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EMBRACE OF LIGHT
18th 終焉に消える執念
レオンが魔剣を上段に構える。麻都と刻真も間合いを取りつつ攻撃の姿勢を取る。
麻都 「・・・刻真。」
刻真 「何だ?」
麻都 「あ、アタシはどう戦えばいいの?」
刻真 「・・・・・」
刻真は呆れていた。それを察したのか、麻都はすぐさま自らを弁護する。
麻都 「しょ、しょうがないでしょ!?あんなバケモノ相手になんかした事無いんだし!」
刻真 「さっきは逃げろとか言ったくせにか?」
麻都 「うっ・・・」
刻真 「まぁいい。お前がオレに力を与えているのは知ってるな?」
麻都 「う、うん。」
刻真 「その逆も可能だ。オレがお前に力を与える事もできる。さっきやっただろ?」
麻都 「・・・さっき?」
麻都は思い返した。さっき・・・つまり麻都が刻真の傍に行こうとした時の事だ。エレンの邪魔が入り、無我夢中で繰り出したボディブロー。その時は不思議にも思わなかったが、確かにおかしい。自分でも驚く程の威力を叩き出していた。
刻真 「どういう原理かは知らんが、お前はそれをやってのけた。」
麻都 「いや、でもあの時は夢中だったし・・・何をしたのか判らないよ。」
刻真 「・・・無意識だったのか!?」
麻都 「う、うん。」
刻真は更に呆れた。このカラクリを麻都に教えた訳ではない。その麻都が知らぬ内にやってのけ、更に成功させたのだ。
刻真 「・・・非常識だ。」
麻都 「なっ!存在自体が非常識なアンタがそれを言うか!!」
刻真 「・・・まぁいい。お前にファントムを預ける。」
刻真がファントムを召還。麻都に渡す。
刻真 「ファントムを通じてお前と力を共有する・・・無駄遣いするなよ?」
麻都 「わ、わかってるわよ!!」
麻都はファントムを肩に乗せる。
すぐに感じた身体の異変。表面では変わらない。ただ、何かが身体に流れ込んでくる・・・そんなイメージだった。
麻都 「・・・・これって。」
刻真 「・・・無駄遣いするなよ?」
麻都 「わ、わかってるって!!同じ事言うな!!」
レオン 「・・・・そろそろ良いか?」
レオンの言葉に(ある意味)2人の世界から抜け出す刻真と麻都。再び攻撃の姿勢を取る。
刻真 「すまなかったな・・・・始めようか。」
刻真が駆け出す。続いて麻都も疾走。レオンは身動き1つせず、待つ。
刻真が接近。ほぼ至近距離からのデッド発砲。だが、その攻撃は形状を変えた魔剣に防がれた。
レオン 「馬鹿の1つ覚えか。威力も弱い・・・力の共有は仇となったのではないか?」
刻真 「・・・・それはどうかな?」
レオンの背後から衝撃。麻都だった。
刻真の攻撃は注意を引き付けるためのフェイク。本命は麻都の背後からの鉄拳だった。
苦痛に顔を歪めるレオンは、その場に崩れる。続けてはいかない。2人は一旦離れて体勢を整える。
麻都 「力が2つに枝分かれすれば、注意も2倍しなきゃいけない・・・これ戦いの鉄則でしょ?」
刻真 「そういう事だ。馬鹿の1つ覚えはお前のほうだろ?レオン。」
レオン 「キ・・・キサマら!」
レオンが立ち上がる。同時に変貌を始める魔剣。鋼の刃は意思を持つかのようにその身をうねらせる。
麻都 「うげっ・・・何か嫌だなぁ。」
刻真 「気を付けろ。あれは軌道が読めない・・・避けづらいぞ。」
麻都 「判ってるって。」
再び駆け出す刻真と麻都。それを察知した魔剣は刃を2つに枝分れさせて各々攻撃を始める。
避けつつ接近する麻都と刻真。だんだん近づく2人に焦りを感じ始めるレオン。
レオン 「ちょこまかと・・・っ!?」
一瞬だった。意思を持たせた刃の間を縫って見えた手。その手は銃を握っていた。
レオン 「しまっ━━━」
零距離からの発砲。無論、これを避ける術はなく、銃弾はレオンの身体に吸い込まれていった。
同時に異形の魔剣は元の姿に戻り、そして━━━
麻都 「もういっちょ!!」
渾身の力を・・・自らの能力とファントムを通じて刻真から受ける能力を混ぜた、まさに[次元を超えた力]を一点に集中して、レオンに叩きつける。
体内を駆け巡る、今までに感じたことの無い衝撃。レオンは一瞬激しい苦痛を感じた。そして暗転━━━
ゲート 「・・・・終わったか。」
あっさりとした終わり方に少々残念そうな顔をするゲート。刻真に近づき、微笑む。
ゲート 「まずは・・・おめでとうとでも言っておくか?」
刻真は何も言わず、ただ目の前にいる男を睨みつけていた。
麻都 「・・・刻真?」
ゲート 「お前の精神ん中で言った事・・・覚えてるな?」
刻真 「・・・・あぁ。」
2人の会話が全く理解できない麻都。
麻都 「ねぇ・・・何の事言ってるの?アタシにも判るように説明してくんない?」
刻真 「すべてを・・・元に戻す。」
麻都 「・・・・へ?」
刻真の顔は、平静を装いながらもどこか悲しげだった。
麻都 「元に戻すって・・・」
ゲート 「俺はもちろんの事、刻真、リーベル、英明・・・そしてレオンもエレンも元々この世界の人間ではない。異分子なんだ。」
麻都 「異分子・・・」
刻真 「お前もさっき言っただろ?オレの存在自体・・・この世界では非常識だ。」
麻都 「あ、あれはそういう意味で言ったワケじゃないよ!」
刻真 「同じだ。それに・・・別に責めてる訳じゃない。当たり前の事だからな。」
隠そうと努力していた刻真の表情は、悲しみを露わにしたものに変わった。麻都は悟った。すべてを元に戻す。それはつまり━━━
麻都 「・・・・帰っちゃうの?」
刻真 「・・・・・あぁ。」
麻都 「・・・・すぐに?せっかく終わったんだからさ、少しくらいコッチの世界を楽しんでもいいんじゃない!?」
刻真 「・・・・十分、楽しんだ。」
麻都 「・・・・・・そっか。」
止められなかった。麻都は止める術を持ってなかった。
刻真 「・・・・感謝してる。」
刻真は不意に呟いた。麻都は何も答えない。刻真はそれでも続ける。
刻真 「本当なら・・・今回の事はオレ1人で何とかするつもりだった。でもお前はオレと契約してくれた。正直・・・最初は足手まといだと思った。でも今は違う。」
刻真は麻都をしっかり捉える。少し照れながらも、しっかりと告げる。
刻真 「あ・・・ありがとう。」
麻都は堪えていた。必死に溢れるものを堪えていた。
ゲート 「・・・・そろそろ、いいか?」
刻真 「・・・・あぁ、始めよう。」
刻真とゲートは[門]の方角を向いた。世界と世界を分断する作業を━━━
??? 「まだだ!!」
2人は向き直った。そして麻都も顔を上げた。
━━━立っていた
麻都 「・・・ウソ。」
━━━人の形をした
ゲート 「・・・・ほぉ。」
━━━執念の塊と化した
刻真 「・・・・・くっ!」
━━━1人の傭兵が
レオン 「ゲートを操るのは・・・・このオレだ!!」
━━━再び立ち上がっていた。
リーベル一行は息を切らしながら遂に最上階━━━刻真達が居る場所にたどり着いた。
━━━そこは地獄のような光景が広がっていた。
刻真と麻都を襲っている無数の刃。・・・いや、刃は1つのはずだが、所々枝分れをして各々標的を狙っている。
英明 「お・・・おいおい、何だこりゃあ!?」
驚愕の言葉を発したのは英明が最初だった。
リーベル 「レオンの・・・魔剣みたいッスね。以前見たのと明らかに形状が違うけど。」
リーベルが冷静に状況を判断し始める。
瑞樹 「・・・支援した方がいいんじゃないかしら?」
その通りだった。致命傷を負ってはいないが、不規則に襲い掛かる無数の刃に、刻真と麻都は翻弄されている。かなりの劣勢だった。
戦場に踏み込もうとするリーベル一行。だが━━━
刻真 「来るな!!」
刻真がそれを静止した。その隙を突いた刃が刻真の太ももに深く突き刺さる。
リーベル 「刻真君!!」
刻真 「ね・・・狙っているのは俺達だけだ。」
突き刺さっている刃に正拳を喰らわせ、刃を抜く。刃は意思を持っているかのようで、拳の痛みに跳ね上がり太ももから抜き出た。
麻都 「アンタらまで来たら・・・さすがにカバーしきれないよ!」
麻都が叫ぶ。刻真と麻都の呼吸は完全に合っていた。
瑞樹 (まだ別れてからそんなに経ってないのに・・・凄い。)
刻真が避けて左手に持ち替えたアライブを発砲。レオンが怯んだ所にすかさず麻都の回し蹴り
━━━束になった刃に足を止められ、そのまま放り投げられる。飛ばされる麻都の身体を刻真が身体全体で受け止める。
麻都 「あ、ありがとう。」
刻真 「気にするな。・・・これでは埒があかんか。」
レオンを見据える刻真。立っては居るものの、その目には意思が無い。白目を剥いていて獣の様な息遣いをしている。
麻都 「・・・どうしちゃったんだろ?」
刻真 「判らん。暴走してるように見えなくも無いが・・・」
ゲート 「暴走・・・ねぇ。あながち間違いじゃないぞ。」
ゲートが刻真達に語りかける。リーベル一行は「誰?」という顔をしている。
ゲート 「自己紹介はこの際省く。今のアイツは俺のために動いてるんだよ。正確には俺の能力の為にだがな・・・。」
リーベル 「能力?何の事ッスか?」
ゲート 「機密情報だ。教えられねぇなぁ。」
ゲートは悪戯っぽく笑う。リーベルは顔の筋肉が痙攣する感覚を覚えた。
━━━攻防はさらに続いている。刻真が軽くジャンプして麻都の手のひらに乗る。麻都は勢いよく刻真を上に放り投げた。
上空からのアライブ連射。それを全て掃うレオンの刃。
━━━レオンが上に気を取られている内に一気に詰め寄る麻都。拳が届く距離に入り、息を軽く吸い止める。渾身の一撃。
━━━レオンの手が麻都の拳を止めた。離れようとするものの、レオンの手は麻都の拳をがっちりキャッチしていて離れない。刃が麻都を弄ろうとじりじりより始める。
━━━空間が爆ぜた。
後方からのアライブ直撃。跳躍した刻真はレオンの頭上を飛び越え、後方で着地。そのまま反転してアライブを撃ってきた。
レオンはゆっくりと振り返り━━━確認した。刻真の口を。
その口には右腕と共に飛んだデッドが咥えられていた。
刻真 「あひゃと!(麻都!)」
麻都 「いつまでおてて繋いでんのよ!」
文句を言いつつ、力が弱まったレオンの手を振り解き刻真の傍まで駆け寄る。物凄いスピードだ。
麻都は刻真からアライブを右手に受け取る。刻真は咥えていたデッドを左手に持つ。
刻真 「何をするか・・・判ってるな?」
麻都 「モチ。」
麻都と刻真は背中合わせに身体を付ける。
英明 「・・・・おい、まさか!」
リーベル 「フルドライブ!?」
正解。刻真と麻都の周辺が淡く光りだした。
ゲート 「なるほどなぁ。とんだ猿芝居だよ。」
先ほどまでの攻撃は、全てこの状況に持っていく為のフェイクだった。もちろん、全ての攻撃は全力だった。味方ですらそう思っていたからだ。だが本人達はこの状況を望んでいた。
だが、右腕を失くした刻真は二挺拳銃のフルドライブは出来なかった。そこで麻都を自分の右腕代わりになってもらおうとしたのだ。
口裏を合わせたわけではなかった。麻都も知るはずが無かった。だが彼女は何となく判っていた。刻真が何を考えているのかを━━━
レオンは咆哮する。同時に無数の刃が刻真達めがけて特攻を始める。
瑞樹 「危ない!」
渚 「避けて!!」
━━━刃は静止した。
何が起こったのか判らず、辺りを見回すと、レオンの身体を何かが羽交い絞めにしている。
━━━エレンだった。
エレン 「・・・もうやめよう?レオン。」
レオン 「エ・・・レン!!」
刻真 「・・・・・・。」
エレン 「ごめんね、ゼロ。私・・・勘違いしてたみたい。」
麻都 「・・・・?」
エレン 「ゼロとレオンの出生の秘密を聞いて・・・2人がゲートの起動の為に生まれてきたって聞いて・・・世界をメチャクチャにされるのが怖くて。」
刻真 「レオンだって・・・同じことが出来るんだぞ?」
エレン 「うん・・・そうだよね。でもレオンは止めてくれるって言ったの。ゼロを殺して自分も死ねば・・・世界が変わる事は無いって。」
ゲート 「・・・・・・。」
エレン 「でも違うよね。今のレオン・・・世界をメチャクチャにしようとしてる。私はそれを手助けしようとしてた。報いは受けなきゃ・・・だね。」
エレンは優しく笑う。刻真がゼロだった頃よく見た笑顔だった。
エレン 「やっちゃって、ゼロ。マスターとして命令するわ・・・・「元」が付くけどね。」
エレンは刻真に言う。だが刻真は銃口を向けたままの状態で静止していた。
麻都 「刻真・・・」
麻都の呼びかけに反応したのか、刻真は麻都を見る。
━━━刻真は決意した。
刻真 「合わせろ、麻都!!」
麻都 「・・・・うん!!」
2つの銃が激しく光り始める。エレンはそれを見届け、ゆっくりと目を閉じた。
刻真 「デッド&!!」
麻都 「アライブ!!」
刻真&麻都 「フルドライブ!!」
2人は一気に引き金を引いた。
空間を閃光が包む。エレンとレオンは閃光の中に溶けていった━━━
全てが終わった。エレンとレオンの姿はもう何処にも無い。
麻都 「・・・終わったね、刻真・・・・・・刻真?」
麻都は辺りを見回した。刻真が居ない。それだけでは無い。リーベルも、英明も、渚も居ない。
瑞樹 「・・・麻都ちゃん、あれ・・・」
唯一その場に居る瑞樹がある方向を指差している。
━━━ゲートが薄く消えかかっている。
麻都 「・・・・どういう事?」
瑞樹 「・・・・帰ったんでしょ?元の世界に。」
麻都 「何よそれ!?さっきもそうだったけど、何で挨拶も無しに帰るのよ!!」
瑞樹 「・・・・・・・・。」
麻都 「・・・けるな。」
麻都は何かを呟いた。そして━━━
麻都 「ふざけるなーーーーー!!」
麻都の叫びが木霊した。
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