七つの星降る七つの湖

七つの星降る七つの湖

★鬼畜(邦画)








見かけたらラッキーです!絶対借りてください>


 この作品はかなり規模の大きいレンタルビデオ店じゃないと見つからないかもしれません。

 私が住む近辺にはレンタルビデオ店が四件あるんですが、数年前に四件中一件でしか見つけることができず、去年にはそのビデオレン

 タル店からも姿を消してしまっていました。

 お出かけの際に立ち寄る機会がありましたら、あらゆるレンタルビデオ店

 でチェックした方がいいかもしれません。

 と言っても、始めに言ったように、大型店などではおそらく確保されているかとは思いますが・・・とにかく、見つけることができま

 したら、すぐにレンタルなさることをお勧めします。

 それぐらい古いし、マイナーな映画というわけですね。

 緒形拳や、「極・妻」の岩下志摩も出演していたりします。



 タイトルからしてグロい映画を連想してしまうかもしれませんが、そういうゲテモノ的映画ではまったくありません。

 ジャンル分けすると・・・人間ドラマ、と言えるでしょうか。

 タイトルの「鬼畜」と言うのは、まぁ、少々大げさな表現なんですが、現代社会に生きる私達にとってはある意味、緒形拳が演じる主人公 

 を皮肉った言葉のようにも解釈してしまえます。






殺人事件などに対する今と昔の認識の違い>


 というのも、幼児虐待に始まって、親が実の子供を殺害する、などの事件が昨今では頻繁に起こっていますよね。

 それに対して、おそらく「鬼畜」が制作された時代(20年以上前)では、そんな事件は本当にごくごく稀だったのではないでしょうか。

 もちろん時代が変われど、そういった、我が子を親が殺害するという行為が残酷視されるのは当然なのですが、当時と今では、やはり

 そういった事件に対する認識のレベルがかなり違うと思うんです。



 悲しいかな私達は、前述したような事件をニュースなどの報道で耳にすることも、今や全く珍しくありません。

 近年目立ってきている他の非道な事件についても同じことが言えますが、「鬼畜」制作当時のような20年以上も前の日本では、そう

 いった事件の概念すらなかったんじゃないかと思うのです。



 例えばあさま山荘事件、例えば3億円強奪事件など、今なお語り草になっているほどの歴史的事件がありますが、そういった事件は、

 所謂その道のプロ・・・と言うと語弊がありますが、少なくとも普通に生活している「いち一般人」とは色んな意味で異質である人物

 達が起こしてきています。

 ですから、殺人事件や立てこもり事件などは、(今でももちろんそうですが)当時は今以上に、「非日常的で特異な事件」、として捉

 えていたことでしょう。



 しかしそういった殺人事件や人質事件、強盗事件などは、今やもう大っぴらと言えるくらい頻繁に起こっています。

 実生活からすれば非日常でも、耳にすること自体は完全に日常化してしまっているのです。

 これって、実に恐ろしいことですよね。

 ですがそのへんについては、マスコミュニケーションなどを筆頭に各メディアの情報収集力などが、昔に比べて格段に上がったせいで

 あって、昔から各地でそういった事件はもともと起こっていたのかもしれませんが。

 どちらにしても、凶悪な事件への認識は、今と昔とでは全く異なっている事はまず間違いないと言えます。



 そういったことも踏まえてこの「鬼畜」を見ると、見る側の心の中での話ですが、「昔は平和だったんだな」と、逆説的に解釈することが

 できるかもしれません。

 そのうえで、この「鬼畜」というタイトルがずっしり胸にのしかかってくることと思われます。






犯罪の身近さを知るきっかけになりうる>


 主人公の行いは間違いなく「鬼畜」にふさわしいんですが、それでも、気持ちはわからなくもないと言いますか、心情を理解しやすいと言

 いますか・・・。



 前述したように、およそ殺人事件などとは無縁の位置で生活している当時の一般家庭が、まさにこの作品の登場人物であるんですが、

 ある理由や事情により、平和が狂気に変わるということを、何度も言いますがおそらく当時は「特異なもの」として描いているはずなんで

 す。

 にも関わらず、それこそ狂ったような事件を聞き慣れている私達の方が、当時の非日常を描いているであろうこの映画を、当時の観覧者

 よりも「より身近なもの」として捉えられる、といった、非常に皮肉な二次的効果をこの作品は生み出しているのです。

 ですから、鬼畜とは銘うたれていても、主人公が極悪人、というわけではないので、親近感がわきやすいのです。

 言い換えれば、どうも憎めない、ということになるのでしょうか。



 もしかすると、犯罪に対しての「真っ向からの拒絶」ではなく、「受け入れ、そして理解したうえでの拒絶」という、とても大切な認識

 を、この映画を通じて再確認することができるかもしれませんね。

 犯罪者であれ、自分と同じ人間だ(自分も被害者、加害者になりうる状況の中で生きている)、と理解するのは今の世の中だからこそ必

 要なことですし。

 それは「犯罪者であろうと、自分と同じ生きとし生けるもの」というような大げさな理由ではなく、正面から否定するだけでは、万が一

 自分がそれら犯罪者と同じ状況に遭遇してしまった時、犯罪だからだめだ、という理由だけでは、精神的支柱として弱すぎるからです。

 何せその状況は、誰かが殺人を犯してまで打開しようとしたほどの状況なのですから。



 どちらにせよ、同じ人として生きている限り、あくまで「状況」という観点だけで言えばですが、そういった犯罪を犯しかねない状況が

 絶対に訪れない、とは言い切れないですよね。

 事実、連日想像しがたいような悲惨な事件などが取りざたされていますし。

 犯罪に対する理解と認識を深めれば、自分が被害者にも加害者にもなりにくい状況を作っていくことに、きっと通じてくることでしょう。

 この「鬼畜」には、そういった犯罪に対する「身近さ」をよりダイレクトに感じるきっかけとなる要素が、多分に含まれています。



 とにもかくにも以上のような理由で私は、今の時代に生きる私達の方が、この映画をより深い視点で、そしてより近い視点で見ることが

 できると思えました。

 本当に古い作品なので、映像の劣化もあるとは思いますが、ぜひ見つけて観賞していただきたいですね。






S・J的、邦画三巨頭の一角です>


 主要登場人物は、中年の男と、その浮気相手の女。

 そしてその二人の子供である、幼い兄と妹と末っ子の赤ん坊。最後に、その中年の男の実の妻、などです。

 男性も女性も、幼い頃の日々を、その子供達に重ねることが容易にできると思います。



 一言では言い尽くせない様々な細かい要素が、映像自体の古さ、当時リアルタイムだった時代背景の今となっての古さ、そして淡々と

 続いていくストーリー展開とうまく絡み合い、絶妙に現実感あふれる作品に仕上がっています。

 全て無駄なくまとまりきっており、「リアル」の一言です。

 このリアルさは、似たようなテーマを扱った近年のスタイリッシュ志向の邦画には出せないでしょう。

 ある意味このリアルさは、偶然の産物でもあるからです。



 残酷で、切なくて、胸が痛くて痛くてしょうがない。

 そして、私達がおよそ取り戻しがたい、幼い者だけが持ち得る「素直さ」と「無邪気さ」が、さらに見る者の心に追い討ちをかけます。



 私の中では間違いなく殿堂入りの、緒形拳主演、「鬼畜」。

 映画紹介第一弾に自信を持ってお勧めさせていただく、邦画史上屈指の名作です。






 (皆さんのご感想を、お待ちしていますね。)

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