青銀狼の一匹劇場

青銀狼の一匹劇場

第55話 真夏のハーブティー



玉乗り6兄弟の物語

第五十五話 真夏のハーブティー

「どうしてそんなに驚くの?サーフォーラの知り合いなの?」
「知り合いも何も、ギードは前回のサンズマリエントで優勝してる竜だ。あんな強豪の竜と話をしたのか…運がよすぎる。」
なんとその金亜種濃竜ギードは前回のサンズマリエントで優勝を飾った竜だった。それが今年もここグレンテルバレーに居る。サーフォーラが驚く訳が二匹の幸運種にしっかり伝わった。
「そうだったんだ…僕と同じ属性とはいえ、前回のチャンピオンだったなんて…。」
アクリュも同じ属性とはいえ、内心驚いていた。
「とにかく他の幸運種たちを捜そう。まだ時間はあるけど、日が沈む前までには見つけないと。」
「大会のルールとかの話は後だ。まずはおまえたちの兄弟二匹を捜すぞ。」
ひとまず二匹の幸運種を見つけることができた。残りはエルムとレッシュの二匹だけ。
だが、街中探し回ったが、エルムとレッシュの姿は見つからなかった。時間だけが過ぎていき、日没を迎え、空には星がキラキラ光始めていた。このままでは危険な臭いが漂っていく。

「う~ん…ウォール見つからないです。」
エルムとレッシュはまだウォールの行方を追っていた。すっかり日没を迎えていてるのに他の兄弟二匹とラッセルとサーフォーラのことが頭から離れているようだ。
「困ったわ…どこに行ったのかしら…。」
少しずつエルムとレッシュに焦りの色が見え始める。と、突然ユフィルが方向転換をした。
「ちょ、ちょっとユフィル!どこに行くの!?」
ユフィルは全くエルムの言うことを受け入れようとはしなかった。いったいどうしたというのでしょうか。
「もしかして、ウォールの居場所が分かったのかもしれないです。」
レッシュがユフィルはウォールの居場所が分かったとみて捜査し始めたのではないかと思ったのだ。その方向は街外れにある森林だった。少し進むとやや明るい灯火が見えてきた。もしかすると…ユフィルは距離をおいて森に降り立った。確かに先の方には灯火がはっきり見える。誰かが焚き火でもしているのだろうか。茂みを通りながら気付かれないようにちょっとずつ前進していく。すると、何やら楽しげな声が聞こえてくる。
「ほら!きれいだろ!打ち上げ花火もいいけど、小さな花火だってきれいなんだぞ。」
するとそこには楽しく線香花火をする炎幸運種と卵の殻をかぶったドラゴンがいた。
「あれは!ウォ…!!」
「待ってレッシュ!」
と、エルムがすかさずレッシュを止めた。
「ん?そこに誰か居るのか?」
炎幸運種に気付かれてしまったか。少しずつこちらに近付いてくる。
(気付かれたかな…?)
と、次の瞬間…パキッと木の枝を踏み折る音がした。エルムがレッシュを引いたときに踏んでしまった。
「!!誰だ!出てこい!」
すると警戒していた炎幸運種は火を吹いてきた。それは茂みの中にいるエルムとレッシュに向けられた。
「あ!レッシュごめん!」
「へ?」
すると、エルムがレッシュを盾にして後ろへ避難した。ボウッ!と炎はレッシュの正面から見事に当たった。
「うわぁぁぁ!熱いです!熱いです!」
たまらずレッシュは茂みの外へ飛び出してしまった。火ダルマ状態になりあちこち走り回り、近くにあったバケツを見つけて頭から突っ込んだ。
「…ですって…お前まさか!」
「やっぱりウォールなのね。」
茂みにいたエルムも出てくる。
「え、エルム!生きていたのか!」
突然の再会にウォールは驚いた。
「当たり前じゃない。この通りピンピンしてるわよ。」
エルムは元気な姿をウォールに見せてあげた。
「それじゃ、こっちは…レッシュなのか?」
「そうよ、レッシュよ。ところでウォール、ここで何をしているの?」
エルムがちょっとニヤけてウォールに質問した。
「なっ!べ、別に…た、ただこいつと遊んでいただけだ…!」
頬が赤くなりウォールは殻をかぶったドラゴンを指す。これはエルムと同じ種族のドラゴン。進化すれば今のユフィルのように立派に成長するドラゴンだ。
「あら、そうだったの。ユフィル!」
と、エルムがユフィルを呼ぶ。そしてエルムの側に降り立つ。
「お、お前…その竜どこで…!」
ウォールは更に驚いた。自分と一緒に居るドラゴンを、エルムまで連れていたことに。
「それは後で話すわ。今はレッシュを助けないと。」
「んんん!」
ウォールとエルムはバケツをかぶったレッシュを助ける。
「ふぅ、エルムひどいです!僕を盾にするなんて。」
少々プンスカしながら怒った。まぁとっさの判断だったから仕方がないかもしれませんね。
レッシュの頭からバケツを取ったところで、3匹は本題の会話に入る。

「でも、ウォールも生きていてよかったです。」
まずはウォールの無事をこの通り確認した。
「あぁ、何とかな。ところでアクシスやアクリュとアクティは居るのか?」
ウォールが残りの3匹について尋ねた。
「もちろん大丈夫よ。最後に見つかったのウォールなんだから。あ、でもアクティだけはリオート王国っていう街に居るの。アクティ自身何か王国のためにやりたいって言ったから残ったの。もちろんお兄ちゃんとアクリュも元気にしてるよ。今はグレンテルバレーにいるけどね。」
「なるほど…そういうことだったんだな。ところでエルム、その竜はどうしたんだ?」
ウォールがエルムが連れているユフィルについて質問した。
「この子は私がとある洞穴で見つけたの。卵の状態から見つけて、育てた末こんなに大きくなったのよ。ウォールこそそのドラゴンどうしたのよ。」
今度はエルムが逆に突き返す。
「あぁ…お、俺のはこの森の中で鳴いているのを見つけたんだ。様子からして捨てられていた感じで、腹も減っていたようだし助けてあげたんだ。そしたら俺に懐いてしまったから、俺はこいつを連れていくことにしたんだ。今もこの通りちゃんと育てているぞ。」
ウォール自身もしっかりと理由を話してあげた。
「ふ…ふふっ!」
と、エルムが鼻で笑った。どうかしたのでしょうか。
「な!何がおかしいんだよ!」
「ううん、おかしくはないの。ただウォールにしちゃ珍しいなぁって思っただけよ。あんなに楽しく花火をしてあげてるのも見たことなかったし。」
「お、お前!べ、別に珍しくないないだろ!」
ウォールは恥ずかしながら言い返す。確かにエルムの言う通りウォールにしては珍しい光景だ。こんなに笑うウォールなんてめったに見られないものだ。
「さて、そろそろ私たちは街に戻らないと。ウォールは街に戻らないの?」
エルムがウォールに聞く。この際一緒に街へ戻らないかと。しかし、ウォールから出てきた言葉は…。
「悪い…俺は今晩ここで過ごすことになってるんだ。街にも行きたいがちょっと戻れなくてな…。」
「え?どうして戻れないですか?何かあったですか?」
レッシュが何故戻れないか理由を聞こうとする。
「今は俺に構うな!寝床ならちゃんと用意してある。次に合う時はアリーナだ。早く行け!」
と、突然怒り混じりな口調でエルムとレッシュに投げ付けた。いったい何があったというのでしょうか。ウォールはその場から卵の殻をかぶったドラゴンと一緒に去っていった。
「…何があったのかしら…。ここは安全そうだし大丈夫みたいね。レッシュ、私たちも戻りましょ。」
「うん…(何だろう…もしかして大会のことを気にしてあんな風に言ったのかな…。)」
このときレッシュは何を思ったのだろうか。ウォール自身が大会にエントリーしていることは、他の兄弟たちにも分かっている。何のために大会に出場することを決意したのだろうか。

2匹の幸運種たちは無事にグレンテルバレーに戻ってき、サーフォーラたちと合流することができた。
「お前たち!いったいどこに行ってたんだ!あちこち探し回って心配したぞ!」
もちろん戻って来たらこうなることは承知していた。エルムとレッシュはちょっとうつむいた。
「ごめんなさい…。」
「ごめんです…。」
後にサーフォーラのお説教が少し続いたのであった。この後みんなは特別に設けられた宿泊施設に移動した。

第55話「真夏のハーブティー」おわり

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