康夫ちゃんインタビュー





毎度おなじみ「K嬢の長野県政ウォッチング日記」から、
康夫ちゃんのインタビュー部分を転載します。
けっこう本音が語られてると思いますのでよ~く読んでみてね。

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先月、知事にお話を伺いました。その様子を順次公開していきます。ダッシュで始まるのがK嬢発言、カギカッコで始まるのが知事発言です。どうぞお楽しみに。



―最近の通勤状況は

「週2~3回は泰阜村から、高速バスで。まあ元々、知事になる前も週に3日は神戸、1~2日は取材や講演で地方に、という生活でしたから。知事になっても、週2~3日は打ち合わせ等で東京。で、週1~2日は出張先の県内各地に宿泊、という状況でしたからね。5月中に長野市のマンションを引き払います。遅くなった時には、両親が暮らす軽井沢へ泊まります。僕は信州に相応しい縄文型の狩猟民族ですから(笑)。

昨年のインフィオラータの際、通行車両規制をしたために経営する駐車場収入が減ったという理由で、一旦拠出した100万円の中から20万円を返して欲しいと申し立ててきた、普段から税制上の優遇措置の恩恵を満喫している善光寺を『善光寺さん』と崇め奉って、批判の『ひ』の字も言えない文化都市・長野市にだけ居たら息が詰まって、アイディアも浮かばなくなります(苦笑)。

朝、飯田市の伊賀良(いがら)バスターミナル5時25分発のバスを待っている際、例えば『民生委員の会議に出席するので長野市まで。今週は2回目です』などと僕に話しかけてくる人たちが大勢います。伊那や松本から乗り込んでくる人もいる。県庁所在地・長野市だけが信州・長野県ではない。頭ではわかっていても、これは実際経験してみないと想像力が及ばなかったりするわけです。

南信の人はそれを普通にやっているんだけれども、北に住む人は上田や松本で会議が開催されると『遠い』と言ったりしてるんじゃないかと。

私は220万県民のために県政を行なっている。県庁所在地の人、もっと言えば、県本庁舎内、県議会棟、信濃毎日新聞本社ビル、それぞれの中で働いていたり、そこに出入りする人々のためにサービスを行なっているのではありません。県庁所在地イコール長野県じゃないんです。県本庁舎に勤務している者だけが県庁の人ではなく、それぞれの現場で働いている全員が県庁職員なのです。

まあ、バスの中では『南信州』や『信州日報』を含めた新聞全紙に目を通せますし、気付いた指示事項を職員が登庁する前にメールを打ち、余裕があれば少し睡眠を取ったりします」

「県本庁舎から離れた場所に居住するのは危機管理上いかがなものか、なんて県議会の小林実・元議長や宮沢敏文・総務委員会委員長は言ってるんでしょ。もしもの地震が起こる確率は、むしろ南信の方が高い訳でね、失礼な話だと南信の人は怒ってるよ、マジで。

その理論にもならない理屈を突き詰めると、知事は本庁舎内で寝泊まりせよ、霞が関へも出掛けるな、県庁舎から1km以上遠い場所へは視察も出掛けるな、って話でね。そうした農耕民族的というか山国長野県的発想には頭を抱えちゃう」

―先日見かけた地元向けの情報誌の中に「知事が住所を移すことについて、いちばん不思議に思うのは、長野市の人がなぜ『知事、行かないで』と引き留めようとしないのかということ」という文章があっったんです。それを読んで私がまず思ったのが『引き留めようとしているのは鷲沢・長野市長だけだもんなぁ』ということだったんですけど

「(爆笑)言えてるね。でも、彼も含めて長野市民は、どういう心算だ、出ていくとは、という批判でしょ。仮に松本や飯田に知事が住んでて、長野市に移ると言ったら、多分、住民は哀しい、寂しい、と言うよね。でも、長野市民の多くは(長野市を出るとは)けしからん、な訳。これは、総務省の言う事には逆らわない、という中央集権的な発想だね」

―最近行なわれた各地の首長選挙について

「小諸市長に選ばれた芹沢勤さんは考え方が合うのでは、と思っている。この人は元県職員だった人ですが、助役時代に『市役所・職員の改革をしなくちゃいけない』と言って、元市長の下で一期でクビになっちゃった過激な人。覇権主義的な佐久市との合併に反対だし、ガス化高融炉の新設でなく、既存の休止施設を使うべし、と鋭い。バランス感覚の菅谷昭松本市長も見習うべきかも。

泰阜村の松島貞治村長と並んで、下條村の伊藤喜平村長も逸材だね。ガソリンスタンドの経営者から村長になった人で、着任してすぐに役場幹部の怠慢ぶりに業を煮やしてホームセンターで研修させた。誰かと違って、背筋も凍る人事、なあんてマスメディアちゃんから批判もされない。そりゃ、小さな村だから、困った職員だと村民も知ってたんだね。組織は大きくなればなるほど、市民のチェックが利かなくなるという実例ね」

―世の中全体に「わかりやすいことがいいことである」というなんとなくの風潮がある中で、「コモンズ」や「ユマニテ」などというのが「わかりにくい」という声はしばしば聞こえてきます。(参考:県の組織改正で『ユマニテ・人間尊重課』というのが誕生した。ユマニテは仏語で、英語のヒューマニティ、日本語なら『人間性』に相当する。コモンズについてはhttp://www.pref.nagano.jp/kikaku/kikaku/vision/saisyu2.pdf参照)

―私K嬢は、「わかりやすい」「わかったような気になる」と話がそこで終わってしまう、気にとめることもなく流れていってしまう、そんな風にも思っているんです。現に5月の組織改正で他にどんな課が誕生したのか把握している人は少なかったりする(笑)。「ユマニテ」については多く報じられたこともあって逆に話題になった面もある。肝心なのは名前ではなくて、実際は何を行うのか、という気持ちもある。

―例えばコモンズやユマニテと呼ぶのは、そういうところを思ってのことなのか、県側もさらに説明をつづけることや、実際にどんな予算を用いてどんな事業を行なっていくのか、ということで県民に理解を得ていこうということなんでしょうか

「わかりにくいというのなら『泰阜』も多くの人が最初は読めなかったわけだし(笑)わかりやすいといって、何でもかんでもはやりのひらがなの自治体名みたいにするのはちょっと…

旧来の言葉に拘泥しない概念を目指す、ということですね。コモンズは言ってみれば『集落』や『部落』ですが、『集落』や『部落』という言葉のイメージとして、従来型のピラミッド型の印象、上にいる少数の人が言うことや行なうことに口をはさみにくい、みたいな印象がある。

コモンズと呼ぶことで、いったんそういう概念を断ち切ろうという気持ちもあった。予算を実行することでだんだんとその姿を見せていく。平場で誰もが発言して行える社会、それは集落の域を超えて広域や県全体までも広がっていく重層的なものです。

人権や男女共同参画という言葉にも既に出来上がったイメージがあって、それに対する抵抗を覚える向きもあるだろうし。単に『人間尊重課』だけでもつまらない。

5年ぐらいたって、今県が行っている・行おうとしていることがあたりまえになった頃に、集落とか人権という名前がまた出てくることもあるかもしれない」


―最近、知事自身の発言で『県民益』という言葉があまり聞かれないような気がするのですが

「食べ物の好みに波があるのと同じようなもので、自分の中で旬か、そうでないかの時期があるかもしれないし、また復活することもあるかもしれない。ある程度人口に膾炙してきている(このフレーズを口にする人は多い)部分もあるし」

―先日、テレビのインタビューに応えた栄村(県最北端に位置する)の村民で『知事も小さな村の事情を知りたかったら栄村に住めばいいんだ』と言っていた人がいましたが、移住先が泰阜村ではない可能性もありましたか

「泰阜村の福祉事情に感銘を受けて、それを応援したい気持ちがあったのが発端ですが(http://www.pref.nagano.jp/hisyo/press/20030926.htm の後半部を参照)、先ほども言ったように、朝5時25分発のバスに乗って出てくる人の現実は長野市の人はわかってるのかなぁという気持ちはあります。私は長野市民のためだけでなく、県民全体のために働いているのですから。

無論、栄村も素晴らしい。だから、おらが村に暮らさないのは間違ってる、といった偏狭な山国的考えを栄村の人には抱かないで欲しいね。それは、どこかの県庁所在地だけで十分でしょ(苦笑)」

―「信州」という言葉が、対外的にアピールする力が強いのは私にもよくわかりましたが、この言葉を県内の人たちにさらに印象付けるにはどうしようとお考えですか

「国の言うこと、やることなら何でも従うのか?という総務省との戦いのひとつです。『信州』は『信州県』にしようというのではなくて、『信州・長野県』というひとくくりのブランド。これからも信州ブランドの確立を進めていきます」

―今年春、新制度での高校入試がはじめて行われました(制度についてはhttp://www2.diary.ne.jp/search.cgi?user=95992&cmd=search&word=%8Aw%8B%E6 参照)。県教委では受験を経験した生徒や保護者へのアンケートをこれから行うようですが、知事が通学区の拡大にはじめて言及してから3年という今の時点で、思うことなどありましたら教えてください

「過渡期、であるということですよね。狭い箱(通学区や受験回数など)を変えたわけですから、あとは中身に何を盛り込むかというのは県教委が絶えず努めていくことです。ときどき、手綱の向きを変えていくことはあるかもしれませんが」

―長野県民って、抽象概念をもてあそぶのが好きで、結論を示されると(楽しみが終わってしまうから)それを嫌がる、というのはよく言われることです。身内で小さく小さくかたまって何やらくしゅくしゅと、できるだけ外のものを入れないで内輪でちんまりとまとまりたがる、というのも同様に言えます。就任以来の3年半で、そういう部分はずいぶん見てきたんじゃないかと

「外部の職員を(任期限定部課長級として)多く採用したのは、ひとえに県職員に『スピードがない』、このことに尽きる。とにかく前例踏襲の議論を延々と続けてなかなかまとまらないことが多い。県出身者に官僚が多いのは、わかる。でも、飛びぬけた存在はあまりなかったりする。

私のように好き放題言ったりやったりして、それでも6割もの県民が支持して下さるのもありがたいというか不思議ですが、他方で長野県で起こっていることが長野県の外でどれほど広く注目され高く評価されているか、そのことを最も認識していないのも井の中の蛙のような長野県人だったりする。外からどう見られているかわかっていない県民性、とも言える」

―そうした県民性を嫌になりませんか

「冷たいなぁ、と思うことはある(笑)地域によっても違うんだけれど…。冗談を解するというか、『面白い』ということを『ふざけている』とか『軽い』とかではなく『わくわくする』『期待できる』『注目できる』と感じてもらえると嬉しいな、とも思うね。基本として、ワクワクドキドキする県政改革でありたいね。まあ、県議会の意識が変わらない限り、難しいだろうけど。その意味では、これから3年間、あのような県議会を選んだ事が日々、県民に突き付けられていくんだね」

―知事の(県政運営も含めた)大きな方針として「個性と公正の尊重」というのがあると思うんですが、日本人の一種悪平等的なものを重んじるメンタリティとかなり遠く、達成が困難にも思えるのですが

「難しいですね。でも、難しいからこそ言葉を発することによって行なっていかなくてはならない。言葉に力があることに想像が至らない今のマスメディアも含めてね、妙に長い物に巻かれる権威主義が横行していると思います」

―お上(かみ)が上(うえ)に鎮座ましまして、何もしないでお雛様のように悠然と微笑んでいるのがよい、と思っている層は相当数あるのかもしれませんね。

―塩尻市の県林業総合センターに設けた『知事室分室』なんですけど、最近は各地の県職員との懇談などを行なうことが多いようですが、例えばある月には知事は1ヶ月まるまる分室で勤務するなど、その時には分室に行けばそこに知事がいて、県民誰もが知事に会えたり執務の様子を見ることができたりする、いまの知事室のような状況で使うこともできるのではという気がしています。

東信なり南信なり、他の地区にも分室を設けるお考えもあるようですが、2001年に行なわれた『どこでも知事室』の時のように(県内10広域の地方事務所などに知事がそれぞれ出向き、現地の視察や首長・県議らとの懇談を行った)、事前にスケジュールを組んでこの時はここにいる、というのはどうでしょうか

「鋭い指摘だなぁ。森の中で議論すると、僕も職員もリラックスして県民の目線に立てる。長野市南長野幅下の県本庁舎では、そうした議論や発想は望めない。8時過ぎにこの建物に入ってくると、家では素敵な父親である筈の職員が霞が関を向いた体温の低い組織の一員になってしまうんだ。緑の中の環境が、大多数の県民の日常なんだから、その意味では県本庁舎を小さな村に移して、そこでは300人くらいしか働いていなくて後は皆、市町村の現場へ出掛ける営業マンという体制が理想だね」

―松本市の菅谷市長に望むことは

「もう既に何度も本人にも言っているのですが、行政や役人は『いったん決まったことはスケジュールどおりに行なっていただかないと』『タイムリミットは何日までです。それまでにご判断を』という態度で臨んでくるものです。

そこで先方のペースに乗せられないで、その『締切日』とされる日になっても仕切り直しすれば、必ずそこでリセットされてまた新たに動いていくものなんです。

リーダーとしての確固たる方針を示すこと、周囲のペースに振り回されないこと、いったん決まったことでも立ち止まったり引き返したりする勇気をもつこと、こういったことが特にはじめのうちは重要なんです」

―公務での海外行きの予定は

「秋にブラジルとアルゼンチンに出かけます。ブラジル・アリアンサの地に信濃海外会として入植してから今年で80年です。アルゼンチンへは一昨年出かける予定が、経済危機など政情不安で延期になっていました。ブラジルではルイス・ルラ大統領にもお目にかかることになっています」





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