青銀狼の一匹劇場

青銀狼の一匹劇場

第53話 ホーリークラッシュ



玉乗り6兄弟の物語

第五十三話 ホーリークラッシュ

しばらくすると、サーフォーラが着いた場所は都から少し離れた集落だった。いったい何があるというのだろうか。と、サーフォーラは岩場があるところに陰を隠す。すると、人が2人やってくる。
「ここなら大丈夫だろうな。」
「あぁ。で、例の物は持って来たのだろうな。」
「決まっているだろ。それであの炎の竜を騙して俺達はあの金をごっそり頂くってことよ。」
と、一人は大量の硬貨みたいなものを、もう一人の方に渡した。中にはエメラルドの原石などの宝石も入っている。
「この薬が偽物だと気づくまでも楽しみだ、ひゃははは!」
もう一人の方は瓶に入った液体を差し出した。もしやこの者たち、サーフォーラを騙してテイマーであるラッセルの生命を落とそうとしているのか。そうだとしたらサーフォーラは黙っておくわけにはいかない。
「貴様等!どういうことだ!・・・この俺を騙そうとしていたのか・・・やはり気がかりだったのを感づいて正解だったな。」
身を潜めていたサーフォーラが出てきた。この者たち、ラッセルの容態を診察した者たちのようだ。
「お前は!・・・ちっ・・・話を聞かれていたか・・・。」
すると2人は戦闘体勢をとった。人間がドラゴンに立ち向かおうというのだろうか。
「人間がドラゴンを相手しようというのか?面白い、勝てるのか?」
若干サーフォーラが挑発するような口調で言った。だが、2人の様子がおかしい。
「ふふふ・・・人間だぁ?俺たちがそう見えるか?そう思ってくれて歓迎だな。」
「俺たちの本当の正体を見せてやるよ!」
何ということか。2人の背中から翼が生えてきたのだ。徐々に身体も少しずつ変形していき、ついにはドラゴンになってしまった。
「な・・・そ、そんなバカな・・・人間がドラゴンになっただと・・・!?」
「いいや、その逆でもいいだろうな。俺たちは人間にも変身できる竜でもあるんだよ。」
(何なんだいったい・・・竜が人間に・・・?普通ではありえないこと・・・しかし、こいつらの身体、全身黒色で何の属性か特定ができない・・・。)
2頭のドラゴンを見ると全身黒色の身体をしていて、鋭く光る赤い瞳を持っていた。それは闇属性であるのかそうでないのか、特定する事が不可能だった。
「・・・!!・・・身体が動かない・・・!」
サーフォーラが少し動こうとした。しかし、身体が反応せずに座り込んでしまった。もしかしていきなり不意打ちにあってしまったのか・・・。
「まずは奇襲成功。さて、どうしてやろうか。」
いきなり見えない攻撃をしたのか。何が起こったのかサーフォーラには分からなかった。
「何故動かないんだ・・・。」
「さぁ、どうして動かないんだろうな。」
「ぐぅ・・・ダメージはそこまで大きくないはず・・・。」
多少反動するダメージを受けたようだが、それほど大きなものではない。と、もう一頭のドラゴンがサーフォーラの背後に回りこんだ。
「すぐに答えを教えると面白くねぇから少し遊んでやるよ!」
「うがぁ!ぐぁぁぁぁあ!」
どうしたのだろうか。サーフォーラが今度は苦しみ始めた。敵の竜はサーフォーラに全く接触はしていないのに。
「どうしたんだ?俺はまだお前に触れてすらいないぞ?ふはははは!」
「ぐぅっ・・・このやろう!」
と、力を振り絞ってサーフォーラは正面に居る竜に火炎弾を放つ。
「何かしたか?いま何かすり抜けていたようだが。」
「な、何だと!ファイアシュートが・・・!ぐがぁっ!ぁぐぁぁ!」
なんとサーフォーラが、正面に居る竜に放った火炎弾は、相手の身体をすり抜けていったのだ。さらにサーフォーラはもがき苦しむ。
「そろそろ解答をだしてやろうか。俺は不死の身体を持つ竜。つまり、死んでいる身体でもあるが、この通り本物の肉体が備わったように生きているんだ。」
「そして俺は本物の肉体を持つ竜。何故おれがお前に何も触れずに苦しませることができるのか。それはお前の後ろにある。」
と、言われたとおりサーフォーラは後ろを見る。それを見てサーフォーラはやや驚いた。
「な・・・何なんだこれは・・・これで俺の動きが封じられていたのか!」
「そういうことさ。この針がお前の動きを封じたのだ。変身を解いた後すぐにな。」
人間から竜に姿を変えた後、知らないうちにサーフォーラの影に針を刺したという。さすがのサーフォーラにもこれには気づかなかった。
「くっ・・・殺るなら殺りやがれ!」
「随分と素直だな。ならお望み通り殺ってやるよ!」
「(すまない・・・ラッセル・・・!!)」
二頭の竜がサーフォーラに襲いかかる。もはやこれまでか。
「待ちなさい!!」
と、上空の方から眩い閃光弾が二頭の竜めがけて飛んでくる。
「うあっ!・・・ぐぅ・・・誰だ!」
一頭の竜の方が上空を確認する。すると、もう一頭の竜に異常が起きる。肉体自身を持たない竜の方だ。
「うがぁあぁ!!な・・・何だこの光は!!・・・お、俺の身体がぁ・・・!ぐぁぁぁぁ!!」
少しすると肉体を持たない竜は粒子となって消えていった。と、上空から一頭の竜が降りてくる。鳥のようなドラゴン、ユフィルだ。その背中にエルムも乗っている。
「聖なる光は闇を浄化せん。」
「邪魔をしやがって・・・。」
エルムはサーフォーラの下に駆け寄って状態を確認する。
「大丈夫?」
「あぁ、外傷はないが少し身体が重くなっただけだ・・・。それにしてもよく俺の居場所がわかったな。」
サーフォーラはエルムがここだと分かったことにちょっと驚いた。
「あなたが渓谷の集落に行くのをこの子が見ていたの。ちょうど寝ていたところ、目が覚めて私も気づいて追いかけてきたのよ。」
ここまでたどり着く前のことをエルムは話してあげた。もしかすると嫌な予感がしたこともあってのことなのだろうか。そうだとしたら、今この場で正に的中だ。
「くっ・・・二対一になっただけだ・・・勝負はまだついてはいねぇぜ。」
「勝負なら見えてるわ!あなたの負けよ!」
と、エルムが強気な発言で単刀直入に言った。もう勝負ならついていると。エルムとユフィルを見ると、周りに光の精霊が現れていた。これは幸運の予感であろうか。エルムはやる気十分だ。
「な・・・何だと!俺の負けだと?勝負はこれからだろ。」
「まだ分からないみたいね。答えを今から教えてあげるわ!」
「言わなくてもこっちは分かってるんだよ!死にな!」
エルムに黒竜が襲いかかる。でも、エルムはしっかりと冷静沈着に落ち着いていた。
「光の破裂は聖の意。魔と誘導し、閃光に輝く裁きを今与ええよ!」
と、エルムとユフィルも黒竜に向かって突進していく。そして両者の胴体がぶつかったときだった。
「ユフィル!」
ユフィルがバランスを崩して怯んでしまった。
「ふっ、俺の勝ち・・・ぐはっ!・・・な、何だと!・・・この光は!」
黒竜の身体から眩い光が放たれ始める。これはいったい・・・。
「そんな・・・そんなはずは!・・・ぬぁぁぁあ!!」
閃光は更に眩くなり、やがてそれは爆発したように黒竜の身体を打ち消した。
「光は私たちを導いた。邪悪なる心に裁きを与えん。ホーリークラッシュ・・・。」

何とかサーフォーラは危うくなったところの危機から救われた。もしエルムが目を覚まさなかったらどうなっていたことか・・・。ピンチになって助けてもらったエルムにサーフォーラは感謝した。後にサーフォーラはエルムだけに薬の件について話す。ラッセルの病が治らないことに、サーフォーラが街の人から診察を受けてもらおうと頼んだのが、先ほど倒した二頭の竜だった。サーフォーラはこの二頭の竜が最近怪しいことに気づいて今日、後を追って調べることにしていたのだった。もちろん予め、配達の途中にここに集まることは収集済みであった。しかし、薬が消えてしまっては・・・。がっかりしながらサーフォーラとエルムとユフィルは日が昇らないうちに小屋へと戻っていく。そして再び眠りにつくのであった。
次の朝がやってきたときのことでした。幸運種たち、そしてサーフォーラが目を疑うような表情をすることが起きてしまう。
「ねぇみんな!起きて起きて!」
「ううん・・・どうしたのですか・・・?」
大きな声で竜たちを起こすのはラッセルだった。いったいどうしたというのでしょうか。
「どうしたんだ?朝から大きな声をだして・・・って、ラッセル!?」
「サーフォーラ、僕身体が何か昨日よりすごく軽くなった感じがするんだよ!息苦しさも全くないんだよ!」
「何!本当か!でも、念のためグレンテルバレーの人に見てもらおう。早速街に行こう。お前たちもついて来てくれ。」
と、サーフォーラの言うとおりに幸運種たちもついていくことにした。
しばらくして、みんなはグレンテルバレーの街に到着し、ラッセルの容態を診てもらうために、一人の医者がいるところを訪れた。15分ぐらいして・・・ラッセルの診察が終わる。
「どうだったんだ・・・?」
サーフォーラが聞く。
「・・・もう大丈夫だって!」
「そうか、それならよかった!本当によかったよ・・・何とかサンズマリエントに間に合ったな。これもお前たちのおかげだ。本当に助かった。感謝しているぞ。」
サーフォーラはお礼の言葉を幸運種たちに贈った。自分のテイマーであるラッセルを救ってくれて本当に助かった。
「いいのよ、気にしないで。テイマーの病が治っただけで、私たちはホッとしてるし本当によかったわ。きっとあの竜を倒したからかもしれないわね。」
「あの竜・・・って?」
「あ!何でもないの、あはは・・・。」
エルムは昨日の夜サーフォーラと一緒に黒竜と戦ったことを隠した。深夜に他の兄弟たちには気づかれないように行ったためだからだ。
「できればお給料もらえたら・・・ぐえっ!」
「バカ!」
と、エルムがアクシスにつっこみを入れた。それを見ていたみんなは面白そうに笑った。
また一つの贈り物を届けることができたようですね。

第53話「ホーリークラッシュ」おわり

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