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青銀狼の一匹劇場
第50話 熱き死闘
玉乗り6兄弟の物語
第五十話 熱き死闘
「こっちだよみんな!」
アクティはみんなを外へ誘導する。もちろんアクティの身体にはオクルス王子がいるが、ほかの兄弟たちには見えない。
「きっと悪い夢を見て…ぐえっ!」
「レッシュが居ないのにそんなこと言えないでしょ!」
エルムがアクシスにつっこみを入れた。確かに…他の兄弟たちにも分かっているし、ただ事ではない。そして、お城の外にでて少し進んだときだった。
「遅かったなチビ共。」
「ルミナード!」
何とそこに居たのはいつしかのドラゴン、雷最強種のルミナードだった。と、ルミナードの足下にレッシュが倒れていた。嫌な空気が漂う。
「レッシュ!…レッシュに何をしたんだ!」
アクティが大声で言った。
「安心しろ。危害は加えたりはしていない。ただ、こいつの持っている能力を返しに貰いに来ただけだ。」
レッシュが持っている能力を返しに貰いにきた…?これはいったいどういう意味なのか。
「レッシュから離れろ!」
と、アクリュがダガーを取り出しルミナードに投げつけた。すると、カキン!と音を立てると、ダガーは弾かれた。よく見るとルミナードは何もしていないかのように、4匹の幸運種たちを睨んでいる。さっき技を放ってダガーを落としたのだろうか。そうは見えないが、実は一瞬でクイックニードルを放ち、ダガーを落としていた。正に銃を撃った玉のように…。
「御行儀の悪いチビが。」
「うっ!…痛い…身体が…動かない…。」
どうしたのか。アクリュはひざまずき、うずくまってしまった。また見えない速さでクイックニードルを放ち、アクリュの急所を狙ったようだ。
「心配することはない。少し動かないようにしただけだ。」
「大丈夫よアクリュ。私の魔法で治してあげるから。」
エルムはアクリュに付き添った。
「お前…さっきレッシュに『能力を返しに貰いに来た』と言ったけど、もしかして過去にレッシュに会ったことがあるのか?」
アクティがさっきの言葉を問いかけた。
「あぁそうだ。こいつとは過去に面識はある。だが、こいつ自身は俺のことを全く覚えていないだろうな。こいつが幼かった頃に出会ったことだ。しかし、この幸運種に黒の能力を授けた俺も間違いだった。驚愕の疾風と呼ばれていたライズも居た時に。」
(もしかして…レッシュの記憶の中でみた雷最強種は…ルミナードだったんだ!)
そう、このときアクティの頭の中で謎が解けた。レッシュの記憶の中で見た雷最強種の正体がルミナードだったことに。
「何よ、その黒の能力って・・・。」
「簡単に言えば闇の能力だ。元々ライズたちの仲に居た俺がこの雷幸運種を闇に染めようとした。しかし、ライズは俺を監視し種を植え付けることはできなかった。だが、そう俺も甘くは無い。隙を見計らって種を植え付けることに成功した。」
「でも、何か矛盾してるわ!私たちがジュノンを倒したとき、ネルヴァは現れた。それなのにあなたはあの時デスドレイク城に居てもおかしくなかったはずよ!」
エルムが言った通り確かに何かおかしい。初めて見たのは炎基本種濃と出会う前の、山から離れた上空。
「もう忘れたのか?時の振り子の存在を。」
再びこの単語が出てきたことで、兄弟達ははっ!と気づいた。そうだった・・・そっちにはそのアイテムがあったことを。
「そっか・・・それでレッシュは最強種になったりしていたんだ…。」
アクシスの冷や汗がこぼれ落ちる。
「とにかく、早くレッシュを返してちょうだい!」
エルムがルミナードに要求した。
「残念だったな。そう簡単に返す訳にはいかないんだよ。おとなしくしているがいい。」
と、ルミナードは幸運種たちの周りに、電気を帯びた結界を張った。
「…レッシュが…。」
「ついでだ。この幸運種を殺ろうか。」
すると、使えるはずがない技をルミナードはいつの間にか持っていた。片手にソードを持ち、レッシュの喉元を狙う。
「レッシュ-!!」
と、次の瞬間だった。ドーン!という爆音が鳴り響いた。何が起こったのか。
「ほう、貴様、生きていたのか。既に死んでいたと思っていたがな。」
「勝手に殺すとはいい度胸してるじゃねぇか。」
ルミナードの前にメラメラ燃えるものがあった。右手の拳を辛うじて受け止めている。その姿を見ると炎最強種だった。と、右腕をよく見てみると、誰かからか爪で引き裂かれた跡が残っていた。この炎最強種…もしかして…。
「あれは…!バローゼ!バローゼなんだね!」
アクティが言った。あの腕の傷跡からして、炎最強種のバローゼだった。
「久しぶりだなチビ共。また会ったな。」
「ちょうどいいところに来てくれたな。手間が省けたぜ。お前もネルヴァ様から殺れとの命令が出ていたところだ。」
「何寝言いってんだ?チビ共、じっとしてろ!」
バローゼが幸運種たちに火炎弾を放った。ファイアキャノンだ。と、ルミナードが張った結界に当たると見事に壊れた。次にバローゼはレッシュを掴み、幸運種たちの方へ投げる。
「お兄ちゃん!」
「え?ぼ、僕なの!?あ、あわわわ!…うわぁっ!」
何とか無事にアクシスが受け止めた。
「チビ共、手出しはするな。こいつは俺一人で殺る。」
バローゼはルミナードを自分一人で倒すことを宣言した。
「はたして倒すことができるのかな?」
ルミナードは挑発するような口調で言った。
「やろぉ…喰らいやがれ!」
バローゼは目の前でファイアキャノンを放つ。しかし、ルミナードは素早く攻撃を回避した。
「戦闘開始だな。どちらが死ぬか明確にしてやろう。」
既にルミナードは上空へ移動していた。以前、時最強種のマテリアと戦ったときより更に素早くなったように感じる。
「高温の炎色をもつ火炎の精霊よ。目の前の敵を包囲し灰に変えよ。クリムゾンストーム!」
と、バローゼは高温の火炎を放った。普通だったら初めから打撃技で攻めてもおかしくはないのに、何故か魔法技で攻めた。
「愚かな。そんな技、この俺に…ん?」
と、ルミナードがシールドを張ったときだった。
「うぐっ!いつの間に打撃を…。」
高温の火炎の中からバローゼが現れ体当たりをした。
「どうした。火傷でもしたか?今の攻撃でルビーは一つ。煉獄 壱式。」
憤怒の連続攻撃でもある煉獄。この攻撃が三回連続で決まればインフェルノレイドだ。だが、相手はあの雷最強種。そう上手く攻撃が当たるものではなかった。
「もう一ついくぞ!煉獄 弐式!」
まだバローゼの攻撃は続く。次は弐の攻撃。
「ぐぁっ!…この俺が貴様に…ふっ…ふふっ…ふははははは!」
煉獄 弐式も上手く当たった。と、二回目の攻撃が当たったところでルミナードが笑い出した。どうしたのだろうか。
「何がそんなにおかしい…。」
「ふふふ、別におかしくはない。さぁ、三回目の煉獄、見せてみるがいい。」
「狂ったか。ならば望み通り灰にしてやるぜ!」
バローゼの攻撃、煉獄参式。これが決まれば覚醒技を放てる。だが、次の瞬間だった。
「何!ぐぁっ!」
突如バローゼは怯んでしまった。
「残念だったな。スピードなら俺の方が一枚上手だ。」
いつの間にバローゼの後ろに…ルミナードは空を斬るように居合斬りを打った。
(くっ…上手く見切られたか…今度はどう攻める…。)
バローゼは思考した。
「どうした?かかってこないのか?かかってこいよ。」
と、追い討ちをかけるかのように、ルミナードは挑発した。
「やろぉ…!」
バローゼは挑発に乗ってしまった。体中熱い熱気に包まれるとルミナードに突進していく。ヒートブレイクだ。と、上手く当たったかのように思えたが、ルミナードは姿を消し去った。まずい…。
「全て見切っているんだよ!」
と、バローゼの背後に現れ体当たりをした。カウンターによる反撃だ。
「ぐあっ!くそっ…。」
「貴様はもう死ぬ運命になっているんだよ。」
「何だと…お前は俺が……………うがっ!!」
一瞬だった。またすぐにバローゼの背後に回り込み攻撃を仕掛けていた。よく見ると、バローゼの胸の真ん中から氷の塊が突き出ていた。
「こんな技も使えるんだよ。俺はあまり鈍足は好きではないんだ。」
ルミナードが使った技は炎属性の弱点でもある氷の技、ハードインパクトだった。これで勝負はあったかに思えた。
「うがぁあっ!…あぐぁ…。」
「あの世で悔しがるんだな。」
胸部から氷の刃は引き抜かれた。だが、バローゼは地上に落下しなかった。
「まだだ…まだ俺は…!」
「何…?」
バローゼの身体がメラメラと燃え上がる。それもかなり激しく炎が揺れている。
「灼熱の太陽に挑む者。大地に眠るマグマの炎竜よ。全てを焼き尽くし、呑み込み、そして・・・今こそ我が前に姿を現せ!ヒートバイオレンス!うぉぁぁぁあ!!」
ものすごい熱気だ。まるで火山から噴火した大きな火山弾、いや…隕石と言ってもおかしくはない。と、燃え上がる巨体から炎の竜が姿を現した。その竜は相手のルミナードより大きい。これならルミナードを倒せる。だが、これが幸運種たちが見るバローゼの最後の技だった。
「まだ…力が残っていたのか!」
炎の竜はルミナードに猛突進した。ドォーン!
「うわぁぁあ!」
爆風が離れて見ていた幸運種たちに襲いかかった。なんという凄まじい爆発なんだ。その音はかなり遠くに離れた場所でも聞こえた。しばらく幸運種たちは顔を上げることができなかった。2分ぐらい経過したところで顔を上げることができた。
「バローゼ…?…バローゼ…?」
先に立ち上がってアクティが言った。
「いない…?…ルミナードもいないよ…。」
次にアクリュが言った。辺りを見回すと、そこには2頭の最強種は居なかった。すると、いちばん激しく地面に穴が空いているところがあった。そこにアクティが駆けつける。
「アクティ!」
それを見たアクリュも後を追う。
「…バローゼ…。」
そこで見たものは一枚の羽根。燃えているように見える赤色の羽根が一枚落ちていた。
「僕たちのために……。」
一枚の赤色の羽根をアクティが拾った。
(どうやら見つけるものは見つかったみたいだ。それはお前等がくれた・・・。ありがとよチビ共。)
「暑くなんかないよ…もう僕たちだって強くなったんだから…前の僕たちとは違うんだからね!」
ちょっと怒り混じりな口調で、2匹はその羽根に言った。アクティとアクリュをよく見ると、何粒ものの光る雫が落ちていた。
「私たちには分からないけど…アクティとアクリュにとってはとても大切な友達だったのね…。」
「そうだね…僕たちには分からない…けれど、アクティとアクリュの重みは分かる気がするよ…。」
少し離れたところで見ていたアクシスとエルムが言った。二匹の気持ちはアクシス、エルムにも理解できていた。
第50話「熱き死闘」おわり
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