EMBRACE OF LIGHT

EMBRACE OF LIGHT

[the spirit soldier] プロローグ



(・・・・迂闊だった)

古びた洋館、客間の隅で息を殺しながら青年は身を潜めていた。
その右腕からは、ポタポタと血が流れている。流れるそれを必死で止めながら彼は考える。

(こんな分かりやすい所に・・・・奴が居る訳がない)

数時間前、青年は「ある人物」を探すためここに訪れた。だが、青年を待っていたのは「人間ではない何か」だった。奇襲を受け、かろうじて安全な場所へと逃げ込んだものの、未だに「それら」は、彼を探し続けていた。

(・・・・何とか退路を確保しないと)

そう思った矢先、突如として青年の背後の壁が崩壊する。青年はすぐさま飛び退き、後ろを振り返る。

(チッ!バレたか!?)

止血をしている左腕を放し、腰のホルスターから「漆黒の銃」を取り出し構える。

だが、壁の奥から現れたのは紛れもなく[人間の女性]だった。

その慣れ親しんだ顔に青年は驚愕する。

???「マス・・・ター?」

青年は恐る恐る呼んでみる。

???「・・・・・・・ゼロ」

確かに自分の名前を呼んだ。この洋館に来る前、近くの宿屋に置いてきた[自分の飼い主]。

ゼロ「ど、どうしてここへ?」

???「・・・・ごめんなさい」

青年の疑問に答える事無く、[マスター]と呼ばれた女性は彼の腹部へとナイフを突き刺す。

ゼロ「!!・・・・・・な・・・・ぜ?」

激しい痛みを感じながらも、青年は疑問の言葉を投げかけた。

???「あなたが・・・・・・・・・・・・よ」

マスターが何かを話している。だが青年は全てを聞き取る事なく、意識を失った。




     [2004年12月 現実世界 東京 霧]

???「バイバーイ!」

学校の帰り道、親友と別れて[倭山 麻都]は、一人自宅へ続く林道を歩いていた。

(今日の晩御飯、何にしようかなぁ?)

そんな他愛もない事を考えながら歩いていると、前方の異変に気がつく。

(・・・・?人・・・・だよね)

自分から数十メートル離れた所に人らしき影を見つけた。だが、その影は何故か倒れているように見える。

(・・・・マジ!?)

慌てて彼女は影の方へと駆け寄る。

麻都「あの!!大丈夫・・・・です・・・・か?」

麻都は驚いた。確かに人であった。自分と同い年くらいの青年男性というのも確認できた。・・・・服を着ていないからだ。

(・・・えーっと。こういう時はどうすればいいんだっけ?)

彼女は混乱しそうな頭を抑制して考える

1・とりあえず生きているかを確認する

2・誰か助けを呼ぶ

3・構わず素通り

自分の性格上、3はまず出来ないと思い、とりあえず生きているかを確認するためさらに青年に近寄る。

???「・・・・うっ」

呻き声に驚き一歩後退するも、生きている事を確認できて麻都はひとまず安心する。

青年はゆっくりと目を開け、体を起こす。

麻都「あ、あの・・・・大丈夫ですか?」

???「・・・・誰だ?」

麻都「へ!?」

問いかけに対し問いかけで返され、麻都は素っ頓狂な声を出す。

麻都「・・・・い、倭山・・・麻都」

???「・・・・・・・・・・男か?」

麻都「女です!!」

青年の言葉を即座に否定する。

麻都「そんなことより!!・・・・・さ、寒くないんですか?」

麻都は顔を赤らめながら青年の格好を指差す。

???「・・・・・・・・・・・俺の服はどこだ?」

麻都「知らないし!!ていうかアタシが聞きたいし!!」

無理もない。この寒空の下、裸で外にいるのだ。それ以前に裸でいることがおかしい。

どうしたものか。麻都は青年から目を逸らし考える。警察に連れていくべきか?

(・・・警察までどう連れて行くワケ?)

自分が導き出した答えを否定しながら、何か良い方法はないかと考えると、突然目の前が光りだす。

麻都「え!?」

事態を確認しようと振り向くと彼女は言葉を失う。

青年の左手の前に不思議な光を放つ円が存在していた。青年はその円の中に手を入れ何かを探している。お目当てのものを見つけたのか、その手を引き出すと、その手には[黒いレザースーツとズボン]が握られていた。光の円は消え、青年は何事もなかったようにそれを着始める。

麻都「な・・・・・な!!」

ここまで抑制していた麻都の頭は、ついに臨界点を突破した。



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