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EMBRACE OF LIGHT
17th アナタをこの手に
地上に到着した英明は間髪入れずにファナに特攻。漣(さざなみ)で一閃。ファナは後ろに飛び退いて回避。だがこれが仇となった。
背後にまわっていた渚の突進が直撃。
ファナ 「ぐっ!」
背中に駆け巡った痛みに声を漏らすファナ。体勢を崩しその場に4つんばいになった。宙に浮いていた鎖、イクシオンケージは力なく地面に落ちていく。渚は英明の隣に戻った。
英明 「・・・・ふぅ。」
渚 「お疲れ。」
英明 「お前もな。・・・・だが、まだやる気みたいだぜ。」
渚と英明はもう一度戦闘態勢を取る。膝をついてはいるが、確かにファナは体を起こしている。イクシオンケージも既に宙に浮かんでいた。
ファナ 「・・・ま、前よりはやるようになったじゃない。」
渚 「あったりまえじゃない!アタシら[一応]夫婦なんだから波長ピッタリなんだっつの!」
英明 「・・・・一応なのか?」
渚 「あ・・・ごめん。正真正銘、ね。」
ファナ 「・・・・・ふざけないでよ。」
ファナが小さく、それでも英明達を威圧するように呟いた。
英明 「ふざけてるつもりなんてねぇよ。これが俺達の戦闘スタイルってヤツだ。」
渚 「そそ、夫婦漫才風ってヤツ?」
ファナ 「・・・・・・。」
英明 「ファナ・・・もうやめろ。どうやったって俺達には敵わねぇよ。」
沈黙・・・・だが、それを破ったのはファナだった。
ファナ 「ふ・・・ふふふ。」
ファナが笑いだした。最初は小さく、徐々に狂ったように。
渚 「な、何?壊れちゃった?」
英明 「お、おいファナ・・・?」
ファナ 「あはははははは!!」
渚 「や、ちょっと怖いよ?」
ファナ 「ハァ、ハァ・・・・敵わない・・・確かに敵わないわね。英明だったらどんな精霊でも使いこなすだろうしね。」
英明 「・・・・何?」
ファナ 「アナタは知らないかもしれないけどね・・・アナタ、実は凄い人なのよ。」
渚 「・・・・本気で殺そうとした次は[褒め殺し]?芸が無いねぇ。」
ファナ 「本当ならアナタは精霊なんて使えやしない・・・それはアナタ自身わかってる事でしょ?」
確かにそうだった。今まで精霊を使わず生きてきた。渚の一件で精霊行使の能力が開花したものの、未だに不安はある。
ファナ 「でもアナタは精霊を行使してる・・・なんでだと思う?」
英明 「・・・・。」
ファナ 「波長よ。アナタは精霊との波長の合わせ方が上手なのよ。」
渚 「波長?」
ファナ 「いくら精霊行使の能力を持ってても、精霊との波長が合わなければ力は拡散して発揮できない。それを補う為にするのが」
英明 「主(マスター)との契約か。」
ファナ 「そう。傭兵と精霊、そして主・・・この3つが揃えば無理やりにでも波長を合わす事が出来るのよ。良い例がレオンと二挺拳銃使いね。」
英明 「リーベルは瑞樹と契約した事で能力が上がった・・・何でもかんでも主で解決なんだな。」
ファナ 「でもアナタは違うでしょ?アナタには主が居ない・・・でも精霊を行使してる。まぁ使ってる精霊が二流なのはこの際伏せましょう。」
渚 「な!誰が二流よ!!」
ファナ 「それに加えてアナタの戦闘技術・・・申し分ないのよ。」
英明 「何の話・・・・!?」
英明は目を疑った。イクシオンケージが伸びていた。そしてファナの背後でうごめきながら何本にも分裂している。
ファナ 「だからね・・・・頂戴!」
イクシオンケージが止まった。
ファナ 「イクシオンケージ、フルドライブ!!」
フルドライブ・・・刻真が初めて英明と対峙した時に使った荒技だ。その威力は英明が一番知っている。
英明 「や、やべぇ!!」
伸びた無数の鎖は突進を始めた。英明の前に渚が立つ。
渚 「任せなさい!あんなのアタシがチョイチョイっと」
渚を避けるように突進していく鎖たち
渚 「・・・・え?」
英明 「なっ!?」
ファナ 「前にも言ったでしょ?その鎖は私の意志で動くのよ。そして・・・」
鎖が英明の体に纏わりついていく。
英明 「な、何だこりゃあ!?」
渚 「英明!!」
渚が鎖に攻撃を加える。だが、びくともしなかった。
ファナ 「イクイシオンケージのフルドライブは、生身の人間を[精霊]に変える事が出来るのよ!」
渚 「・・・・え?」
渚は耳を疑った
英明は体の自由を奪われ、ついには完全に鎖に捕獲された・・・・
英明 「・・・どこだ此処は?」
視界に広がる無の空間
先の見えない只の闇
英明はそこに居た。
英明 「確か・・・ファナの鎖に捕まって・・・その後どうなったんだ?」
何が起こったのか理解できず、恥ずかしいと思いながらも急に不安になってくる英明。
英明 「・・・・精霊がどうたらってのは聞こえたが。・・・・・あれ?」
英明は自分の変化に気がついた。外見は変わっていない。だが、何故か先ほどまでの不安が無くなっている。
無の空間の筈なのに・・・闇しかない筈なのに・・・何故か暖かい。何かに抱擁されてるかのような感覚。
英明 「・・・・・」
英明はゆっくりと目を閉じる。かすかに人の気配を感じた。その気配が英明を抱いている。
英明 「・・・・ファ・・・ナ?」
渚は何度も英明の名前を叫んだ。大粒の涙を流しながらも必死に叫んだ。
ファナ 「ムダよ。英明には聞こえないわよ。」
渚はファナを睨みつけた。その目は怒りだけでなく殺意すらあらわにしていた。
ファナ 「どうあがいたってムダよ。英明は自分の力を捨てる事なく、[人間]という制限を捨てて生まれ変わるのよ・・・その卵の中でね。」
卵・・・確かに卵だった。英明を覆いつくした鎖は融合を果たし、[鋼の卵]と呼べる代物になっていた。
ファナ 「英明が自分でその殻を破った時・・・彼は精霊となって私と契約するの。」
渚の殺意が増した。いつ突っ込んでもおかしくない状況だった。
ファナ 「睨んでもムダ。英明は私と契約する。そして・・・アナタは捨てられるの。」
ファナは静かに笑った。笑い声すら聞こえない程のものだったが、渚にはソレがこの場に木霊する程大きく聞こえた。
以前として英明は温もりに身を委ねている。心地よさは増していて、既に拳を握る力すら失せていた。
英明 (・・・どうなるんだ、俺?)
疑問に思ったが不安ではない。どうなろうと知った事じゃない・・・英明の頭の中に出てきた考えが疑問を打ち消した。
英明 (何も考えなくていい場所か・・・悪くない)
英明が笑みを浮かべる。全てを受け入れた瞬間だった。
英明 (渚も・・・此処に来ればいいのにな・・・。)
鋼の卵にヒビが入った。その現象が何を意味するのか・・・ファナはもちろんの事、渚にも理解できた。
渚 「!!駄目・・・駄目だよ英明!!」
ひび割れた部分を必死に押さえる渚。だがヒビは更に拡大する。
ファナが卵に近づく。泣きながらも[ムダ]な行為をする渚を払いのけて、卵に寄り添う。愛しそうに優しく撫でながら卵に語る。
ファナ 「さぁ、もういいでしょ?早く出てきて・・・英明。」
ひび割れた部分から大量の光が溢れる。痛みに耐えながらも渚は叫ぶ。声になってないかもしれない・・・それでも叫ぶ。
光は[早く出せ]と言わんばかりに溢れる。そして・・・
渚は理解出来ずにいた。確かに英明は[生まれた]。鋼の殻を破り、生まれた。
母親に反抗的な態度を取りながら。
ファナ 「か・・・はっ!」
ファナの首には英明の手がある。締め付けている。
ファナ 「何・・・で?」
当たり前の疑問を口にした。イクシオン・ケージのフルドライブは完璧だった。試した事は無かったが、ファナの予想通りの展開に事は進んだはずだ。
だが、目の前の現実は違う。自分が作り上げた[子供]は酷く反抗的だった。
英明 「・・・意味ねぇんだよ。」
第一声はそれだった。意味がない・・・何が意味ないのだろう?ファナは困惑した。それに答えるかの様に英明は叫ぶ。
英明 「渚が居ない世界なんざ意味ねぇんだよ!!」
・・・・馬鹿げてる。
工程は完璧だった。一寸の狂いすらなかった筈だ。ただ1つだけ・・・それも些細な原因が大きな狂いとなった。
渚・・・・
ファナは傍らで大粒の涙を流しながら呆けてる女を見た。
何故駄目なんだろう?
何故私じゃあ駄目なんだろう?
ファナ 「何・・・で?」
それしか言葉は発してないはずだが、英明には理解できたのだろう。諭すように答えを告げる。
英明 「見て解らねぇか?俺が居なくなっただけであのザマだ。ビービー泣きやがる。・・・放っとけないんだよ。」
理解できない。ファナの頭では理解できなかった。だが、ファナの体は理解したかのように力が抜けていく。ファナの意識が途切れた。
ファナを静かにその場に下ろした英明は渚に近寄った。
英明 「・・・あ~。」
何て声をかければ良いのか解らなかった。とりあえず・・・
英明 「心配かけたな。」
笑顔を見せながら言葉を口にした。それだけで十分だった。渚はイノシシよろしく英明に突進した。
英明 「うぉう!?」
英明は倒れた。渚は泣き叫びながら力強く抱きついていた。どうして良いのかわからなかったが・・・英明は子供をあやす様に渚の頭を撫でた。
リーベル達が姿を現した。
リーベル 「・・・何がどうなってこんな状況になってるッスか?」
気絶してるキツそうな女性。子供の様に泣き叫んでる女性。その女性に困りながらも頭を撫でている男性。
瑞樹 「あらあら、ちょっと理解し難いわねぇ。」
リーベル達に気がついた英明は助けを求める。リーベル達は駆け寄り、ひとまず渚を何とかする事に徹した。
渚が落ち着いたのを見計らって状況を確認する。
リーベル 「瑞樹さん、その人は・・・」
脈を取りながら瑞樹は返事をした。
瑞樹 「大丈夫、気を失ってるけど生きてるわよ。」
リーベル 「了解ッス。・・・とりあえず、何があったのか教えるッス。」
英明は事の顛末を簡潔に述べた。
リーベル 「なるほど・・・。とにかく無事なンスね?」
英明 「ああ、何とかな。」
リーベル 「動けそうッスか?」
英明は立ち上がり2、3回屈伸をした。
英明 「大丈夫そうだ。」
リーベル 「了解ッス。それじゃあ先を急ぐッス。」
英明 「お、おいおい!休みなしかよ。」
英明は軽く抗議の言葉を口にした。だがリーベルの真剣な目を見て悟った。
英明 「・・・・何かあったのか?」
リーベル 「・・・解らないッス。」
曖昧な返事だった。
英明 「解らないって・・・」
リーベル 「解らないけど・・・嫌な予感しまくりなンスよ。」
予感は所詮予感・・・そう思いたかったが、英明も何故かそう思えてきた。
英明 「・・・・ラスボスに1人で突っ込んだバカの所に行くか。」
瑞樹 「2人・・・だけどね。」
瑞樹はファナの傍を離れ、こちらに向かって歩き出している。
英明 「・・・渚、いけるか?」
目を腫らしながらも渚は静かに頷いた。
英明 「・・・よし、行くか!!」
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