EMBRACE OF LIGHT

EMBRACE OF LIGHT

19th 「交じり合う世界で」

???



刻真   「・・・・ん。・・・ここ・・・は?」

???  「気が付いたか、バカ息子。」

何もない空間・・・そこに居るのは自分と━━━

刻真   「ゲート・・・?」

ゲート  「よぉ・・・随分と遅いお目覚めだなぁ。」

ゲートが悪戯っぽく笑う。

刻真   「・・・・ここは何処だ?みんなは何処だ?」

ゲート  「おいおいおいおい、質問は1つずつにしろ。そう習わなかったか?」

刻真   「・・・・いや。」

あっさりとした否定の言葉に眉をひそめながら頭を掻くゲート。

ゲート  「ん~まぁいい。まず此処は[次元の狭間]・・・とでもいうべきか?俺の庭のようなモンだ。」

刻真   「次元の狭間・・・・」

ゲート  「もっと判りやすく言やぁ[お前のさっきまで居た世界]と[お前が本来居る世界]の間にある極端に不安定な場所・・・と言ったところか?」

刻真   「・・・・・。」

ゲート  「・・・まだ判らねぇのか?」

刻真   「いや・・・もういい。みんなは何処だ?」

せっかちだと言わんばかりに再び頭を掻くゲート

ゲート  「・・・心配すんな。多少記憶を弄ったが・・・みんな元の世界に戻した。ここに居るのは俺とお前だけだ。」

刻真   「・・・記憶を弄った?」

ゲート  「お前たちは本来居るべきではない場所に居たんだ。そのままの記憶で元の世界をうろつかれたらたまったモンじゃねぇ。」

刻真   「・・・確かにそうだな。」

本当は存在しない世界で闘った。その行為は自分たちの世界にとって良い事とは言えない。刻真にもそれは理解できた。

ゲート  「・・・・さて。じゃあ始めるか。」

刻真   「・・・・お前の力を俺に託す・・・か?」

ゲート  「あぁ。元々この力のおかげで厄介事が起きたしな・・・俺はもう十分だよ。」

刻真   「・・・1つだけ教えてくれ。」

ゲート  「あんだよ、これで最後だぞ?質問は。」

刻真   「・・・・俺が自分の精神世界から帰る時に頭に流れてきた記憶がある。」

ゲート  「・・・・・あ~」

刻真   「クルスと呼ばれる科学者・・・ゲートを使い、胎児2人を過去へと連れて行った。」

ゲート  「・・・・・・。」

刻真   「1人はレオン・・・これは判っている。だがもう1人は━━━」

ゲート  「あぁ、お前じゃない・・・・俺だよ。」

ゲートから笑顔が消え、真剣な眼差しを刻真に送った

ゲート  「クルス・・・親父は確かにゲートを使おうとした。でもな・・・行使できなかったんだよ。」

刻真   「だがクルスは行使した・・・なぜだ?」

ゲート  「2人の胎児の内1人をゲート行使の[鍵]に使った・・・俺の事だな。んで、もう一人は過去へと送った。」

刻真   「・・・・・・・。」

ゲート  「栄養を貰えたわけでもねぇのに俺は成長して・・・物心ついた時にはこうしてゲートを自在に使えるようになってたってわけだ。」

刻真   「・・・・・じゃあ俺は━━━」

ゲート  「ゲート行使の鍵でも何でもねぇ・・・俺が目ぇつけて傭兵の道に進ませなきゃあ今頃は[しがない少年]やってたろうよ。」

謝罪とも挑発ともとれる笑顔を浮かべたゲート・・・だが刻真は怒ることは無かった。代わりに━━━

刻真   「なぜ俺に目をつけた?」

疑問をゲートにぶつけた。

ゲート  「・・・・直感だよ。[コイツなら親父のバカな妄想を止めて、この力をちゃんと使えるかも]ってな。現にお前はもう1つのゲート行使の鍵であるレオンを倒し、ここに居る。・・・お前にならこの力を有効に使えるだろうよ。」

ゲートの素直な答えを聞いた刻真は何も言えなかった。

自分は今回の争いとは無関係だった━━━

その事実だけが刻真の頭を占領していた。

ゲート  「・・・・すまなかったと思ってる。俺と親父のせいでこんな人生送らせちまって・・・だからこれからはこの力をお前が自由に━━━」

刻真   「そんな力いらない!!」

刻真は叫んだ。今までで一番大きな声で・・・自分でも驚く位の大きな声で。

刻真   「確かに今の俺が居るのはお前たちのせいかもしれない・・・・でも」

頭に浮かぶ1人の顔━━━

たまに怖かった顔━━━

自分の為に泣いてくれた1人の顔━━━

刻真   「お前たちのおかげで・・・・アイツに会えた。」

ゲート  「・・・・・。」

刻真   「お前たちが俺を巻き込まなかったら・・・・アイツに会えなかった。」

ゲート  「・・・・・そうか。」

━━━しばし沈黙の時が流れた。そして不意にゲートが喋りだす。

ゲート  「あの世界にも俺たちの世界にも[if]という物がある。」

刻真   「・・・・・[if]?」

if・・・・もしも

ゲート  「例えば・・・・」

この物語は、1人の女性が1人の男性と出会った事で始まった。

では、例えば女性が男性と出会わなければ、この世界はどうなっていたのだろう?

流れのままに、滅びの道を歩んでいたのだろうか?

それとも何か別の結末が待っていたのだろうか?

今となっては解らない事だ。


刻真   「・・・・・・。」

ゲート  「どの世界でも[if]が満ち溢れてる・・・・。そのたくさんの[if]の中から1つが選ばれ・・・物語が出来る。」

刻真の身体が淡く光りだす。

刻真   「・・・・・これは」

ゲート  「俺からの礼だ・・・お前にたくさんあるうちの1つをくれてやる。」

徐々に刻真の身体が透けてくる。やがて刻真は狭間から消え━━━

ゲート  「・・・・・達者でな。」





2009年 倭山総合病院



麻都   「あ~あ・・・・職選び間違えたかなぁ。」

麻都はナースステーションでぐったりしている。目の前にコーヒーを置きながら瑞樹が話しかける

瑞樹   「あらあら、でもそのカッコ・・・似合ってるわよ?」

淹れたてのコーヒーを啜りながら麻都はぶーたれる。

麻都   「看護資格を取ったまではいいけど・・・何でよりによって実家の病院で働く事になったのよ。」

瑞樹   「いいじゃない、院長も喜んでるみたいだし。」

麻都   「・・・・あれを喜んでると言っていいのかなぁ?」

麻都が実家で働き始めて以来、父親である壮介は何かと(それこそラウンドから診察補助まで)麻都に頼りっぱなしだった。

働き甲斐があるのは麻都にとって喜ばしい事のはずだが、おかげで先輩看護士からは ひいきされて付け上がるなボンボン という位の勢いで睨まれていた。

麻都   「・・・・・いろんな意味で地獄だ。」

瑞樹   「まぁまぁ。それより今日の予定・・・覚えてるわよね?」

麻都   「・・・・・・へ?」

瑞樹は呆れたと言わんばかりに肩を落として麻都に予定を告げる。

瑞樹   「新しい先生・・・今日こっちに着くんでしょ?迎えに行けって院長に言われてたじゃない。」

麻都   「・・・・あ、そうだった。めんどくさ~」

瑞樹   「まぁまぁそう言わずに・・・そろそろいってらっしゃい。」

麻都   「ふえ~い・・・」

麻都はしぶしぶ立ち上がりその場を後にした。




麻都   「ったく・・・何が悲しくてアタシがお出迎えしなくちゃならないのよ・・・あのクソ親父、いつかギッタンギッタンにしてやる。」

文句を言いながら待ち合わせの場所へと向かう麻都。

近道をする為に、以前自分が住んでいた場所の林道を歩く。

麻都   (・・・・・・何かここ通るといっつも変な気分になるんだよねぇ。)

麻都は立ち止まり辺りを見渡す・・・・何もない。しかし何かが引っかかる。

麻都   (・・・・ここで何か・・・っていうか誰かと会った気がする・・・・誰だっけ?)

考え込む麻都・・・・・しかし何も思い出せない。

???  「人を待たせるのは良くないと思うぞ、倭山院長の娘。」

突然背後から声が聞こえ、驚いて振り向く麻都

麻都   「・・・・・・・。」

黒いジャケット━━━

???  「・・・・おい」

ちょっとキツそうな目━━━

???  「・・・・・・・こら」

自分と同い年位の━━━

???  「・・・・次は無視か?」

麻都   「え!?あ・・・・ごめんなさい。新しく来られる先生ですよね?」

???  「でなければ声などかけん。」

麻都   「あ、アハハハハ!そうですよね!!・・・・あれ?でも何でアタシの事。」

???  「こっちに来る前に院長から写真が送られてきた。迎えには娘を出すってな。・・・・これだ」

確かに麻都の写真だった。 撮られた覚えの無い写真だった。 写真の裏には


惚レタラ殺ス!

と、大きく書かれていた。

麻都   (・・・・・捌いてしまうか、あの盗撮魔。)

???  「・・・・大切にされてるな。」

麻都   「ごめんなさい・・・只のバカなんです。」

???  「・・・・・・そうか。とりあえず、案内を頼む。」

麻都   「え?あ、ハイ。・・・・あ」

???  「どうした?」

麻都   「そういえば、名前聞いてませんでしたよね?」

???  「・・・・そうだな、失礼した。俺の名前は━━━」


例え話をしよう

別次元の2人の活躍で世界は救われた。そして別れを惜しむ事無く2人は離れ離れになった。

では、もしこの2人が同じ世界で 同じ時間を共有する事になったらどうなるのだろう?

例えば この2人の様に・・・


刻真   「倉元 刻真だ。」

麻都   「アタシは倭山 麻都です━━━」



コレカラモ ヨロシク




刻真   「これから・・・・・も?」

麻都   「え?あれ?アタシ・・・・何で?」





THE END


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