、再び探さなければいけないことになった。しかし、そのオクルス王子の行方を、ある幸運種が知ることになろうとは思ってもいなかった。


「さ、今日はもう寝よう。」
今日一日も終わるのが早く感じた。明日にはレッシュが目覚めるといいのだが…。兄弟たちは眠りにつくことにした。
しばらくしてのことだった。一匹の幸運種にある現象が起こったのだ。

「起きて…起きて!」
誰かが起こそうとする。その声はアクティに向けられた。
「う~ん…誰…?」
眠たそうにアクティは目を覚ました。すると、目の前に自分と同じ姿をした幸運種が立っていた。
「よかった、起きてくれて。」
「うわぁっ!だ、誰なの!?」
「しー!あまり大きな声を出さないで!」
突然のことにアクティは思わず驚いてしまった。
「だ…誰なの…?僕と同じドラゴンだけど…。」
「ごめんね驚かしちゃって…申し遅れたけど、僕の名前はリオートオクルス。ここの王国の王なんだ。」
リオートオクルス!?まさか、こんなところでここの王に会おうとは思ってもいなかった。だが、どうも様子がおかしい…リオートオクルスの身体が少し透けて見える。
「リオートオクルスって、君がオクルスなの!?…でも…君の身体…少し透けて見えるけど…。」
アクティにもちゃんと見えていた。
「そう…もう分かってるかもしれないけど、僕は殺されたんだ…無の竜トライザードにさらわれ、炎竜の餌になったんだ…。」
「それじゃ…話は本当だったんだ…。」
トライザードが言っていたことは本当だった。オクルス王子が殺されていたことが…でも、ここにいるヒールとセルシウスにはまだ分かっていない。いま真実を知ったのはアクティだけ。
「アクティ…だったね。君には本当に迷惑をかけてしまって…ごめんね…。」
しばらくリオート王国の王を務めてもらったアクティにオクルス王子は謝った。
「いや、いいんだ。何か僕にとって勉強にもなったしね。」
苦笑いしながらアクティは応えた。でも、王を経験したことにはちょっと疲れを抱いていた。
「ところでオクルス、どうして僕の前に現れたの?」
アクティは問う。どうして僕の前に?
「あ、いや、見えないところでアクティを見ていたからなんだ。それから…最も別の意味でも現れたんだ…。」
「別の…意味…?」
同族性同種族で現れたのも一つで、他にも何か重要なことで現れたのでしょうか。と、二匹に冷たい空気が通り過ぎるのを感じた。
「アクティ、ベッドに隠れて!」
何か気配を感じたのか。二匹は慌てベッドの中に隠れた。と、奥で寝ているレッシュの元に黒い影が現れた。
「クックック、こいつだな。私を呼んでいたのは。それにしても、まだ活きのいい血を持っていそうだ。では、早速いただくとしよう。」
と、黒い影は姿を変えレッシュの口の中へ入っていった。
「まずい!死神だ!このままだと彼の命が危ない!」
何とさっきの黒い影は死神だった。このままだとレッシュの命が奪われてしまう。
「それじゃどうすればいいの?」
「…彼の夢の世界に入るんだ。」
オクルス王子には死神の行き先がだいたいは予測できていた。
「でも…どうやって入るの?」
現実に生きているアクティは聞いた。僕にもできるのかと。
「大丈夫だよアクティ。僕の能力で君も彼の夢の世界に入ることができる。」
「そっか。じゃあ大丈夫なんだね。ちょっと待って、他のみんなも起こすから。」
アクティは他のみんなも一緒に連れて行こうとした。
「待って!…他の仲間を連れて行くことは無理なんだ…行けるのは君と僕の同種同族だけなんだ…。」
その能力はアクティとオクルス王子だけしか行けないものだった。
「そうなんだ…。」
「さぁ、急ごう。このまま突っ立っていると彼が危ない。アクティ、目を閉じて。」
「わかった…。」
オクルス王子に言われた通りアクティは目を閉じた。と、二匹は光に包まれ、レッシュの口の中へ入っていった。

「う~ん…ここは…?」
目が覚めたアクティは辺りを見回した。その風景は何も変わりない夏色の景色があった。と、こちらに誰かが走ってくる。
「ん?…あれは!レッシュ!レッシュ!」
アクティが居る方にレッシュが走ってくる。ところが、レッシュはアクティの声が聞こえなかったのか。そのまま通り過ぎていった。今のは聞こえているはず。
「あ!レッシュ!…僕の声、聞こえなかったのかな…?」
「レッシュには聞こえないんだ。」
と、そこへオクルス王子がやってきた。
「どうして聞こえないの?」
アクティはオクルス王子に聞く。
「ここは彼の夢の中。彼は僕たちの姿は見えないんだ。」
自分たちにはレッシュが見えても、レッシュ自身にはアクティたちの姿は見えない。
「とりあえず、彼が走って行った方に向かおう。さっきの死神が居るかもしれない。」
「わかった。」
二匹はレッシュが走って行った方へむかった。
しばらくして、二匹はレッシュの下に追いついた。
「何をしてるのだろう。」
「多分トレーニングじゃないかな。彼の指先から電気が見えるよ。」
「でも…この風景…どこかで見たことがあるような…。」
アクティはレッシュの夢の中の風景に見覚えがあった。
「あ!アクリュだ!」
すると、レッシュのところにアクリュがやってきた。ちょっと慌ているようにも見える。と、アクリュはレッシュの手を引いて、少し強引に連れて行く。
「何処に行くのだろう。」
再び二匹は歩き出す。少ししてのことだった。
「あれ…?あの木の下に居るの…僕だ。やっぱりこの風景、あのときの…。」
なんと、そこには自分の姿もあった。
「アクティ、もしかしてこの風景に見覚えがあるの?」
オクルス王子は聞いた。
「うん、確か木にボールが引っかかって取れなくなって、アクリュがレッシュを探しに行って、レッシュの電撃で取ってもらったんだ。」
と、アクティがそう言うと、アクティが言った通りにレッシュがボールを取った。
「あ!…本当だ…。」
これにはオクルス王子も驚いた。しかし、何故こんなことが…?
と、突然辺りが暗くなり始めた。まるで舞台の照明が少しずつ消えていくかのように。
「オクルス!暗くなっていくよ!」
「大丈夫だよアクティ。しばらくじっとしてて。」
オクルス王子に言われたとおり、アクティはじっとする。すると、逆に照明が少しずつ点灯していくかのように、今度は周りの景色が秋の風景になった。2匹は同じ動作でレッシュを追うように辺りを見回す。
「あ!あそこに居るよ!」
「ん?・・・レッシュのところにいるのは・・・同族性の最強種・・・何だろう。レッシュの身体も一回り小さく見える。」
そこには幼い頃のレッシュであろうか。その前には同族性の最強種が居た。一体何なのだろうか・・・。

第48話「記憶」おわり

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