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昔TVで放映していた刑事コロンボを楽しみに見ていました。犯人は冒頭でわかってしまいます。ですから、見所は犯人とコロンボの頭脳戦です。お金も社会的地位もあるぱりっとした犯人が、よれよれのレインコートがトレードマークの冴えない刑事に追い詰められていくギャップが愉快でもありました。
そのコロンボと同じように、しつこく迫って犯人を追い詰める乙姫刑事が登場する短編集2冊目が『世界の望む静謐』です。
乙姫刑事の外見は、コロンボとは全く異なります。
「痩せて背が高く、黒いスーツに黒っぽいネクタイ。猫背の身体全体から漂う陰気な空気感。げっそりと痩けた頬に青白い顔色。表情の感じられないガラス玉みたいな目が落ち窪んだ眼窩に嵌まっている。」容姿は、「死神が来た」と犯人をおびえさせます。
表情のない顔で、お世辞や冗談を交えながら、次第に犯人を追い詰めていく乙姫刑事を想像すると…恐怖です。モデル並のイケメンで、なんやかやと言われても常に平静な相棒の刑事も、ちょっと怖い。
逮捕に至った犯人は皆、潔く負けを認めます。「さすがに本職はたいしたものですわ。エレガントですわ」「まいったなあ。それじゃあ逃げ切れるわけがない」「完敗ですね」「脱帽だ、シャッポを脱ぐ」幕切れの爽やかさもコロンボばりです。
参照元:倉知淳『世界の望む静謐』東京創元社
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