EMBRACE OF LIGHT

EMBRACE OF LIGHT

3rd 契約への決意



麻都は素直に疑問を投げかけた

リーベル 「う~ん・・・傭兵の意味はわかるッスか?」

麻都 「・・・なんとなくだけど」

傭兵・・・一般的な兵士と違い、誰かに雇われてその存在意義を表すならず者だ。

リーベル 「でも僕たちはその傭兵とは少し違うッス。」

麻都 「・・・精霊を使うとか?」

リーベル 「いや・・・この世界では珍しいかもしれないッスけど、そこじゃないッス。」

麻都 「・・・じゃあ何なのよ?」

リーベル 「僕たちは雇い主を選ぶ権利があるッス。正確に言うと選ばなきゃならないンスよ。」

麻都 「・・・雇い主選んだら「雇い主」じゃないんじゃない?」

リーベル 「いや・・・そうなンスけど」

リーベルは困った顔をした。

麻都 「・・・じゃあ、コイツ(ゼロ)がフリーって事は・・・」

リーベル 「いないンス・・・正確には契約破棄されたンスよ。」

ゼロ 「リーベル!!」

ゼロは声を荒げた。リーベルは肩をすくめた。

麻都 「なになにぃ?嫌われたの?アンタ。」

ゼロは何も言わない。この態度に麻都はマズイ事を言ったと思った。

ゼロ 「・・・問題ない。マスターが居なくても十分に戦える。」

ゼロの言葉はあながち嘘ではない。現に彼は契約なしでキメラビーストを倒したのだ。

リーベル 「・・・でもゼロ君?それって余計に体力を消耗するンスよ?」

麻都 「体力?・・・あ」

麻都は思い出した。そもそも何故ゼロが自分の家にいるのか・・・。彼は戦いが終わってすぐに倒れたのだ。

リーベル 「雇い主がいない傭兵は体力供給の恩恵を受けられない・・・君、戦いが終わる度に倒れる気ッスか?」

ゼロ 「・・・・」

ゼロは再び押し黙ってしまった。だが麻都がその沈黙を破る。

麻都 「・・・・アタシじゃダメなワケ?」

二人は驚き麻都の顔を見た

麻都 「いや・・・だってヤバイんでしょ?それに、アンタらがここにいる時点で他人事じゃなくなってる気がするし・・・」

ゼロ 「バカを言うな。お前には無理だ、危険すぎる。」

リーベル 「でも・・・こっちの世界で雇い主を探すとなると・・・」

ゼロ 「リーベル!」

麻都 「危険だっていうならアンタが守れば問題ないでしょ?それにアタシだってこれでもやれるんだから」

麻都は二人にシャドーボクシングを披露する。プロとまではいかないが、それなりに動きは良かった。

ゼロ・リーベル 「・・・・・・・・・」

麻都 「ね?」

ゼロ 「・・・・だ、ダメだ!それに俺たちとお前は住む世界が違う。」

麻都 「・・・ハァ。アンタまだそんな事言ってるの?もうアタシは無関係じゃないのよ?」

ゼロ 「しかし・・・・・・!?」

麻都 「・・・・?どうしたの?」

リーベル 「・・・・ゼロ君」

ゼロ 「あぁ・・・・キメラビーストだ。」

麻都 「え!?」

ゼロ 「行くぞ、リーベル。」

リーベル 「がってんッス!」

麻都 「アタシも行く!」

ゼロ 「来るな。」

ついてこようとする麻都をゼロは冷たく制した。

麻都 「何でよ!?」

ゼロ 「危険だと言ったはずだ。」

麻都 「・・・あぁそう!なら勝手についてくから安心しなさい!」

ゼロ 「くっ!・・・・勝手にしろ」

ゼロ・リーベル・麻都の三人はキメラビーストの待つ場所へと向かった。




三人がたどり着いたのは、都内から外れた古いビルだった。今は誰も使う事がなく、ただの廃ビルと化している。

麻都 「・・・・ね、ねぇ。ホントにこんな所にいるの?・・・こんな所だからいそうなんだけど。」

リーベル 「・・・間違いないッス。感じるッス。」

移動中に麻都は聞いていた。何故キメラビーストの居場所がわかるのか・・・。それは、ゼロ達には「キメラビーストを感じる事のできる感覚」が存在するのだという。

ゼロ 「・・・来るぞ。」

ゼロは素早く[ポケット]から二挺の拳銃を取り出し構える。リーベルは何もない空間から炎を生み出した。麻都もひとまず身構えた。

[それ]が現れたのはすぐだった。胴体は人間の物。だが手と思われる物は6本あり背中には昆虫の様な羽が生えていた。それはまるで

麻都 「・・・タコの次はハエ?」

麻都はもはや「驚く」という感情を表さなくなった。そして戦闘開始。

ハエ人間はそのスピードで巧みにゼロとリーベルを翻弄する。ゼロは精霊を出さずに銃を放つ。体力の消耗を考えての事だろう。だが、その弾丸が当たることはなかった。リーベルも次々と炎を放つがなかなか当たらない。

リーベル 「あぁもう!!早いッスよ!」

ゼロ 「・・・仕方ない」

ゼロは黒い精霊を放った。以前キメラビーストを喰った精霊。今回も例外ではなかった。最初は足を・・・次に腕を・・・胴体を。弄ぶかのように喰らっていく。そして・・・頭部までもが精霊の腹部に収められた。

ゼロ 「・・・・っはぁ。」

麻都 「・・・だ、大丈夫?」

ゼロ 「・・・問題な・・・・!?」

ゼロは言いかけて口を止めた。闇からもう一つ姿を現したのだ。だがその姿は紛れもなく人間である。

??? 「いやぁお見事お見事」 拍手をしながら現す男。

リーベル 「な!何者ッスか!?」

??? 「俺かぁ?俺の名前は英明ってんだ。お前等と同業さ。」

ゼロ 「同業・・・だと?」

英明 「おうよ。まぁ、同業っつってもよぉ、お前等みたいにコードネームなんて物はネェし?精霊を使えるわけでもねぇ。だがよ・・・ハッキリしてる事は・・・」

英明と名乗る人物はゼロ達に大柄な銃を構えた。

英明 「お前等の敵さぁ!!」

銃が放たれるよりも早くリーベルは回避した。ゼロも麻都を背負い回避する。だが、ゼロは着地すると同時にその場に倒れこむ。

麻都 「!?ゼロ!!」

ゼロ 「・・・クッ!」

英明 「オイオイ、なぁにフラってんだよ?精霊を使うってのはそんなに酷なモンなのかぁ?」

話しながらも英明はゼロと麻都に近づく。

リーベル 「ゼロ君!!」

英明 「それとも何かぁ?やっぱり雇い主がいねぇとダメなのかぁ?」

麻都 「!!」

麻都は心に決めていた。もし、この先危険な事になったらすぐにでも契約しようと・・・たとえ自分が危険な目にあっても構わないと。

麻都 「・・・ゼロ」

ゼロ 「・・・?」

麻都はゼロを見つめる。ゼロは麻都が何を言おうとしているのかがわかった。そして自分自身、手段を選んでる場合ではない事も。

ゼロ 「・・・復唱しろ。」

麻都 「・・・え?」

ゼロ 「復唱しろ!」

麻都 「!!う、うん!」

二人は立ち上がる。英明を睨み付けながら・・・

英明 「アァン?何だよ?」

ゼロ 「古の伝承に基づき我は神へと誓う」

麻都 「い、古の伝承に基づき我は神へと誓う」

ゼロ 「我、この者と契約を果たす」

麻都 「我、この者と契約を果たす」

ゼロ 「この誓い、しかと見届けよ!!」

麻都 「この誓い、しかと見届けよ!!(・・・うっわぁ、ハズい~)」

二人は突如光に包まれる。

英明 「!!な、なんだぁ!?」

リーベル 「・・・契約・・・した。」

光は徐々に薄れ、そこにはゼロと麻都の姿があった・・・



麻都 「・・・・何も変わってないんじゃない?」

光から開放された麻都は自分の体をまじまじと見つめる。だが異変らしい異変は見当たらなかった。

ゼロ 「いや、これでいい。契約は成立してる。」

ゼロは足元に転がっている「漆黒の銃」を手に取る。

英明 「・・・は、はははは・・・・ハハハハハハ!!」

突然英明は狂ったように笑い出す。廃墟と化したビルに英明の笑い声が響く。

英明 「な、何をしたかと思えば・・・ククク・・・何だよありゃあよ」

英明は笑いをこらえている。その様をゼロは静かに、麻都とリーベルは恐怖に顔を引きつらせながら見ている。やがて笑いが収まった英明は鋭い目つきでゼロと麻都を睨みつける。

英明 「・・・・はぁ・・・何したかしらねぇけどよ、茶番劇は終わりにしようぜ・・・死ねェェェェェ!!!!」

英明は雄たけびとも取れる台詞を吐き捨て、ゼロに向かって突進する。ゼロは手に取った銃を静かに構える。

麻都 「ちょ、ちょっと!!こっち向かってきてるよ!?」

ゼロ 「問題ない。お前は後ろにいろ・・・・力を借りる。」

麻都 「力って・・・!?」

麻都は自分の異変に気づいた。走ってもいないのに熱くなる体。流れる汗。

麻都 (な、何?力が・・・抜ける・・・)

その場に座り込む麻都の目には、体から青白い光を放つゼロの姿が映っていた。

ゼロ 「・・・・ゴースト!!」

掛け声と共にトリガーを引くゼロ。マズルフラッシュと共に現れたのは、先程も姿を見せた精霊だった。ただ、違うのは今までに比べその「姿」が鮮明なのだ。

英明 「・・・・な、なんだこりゃ?黒い犬?」

英明にはそれが「黒い犬」に見えたらしい。一瞬たじろいだが、すぐに体勢を立て直しそれを見据える。

英明 「・・・はっ。こ、こんなのに驚く事もねぇ・・・ぶっ飛ばしてやる!」

英明は再び突進を始める。精霊は英明を捉え喰いにかかる。だが先程のキメラビーストの戦いでパターンを読んでいる英明は軽々と精霊を避ける。

英明 「バァカ!!俺を食わせるかよ!」

なおも喰らいにいく精霊を、英明はいとも簡単に避けていく。ついにはゼロの数メートル先にまでたどり着いた。

英明 「もらったぁ!!!」

麻都 「ゼロ!!」

力の抜けている麻都は、搾り出すかのように叫んだ。それに答えるかのようにポケットを出現させるゼロ。そこから新たに「真紅に塗られた拳銃」を取り出す。

英明 「何!?」

英明は焦る。既に間近まで迫った標的が新しい武器を手に取っているからだ。英明は慌ててサイドへ飛ぶ。だがゼロは英明が着地するのを待たずに新たな武器を放つ。

ゼロ 「ファントム!!」

真紅に光るマズルフラッシュと共に現れた「それ」は瞬時にその姿を「赤い犬」へと変化させ、英明に突進を仕掛ける。

英明 「チッ!!またかよ!」

着地と同時に、英明はさらに右へ転がり「赤い犬」の突進をやり過ごす。主の下へと戻る「赤と黒の犬の精霊」。英明は恐怖を覚える。ゼロは両手に握っている二挺の銃を交差する形で構える。

ゼロ 「・・・終わりだ。」

英明 「クッ!!」

ゼロ 「・・・フルドライブ!!」

叫びと共にトリガーを引くゼロ。それに応えるかのように二匹の精霊は同時に突進をかける。途中、精霊たちは互いの体を合わせ「一つ」になる。

英明 「・・・・こんな・・・・こんな所で・・・」

徐々に英明へと迫る一匹の精霊。確実に近づいてる「死」。だが英明は諦めていなかった。

英明 「こんな所で・・・死ねるかよぉ!!」

絶叫と共に起こる爆発。立ち込める粉塵。戦いは終わった。




爆破が起こった場所には英明の屍はなかった。

リーベル 「・・・逃げたのかな?」

爆発の跡を見ながらリーベルはつぶやく。

ゼロ 「・・・さあな。それよりもこの場を離れるぞ。・・・マスターもこんなだからな。」

リーベルはゼロに抱えあげられている麻都を見た。ひどく疲れたのか、ゼロの腕の中でスヤスヤと子供のように眠っていた。

リーベル 「・・・・ハハ、そうだね。」

ゼロとリーベル、そして眠っている麻都は廃ビルを後にする。

リーベル 「・・・可愛い寝顔だね。」

ゼロ 「・・・・・知らん。」

リーベル 「あれ?ゼロ君・・・何か照れてない?」

ゼロはリーベルを睨みつける

リーベル 「うわ~怖いねぇ。・・・・でもこれからが大変だよ?」

ゼロにはリーベルが言おうとしている事が瞬時に理解できた。この先、彼女にも危険な事が増えるのだ。

ゼロ 「・・・・問題ない。」

リーベル 「え?」

ゼロ 「俺が守る・・・・俺のマスターだからな。」

ゼロはそう言うとリーベルよりも少し早く歩き出した。

リーベル 「・・・・ハハ。なんだかんだ言って認めたわけね。」

リーベルも急いで歩きだした。

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