ロックの部屋

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WHO


ODDS&SODS
いろんなグループのロックを聴いてきたけど、私の場合「カッコイイ」と真一文字に言えるのは後にも先にもフーだけです。ストーンズはかっこいいと思ったことはないし、どちらかといえば「渋い」、ビートルズは良くできているなぁ、「凄い」「恐ろしい」(才能が)
と思うことはしょっちゅうですが、かっこいいとは違う。

フーのライブステージ見たさで、TV放送されたライブはベータで録画したし、LD盤の『フーズ・ベター・フーズ・ベスト』のクリップ集も買ってしまいました。

何がこんなに私を魅了するのだろうか。

キース・ムーンの速射報のような、けたたましいドラミング。
ピート・タウンゼントが飛び跳ねる、フイードバック奏法。
ロジャー・ダルトリーのマイクスタンドを振り回しながら、マイクに食らいつくヴォーカルスタイル。

どれも、覚醒したハードロックスタイル。切れ味が鋭くて、鈍さがない、迷いがない、ストレート、きもちが良い、等々。聴くのならスピーカーのコーンがぶち切れるくらいの大音量で聴くのが好ましい。

『ODDS&SODS』はタイトルが(寄せ集め物と野郎ども)と付けられているように、未発表曲でした。発表された当時のオリジナル盤は14曲入りだったのですが、今手に入る物はさらに9曲の未発表曲が追加されている。23曲いりの凄いヴォリュームのアルバムで、裏ベスト盤といってもいいような優れものの曲が揃っています。

有名な『ライブ・アット・リーズ』で聴ける「サマータイム・ブルース」のスタジオ収録ヴァージョンなどが入っています。この曲はエディ・コクランのカバーだけどフーを代表するレパートリーになってしまいました。

フーがモッズなど若者の代名詞のようになっていたのは、曲の内容がそうだから。「サマータイム・ブルース」もそう。

♪俺って道理もなく働いているんだ
 貧乏になりゃ大声で文句も言うぜ
 たった1ドル稼ぐために
 ここで夏中働かなきゃなんないんだから
 ある日ボスのところに行ったんだ
 おまえに払う金はねぇよ、若僧
 仕事が遅すぎるんだよってボスは言う
 いったい俺たちはどうすりゃいいんだ
 サマータイム・ブルースに
 救いなんかないんだよ♪

空威張りではなく、若者の弱さと現実が見えるところが共感を呼ぶのだと思う。「ヤングマン・ブルース」もそうだ。

♪最近の若い奴らはちっとも金なんか手にできない
 知っているかい昔はさ
 若僧がいわゆる強い男だった頃のことさ
 一人でも若いのが歩いてくるとさ
みんな、おもわずひるんで後ろに下がったもんさ
 だけど近頃じゃ金持ちなのは年寄りだけ
 最近の若い奴らはちっとも金なんか手にできない
 なんにもないのさ♪

どうこの詩、今の日本の状況にピッタリはまっていると思わないかい?増え続けるフリーターに、年金生活で悠々自適の年寄り連中。今の若者が老人になっても年金生活が確保される保証はないし……

「サマータイム・ブルース」「ヤングマン・ブルース」はギター・ベース・ドラムスはじけまくりのライブでは欠かせない激かっちょいいナンバーですね。

「リトル・ベリー」という曲はアメリカ癌協会のために作られたキャンペーンソング。フーが歌えば若者を中心に効果があがると思ったかどうかは定かではありませんが……

♪ほとんどの子供たちは煙草を吸った
 ただ自分たちがクールであることを証明するため
 先生は子供たちのゲームを知らなかった
 ビリーはいつも規則を守っていた

 さてビリーと同級生たちは中年になった
 自分たちの子供もできた
 彼らの煙草吸いゲームは現実となった
 癌の種は蒔かれている♪

この曲は結局、キャンペーンソングとしては使われなかったようですが、曲の良さはアルバムの中では1.2です。ピート・タウンゼントのリードヴォーカルですが、他のメンバーのハモリが最高に決まってます。

「不死身のハードロック」もかっこいい。

♪Long live rock
 I need it every night
 Long live rock
 Come on and join the line
 Long live rock……
 Be it dead or alive♪

ロックよ長生きせよ、俺には毎晩必要なんだ。ピッタリです。(笑)



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WHO来日記念『the singles』(フーが日本で人気がなかった理由) 



ロック・オデッセイ2004でのフーの来日公演どうだったんでしょうね、私は行きませんでしたが……ポール・ウェラーはいいのだけど、後一組好みのバンドがセットされていれば行く気になったのですが今回は見送りました。

ところで、フーのアルバムはデヴュー40年にもなるというのに、日本では今が一番売れているそうです。これはとてもおかしな事、フーの偉大さを知っているベテランのファンだったら納得がいかないところですが、実際の所、こと70年代に関してはフーは日本では無視されていました。これは事実です。

推測も含めて当時を振り返って分析してみると、こんな事があげられます。

1.60年代後半から70年代にかけてニューロックムーヴメントが盛り上がっていた時期(あくまで一部のロック通)に、ロックオペラ等の大作主義に走った。『トミー』は三重苦の少年トミーの苦悩でありロック世代のテーマに絞り込んだ作品であったのですが、言葉の問題で理解しずらかった。それから、日本の若者文化は4畳半フォーク全盛の時代であってロックはまだ文化として根付いていなかった。音楽的には【ピーター・ポール&マリー】などのポップでメロディーに優れたものが好まれていて、フーのようなビートバンドは日本人に馴染まなかった。あの日本のロックの先駆けと言われている【はっぴいえんど】でさえ影響を受けたのはアメリカのフォークロック系の【バッファロー・スプリング・フィールド】である。

2.フーは1971年に名作の『フーズ・ネクスト』を1973年に再び大作の『四重人格』を発表している。この時期ロック雑誌のグラビアを飾っていたのはご存じ【TREX】【デヴィッド・ボウイ】等のグラムロックか【レッド・ツェッペリン】【ディープ・パープル】等のヘヴィ・メタ系のハードロック。派手なコスチュームのグラムロックに音響効果が刺激的だった派手なハードロックが人気がありました。言葉やコンセプトよりも視覚聴覚に訴えるロックが支持されていたため、フーはけして目立たなかった。

3. 日本人の好きな構成美、構築美としてロックの対象にあったのが、全盛であったプログレッシヴ・ロック【イエス】【EL&P】等でありそちらに関心が向かっていた。

おもに上の3点ですが、実際ハードロック好きヘヴィメタ好きの人が「フーはつまらない」と言っていたのを聴いたことがあります。若者の文化的なものよりも、サウンドによるフラストレーションの発散やカタルシスに向かっていたのでしょう。日本のロック好きの大半は。私も「フーが好きだ」と言ったら「珍しい」と言い返されたしね。実際フーの日本での評価はそんなものだったのです。フーの来日が今まで実現しなかったのは、日本のロック好きが来日を熱望していなかったからです。それに関連して高いギャラが払えなかったという主催者(音楽事務所)の事情もあったのかもしれません。

最近はフーのディスクガイド本もいくつか発売されていて、私も『トミー』以前は整理されていなかったのですが、それらを読んでみてフーの全貌が分かってきました。

つまり、どれが英国オリジナル盤なのか米国オリジナル盤なのかが分かっていなかったのでした。デヴュー作の『マイ・ジェネレーション』は英国オリジナル盤がドラム管を横に上を見上げている4人のポートレート写真で、米国オリジナル盤がビッグ・ベンを背景にしたポートレート写真です。収録曲も若干違っています。セカンドアルバムはもっと分かりにくくて、ジャケットは英国盤も米国盤も一緒、違うのはアルバムタイトルだけ。英盤は『A QUICK ONE』で米国盤は『HAPPY JACK』のロゴです。収録曲も一部差し替えられています。

そんなわけで、私が実際所持しているのは編集物のベスト盤や『四重人格』『オッズ&ソッズ』で初期のアルバムは持っていませんでした。整理つかないうちに買ってしまうと曲がダブったり英国オリジナルのつもりが米国盤を買ってしまったなんて事にもなりますからね。『マイ・ジェネレーション』もボーナストラックが17曲も入っているのが売っているようですが手に入れたいです。日本盤は4200円もしますが、これはちょっと高いですね。

『the singles』はシングル盤の中から代表的なものを16曲集められたベスト盤です。私が持っているベスト盤はこれ。最近発売された『ゼン・アンド・ナウ』には「キッズ・アー・オールライト」「アイ・キャント・エクスプレイン」「シー・ミー・フィール・ミー」が入っていますが、こちらにはなく「リリーのおもかげ」「ジョイン・トゥゲザー」「レッツ・シー・アクション」がセレクトされています。新曲も入っている『ゼン・アンド・ナウ』の方が価値はあるかもしれない。

通して聴くと、フーのロックにはブルース臭さ、R&B臭さカントリー臭さトラッド臭さが薄いのが分かります。これも日本で受けなかった理由、退屈なロックバンドという意味で。

ニューロック以降のハードロックバンドと比べるとかなり異質ですがこのあたりがパンク以後のギターバンドに受けいられた要因かなとも思います。(より性急なロックが必然だったという意味で)

                          (2004-07-27 記)

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