ロックの部屋

ロックの部屋

Flying Lizards


Flying Lizards

セックス・ピストルズ等のパンクの登場で、活性化した70年代ロックシーン、アンダー・グラウンドでは、ネオパンクとして次の世代のバンドの登場が待たれていた。

【フライング・リザーズ】もその一つ。壊れたがれきの中から、根が生え出したような音楽。単調なリズムの繰り返し、ギターのリフ、鈍いベース音。チープな構成。70年代中期まで構成美と大作で盛り上がりをみせたプログレッシッヴロックとは、全く正反対な手法。中心人物のデヴィッド・カニンガムは、楽器が全く出来ない人であるらしかった。確かに音楽を演奏しているスタイルではなく、単体のサンプリング音をパズルのように並べ組み合わせていく。

それなのにフライング・リザーズの音楽が気持ちいいのは何故だろう。隙間だらけなアコースティックサウンドで一つ一つの音が透けて見える。「サマータイム・ブルース」や「マニー」といったロックのスタンダード曲もこのアルバムでは取りあげているが、もはや原曲のかけらもない。

驚くべき事は、このアルバムは英米のチャートで上位まで行っていることだ。当時のオーディエンスが既存のロックに飽き飽きしていた事は明らかなようである。

フライング・リザーズが評価されたのは、のちに続くテクノ・ニューウェーブ・ネオアコ・ハウスミュージックの指標になったからに違いない。要するに全ての要素が含まれていてバランスが保たれていた。よりミュージックコンクリートよりになると【スロービング・グリッスル】などが出てくるし、テクノよりになると【ソフトセル】、ネオアコよりになると【ヤング・マーブル・ジャイアンツ】になる。

ロックのグルーブではなくて、覚醒。このあたりが80年代に踏み込められるか、70年代のロックに留まってしまうかの境界かもしれない。

1979年の重要作Flying Lizards(フライング・リザーズ)のファーストでした。


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