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AIFREAD血盟(サリアス日記)
破望の章-3-
船はその後、快調に進んだ。
先の戦闘が第一陣だったらしく、魔族も魔物も出現することはなかった。
その分故郷のアイフリードを案じるティナ達だったが、ネオリオン号は一路アースクライを目指す。
アイフリード島から南下して、エルミアサンドリア大陸に入る。
アイフリードから14日の船旅だった。
ケイレースの港で物資を補充して、再び一路南へ。
ケイレースからは1週間の船旅だったが、天候も快調で、苦もなくアースクライ島にたどり着くことが出来た。
アースクライ島はエルミアサンドリア大陸と、その南フレイブロー大陸のちょうど真ん中で、抱きかかえられるように位置している。
サンドリアとフレイブローの武力抗争が激しかった中、難民がこぞってここを訪れ、後に国を挙げ今に至る。
アースクライの港はにぎやかで、日差しは明るく、風や自然は陽気で、人々もどこか楽しげだった。
アルスらの乗っていたネオリオン号がアースクライの港に着いたのは、日が上がってきて人々が起き出す時間だった。
ここは、港町と一緒に繁華街、住宅街、職人通りと四区画を、城を中心にして栄えている珍しい城都市だ。
ネオリオン号は更にディスティニア大陸を目指すため、大型の補給に入る。
出発は二週間後であり、それまで町の宿で過ごす手配になっている。
ディスティニーを目指す船はこの船しかないので、他の船で行こうとするならば他の大陸や島などを経由しなければならず、半年位おくれてしまう。
だから、二週間という休暇を余儀なくされてしまったのだった。
昼頃宿にチェックインして、荷物を預けてしまえば、後はやることがない。
取り敢えず昼食を摂るために喫茶店やレストランなどを探す。
特に何を食べたいという気分でも無いので、手近な店に入り、アルスは適当に注文した。
ティナはどれにしようかと悩んでいたが、アルスは勝手に決めてしまった。
ティナは文句を言うが、上の空で相手にしない。
やがて料理が運ばれてくる。
料理を堪能しながら、ディスティニアへ思いを馳せる。
もうすぐ着くという期待と、やはり帰郷に不安がある。
故郷には義理の妹を置いてある。
もう5年も会っていない。
そして、やはり変わり果てた親友に会うのも辛かった。
いまやディスティニーの王となった彼は、アルスの知る昔の彼では無いようなきがした。
その分帰郷が辛い。
料理もあらかた片づき、会計を済ませて外へ出る。
ふと、なにか不穏な空気を感じて空を見上げる。
だが、何もない。
気のせいだったか、と首をふり、だが、やはり感じる。
港だ!
アルスはアイティーに目配せして1人港へ走った。
海は相変わらず真っ青な水平線だ。
アルスは海を見渡し、港の一角が騒がしい事に気づく。
そこへ向かうと、漁師や海兵らが一隻の船を眺めていた。
船には青ざめた漁師が乗っており、頻りに叫ぶ。
「魔物だ!魔物を観たんだ!間違いない。ものすごい数だ!」
アルスは嫌な風を感じていた。
一方サリアス達もその不穏な空気を敏感に感じ取っていた。
空を見上げる。
空の一点に、雲ではない黒い影が映るのが見える。
鳥ではない、翼が大きく異なる。
虫でもない、虫はそれほど大きく飛ばぬ。
黒い影に手足が移り、何かと確認しようと目を凝らしたところに閃光!!
ズドォオン!!
家屋が粉々になり、火をあげる。
更に黒い影が幾多にも増え、やがて空を覆い尽くす。
それらが一斉に咆吼をあげ、急降下しては家々を破壊していく。
サリアスはティナとアイティーを置いて、一目散に駆け出す。
サリアスはみた。
魔物の一段が攻撃を仕掛ける前に、何かが、街に降りていったのを。
おそらくはそれを追ってここまできたのだろう。
サリアスは逃げまどう人々をかき分け、その場所に向かった。
振るう毎に走る剣線。
斬る毎に飛ぶ血飛沫。
押し込み、切り裂き、時には払い、時には突き、既に数十匹を仕留めただろうか。
呼吸する間も惜しむままにアルスは魔物を蹴散らす。
海からはい上がるもの。
空から襲撃するもの。
アルスは一瞬顔を顰めると、間合いを開くために一度教会の屋根へと飛んだ。
凄まじい跳躍力だ。
なにか魔法的な装備でもしているのだろうか、とにかく人間離れしている。
そこで、アルスはバスターソードとシルバーソードをクロスし屋根へと突き刺し、念じる。
アルスのからだが金色の光を発し、魔物をひるませる。
それはまるで太陽。
凄まじい自己の気流の中で、アルスは自らの胸に右手を差し入れ、まるで心臓でもえぐり取ろうというように引き抜く!
そこには金色に輝き白熱する剣が握られていた。
太陽の剣だ。
更にアルスは自らの深淵に眠る力を呼び覚ます。
ごごごごご・・・
アルスの力の開放と共に街が振動する。
・・・力。
・・・炎。
・・・光。
龍!!
ドォオオン!
アルスの背に光り輝く白銀の龍の翼が出現した。
それに伴い辺りの魔物はそれだけで散り散りになる。
神々しい光は辺り一面に蔓延る魔物のみを的確に捉え消滅させていった。
人目に付かない裏通りでサリアスは道に迷っていた。
方向は間違っていないはずだが、道がない。
イライラと遠回りをしているうちに天井が金色に光る。
「・・・アルスさんだ」
と、とっさに思い当たり、サリアスは意を決し、塀や壁をジャンプで飛び越え、その家の持ち主には悪いと思いながらも、最短距離をとった。
街のはずれにある鬱蒼とした林の入り口で、激しく攻防している二人の姿があった。
否。
攻防というより一方的に攻撃されている、と言った方が適切かもしれない。
一方は炎の様な赤髪を逆立てている悪魔の翼を背にしている男。
一方はその男に成す統べなく攻撃を浴びている金色の髪が長い悪魔の翼を背にした女性だった。
「やめて。ザティラス。お願い、私を行かせて」
「魔族の裏切りには死だと、教えたはずだぞプネレーネ!」
赤黒い光弾と熱線を放ちながら、鋭い爪で女を切る。
既に全身に傷を負っておりこれ以上長引けば死んでしまうのが目に見えていた。
「なら、オレに忠誠を誓うんだな。されば、この裏切りを免除してやら無くもないぞ」
「・・・いやだ」
「なに?」
「御前に仕えるなど、死んでも、嫌だ!」
男の怒りは頂点に達した。
「なら、消え失せて死んでしまえ!」
男の爪が鋭く長くなり、怒りの炎そのままに燃え上がる!
「いや~!助けて!!」
ギィイイン!
硬質的な何かが男の攻撃を止めた。
何か、それはサリアスの蒼剣だった。
「・・・・・・ない」
ザティラスの攻撃を受け止めた少年は、静かにつぶやく。
「なに?」
男は、ザティラスは、自分の渾身の一撃をいとも容易く退けられたのと、退けた相手がまだ人間の子供だったのとで混乱していた。
だから、この少年が最初何を言っているのかが分からなかった。
「・・・許さないっ」
もう一度、ただし今度は、この少年の何処にそんな力があるのか凄まじい力で押さえ、怒りの形相ではっきりと言い放つ。
「僕は、御前のような魔族は、大っ嫌いだ!!」
サリアスの身体が白銀に煙る。
ザティラスは恐怖している自分に気づいた。
だが、気づいたときにはサリアスは鬨の声をあげ、ザティラスの爪をはじき返し、斬りかかっていた。
「ヴォルケイノ!!」
下段から上段に、逆袈裟に切り上げた剣をそのまま切り返す!
二段の斬激は的確にザティラスの肉体を捉える。
下腹と脹ら脛を切られて、ぱっくりと肉を断たれたザティラスは、驚愕とそのダメージに苦痛の叫びを上げる。
「ぐ!?あがああ!!」
サリアスは躊躇せず更に攻撃を加えるべく肉薄する。
ザティラスはそれを嫌がった。
得意の爪で剣を押さえ、痛みをこらえつつ、なお食い下がる。
「貴様、何者だ」
剣に込める力を更に込め、サリアスは答える。
「サリアス・アン・フリーズ・アイフリードだ!」
大上段にザティラスを切り、更に痛打を与える。
ディバイン、空間を縦に裂くごとく断つサリアスの技。
ザティラスは大きく間合いをあけて驚愕した。
「アイフリード?だと・・・」
「まて、逃げるのか!」
ザティラスは更に上空に飛び上がり声を限りに叫んで消え去る。
「アイフリードの王を倒し、壊滅させた張本人はそこの女だ!・・・サリアス。貴様の名前忘れないぞ!」
「アイフリードを?まさか!?」
ザティラスが逃げ去り、二人だけが残され、先に口を開いたのはプネレーネのほうだった。
「・・・本当です。私が、私がアイフリードの王を・・・」
・・・ジャリン
剣を握る金擦れの音がした。
プネレーネはぎゅっと目を瞑り、弱まる一方の身体を抱いた。
この少年は、私の犯した過ちを裁いてくれるのか。
それなら良い。
あのザティラスに利用されるくらいなら、人間の、アイフリードのこの少年に命を捧げて楽になろう。
本気でそう思った。
しかし、彼女に与えられたのは死ではなく慈悲だった。
サリアスは腰に括り付けていた回復剤を探る。
「大丈夫?貴方は全身に傷を負ってるみたいだけど、あいつにやられたんだね」
「あの・・・貴方は私を、その。殺さないの?だって、私は貴方の故郷を、アイフリードを滅ぼした張本人なのよ?なのに、なぜ?」
怪我を治す簡易的に治療可能なファーストエイドをプネレーネの患部に施しながら、サリアスは微笑む。
「心配しないで。死んじゃったらそれで終わりだし、少なくとも貴方は自分でいうほど悪じゃない」
「そんなこと、分からないでしょ。私は魔族なのよ?」
「それにね。貴方は、確かに助けて。って叫んだ。アレは嘘なんか付けない本当の心の叫びだったはずだよ。だから、僕は信じる。さ、できた。あとはちゃんと治療すれば治るよ」
「わたしは・・・」
傷が回復して、休眠を欲し薄れゆく意識の中で、彼女は心をゆだねた。
この、汚れのないほほえみをくれる少年に。
「僕はサリアス。君の名前は?」
「・・・私の、名前は・・・ぷね・・・」
まるで死んでしまったかのように、彼女の意識はそこで途絶えた。
だけど、彼女は安心した表情で眠りについていた。
それをみて、サリアスは彼女と剣を背負い、宿に引き返した。
魔物はもう影もない。
アルスが滅ぼしたのだろう。
何百、何千という魔物の大群を、たった1人で。
長い、夜が明けた。
昨日の魔物の襲来に、街の住人はおびえ、街は死んだように静かだった。
だが、日も高くなるに連れ、互いの安否を心配し外に出る。
人々は互いに無事だと分かると、抱き合って生きている喜びを分かちかった。
そして、住人や城の兵士が復旧作業に精を出している中、それは起こった。
街にある教会の全ての神父が同時におなじ夢、おなじお告げを聞いたのだった。
『災いはディスティニアより訪れる。魔の悪夢が再びこの世界に降り注ぐだろう』
すぐにそのお告げは城に通達され、街は昨晩のこととお告げのこととで更に騒然となった。
当然そのお告げはアルスらの耳に入った。
「ディスティニアか」
「心配ね」
アイティーはいつになく真剣な表情だった。
アルスもまた表情は硬かった。
「当初の目的通り、ディスティニーに行くか。とにかく急ぎたいが、物資の調達はさらに困難になるだろう」
「こればっかりはしかたがないわ。非常事態だもの」
「・・・」
「アルス・・・」
「なんだ?」
「昨日の、あれ。やり過ぎよ。身体にそんなに負担駆けて・・・私、見てられなかった」
「ゴメン。だが・・・。分かったよ。もう太陽の剣と同時に龍にはならない」
「ホントに?私、貴方がいなくなったら・・・」
「大丈夫だ。さすがにアレは、オレも反省した・・・」
「絶対、死んじゃ嫌だよ?」
アイティーはアルスの包帯だらけの腕を抱く。
アイティーは暖かかった。
「おかしら~!」
ドアもノックせずティナがアルスの部屋に浸入する。
あわてて体を離そうとしたが、アイティーはそれを許さなかった。
「あちゃ~。まずかったかな?」
「ち、ちがうぞ!これは・・・」
「またまた。わかってるって。本当はアイティーさんのこと好きなんだよね」
「違うといってるだろ!何のようだ」
「あ、そうだった。お頭宛てに占い師が来てるよ」
ティナはぺろっと舌を出し、用件を伝える。
「占い師・・・」
アイティーから腕を取り戻し、考える。
「恋愛運でもみて貰えば?」
不満そうにアイティーがアルスを茶化す。
「うるさいなぁ。しかたが無い、行ってみるか。特にすることないしなあ」
「ね、サリアスみなかった?」
「ん?」
アルスは足を止めアイティーと目を合わせる。
アイティーは首を振って知らないと言った。
「今朝の朝食の後だが、プネとやらを連れてきて、一緒のパーティに入れて欲しい、と言ってきたきりだな」
ティナは首を傾げた。
「ぷね?」
「ああ、プネといっていた。何というか毒気の抜けた感じの女だった」
「アイティーさんは知ってる?」
「ええ、さっき挨拶貰ったけど、ティナは寝てたしね」
そっか、とティナは納得する。
「あとであってみるよ」
「ああ。別に反対はないだろうからいても良いんじゃないかと、言っておいた」
分かったわ。と、ティナはアルスを追い越して、駆けていく。
「御前はどうするんだ?」
後ろを振り返って、深く考え込んでいるアイティーに問いかけた。
「・・・ん?ん~占いかー、私は、いいわ。アルスだけで行ってらっしゃい」
宿のロビーでは見ただけで占い師と分かる格好をした女性が待っていた。
背は低く、一見少女のように見え、しかし老婆の様にも見える、不思議な人だった。
他に客はいない。
ロビーのカウンターにも宿の従業員の姿はなかった。
一対一、か。
ごくり、と生唾を飲み込み、占い師と対峙する。
「お待ちしておりました、アルス・レイラーン様」
占い師の言葉にアルスの肩がぴくっと反応する。
「・・・何者だ?」
まだ名乗る前から自分の名を呼ばれて、いい気はしない。
腰にかかっているシルバーソードの柄に手を当てて、思わず身構えた。
占い師は手をあげ、自分には攻撃する意志がないことを伝える。
だが、アルスは構えを更に強め、全身殺気立った。
「・・・まぁ、訝しむのも無理はないですが、そうですね。とにかくおかけになってください」
仕方なくアルスは占い師と対峙する。
アルスが席に着くのを見届けると、占い師はカードをくばりながら一言ずつ言葉をつむぎだす。
「貴方はとても強い定めをお持ちになっているようです」
「ほう。言ってみろ」
「貴方はディスティニアで友と戦うでしょう」
「友?」
「ディスティニアの・・・おわかりでしょう?」
アルスは言葉を飲み込んだ。
「なぜ・・・」
「それもおわかりのはずです。あなたなら、ね」
全てお見通しと言わんばかりにタロットを一枚開く。
「その闘いで貴方は、かけがえのない仲間を失うでしょう。もしくは貴方自身か・・・」
「誰か、死ぬのか?」
開いたタロットを自分の手前に置き、更にもう一枚開く。
「しかし、新しい喜びもあるでしょう。それは失った物よりも大きく、更に希望になると
出ています」
「誰かが死ぬのは確定しているんだな」
「変えられない運命ですね」
「勝つのか?負けるのか?・・・愚問だな。オレはどちらにしても、あいつを、止めなけ
ればならない」
順繰りにタロットを並べ、それが何かの形になるように置いていく。
「お告げによって、世界中からかつて無い力が集結しつつあります。しかし、勝敗は定か
ではありません。相手も魔界から力を手に入
れつつあります」
「・・・」
「聞きたいことは他にありますか?」
「・・・いや、オレについてはないな。そうだ、もしかしたらサリアスの記憶について何
か分かるか?」
「サリアス・・・」
タロットを再びまとめて、一枚一枚ひらいていく。
さっきとは違い、かなり長い沈黙が訪れた。
「暗い・・・」
「え?」
「いえ、暗く、寒い監獄のなかで・・・うまれ、消え・・・これは・・・」
「なんだ?サリアスは何者なんだ?」
占い師は身を震わせていた。
アルスは何が起こったか分からないが、だが、とてつもない意志が働いているのだと感じ
取った。
「・・・この世界の人間ではないようです」
呼吸を整え、改めてタロットを引いていく。
「どういう意味だ?龍か?精霊か?魔族?」
神々しい絵柄のカードをアルスの前に差し出すと、頭を振った。
「分かりません。強いて言うなれば、神」
「神?」
「あまりに超常的な存在で、かつて英雄ルミアがそうであったように、神威的な存在のよ
うです。・・・魂は」
「魂は?身体は違うのか?」
「いえ、なんと伝えればよいのやら。魂は神、肉体はこの世にあらざる物。イレギュラー
とでも呼ぶべきなのでしょうか」
これ以上は無理といった感じに、震える体でタロットをしまう。
「これ以上は私達が知ることが出来ない領域のようです。精神に負担を掛けすぎたようで
す。今日はここまでにしましょう」
アルスは放心したまま、うなずいた。
うなずいたかどうかも分からないが、ああ、といったきりだった。
しかし占い師は、もう一度だけ振り返り、付け足した。
「サリアスをユングリーへ送りなさい。そこにサリアスの記憶のかけらを集めるきっかけがあるはずです」
「ばかな!このオレに今更ユングリーに行け、だと?」
「あなた、とは言っていません。私はサリアスの事を言っているのです。おわかりです
ね」
「ま、まて、それではサリアス1人で行かせろと言うのか?ユングリーの一体何処へ!」
占い師はタロットを掲げるとアルスにうなずいて、本当に最後に一言置いてその場を去っ
た。
「それと、ティナに・・・破亡の舞を踊らせてはなりませんよ。世界が・・・」
アルスの目の前が真っ白になった気がした。
そこに何があるのか、これからどうすればいいのか。
サリアス、ティナ・・・
運命の歯車は、音を立てず、しかししっかりと動き出した。
気がついたときには夕刻だった。
何処で何をしていたのか分からず、教会の、神の像の前でただひたすらに祈っていた。
昼食を摂ったのかも分からない。
ただただ、祈っていたようだ。
周りに誰もいない。
神父も、仲間も。
その静寂な空間が、アルスを支配した。
・・・戦うこと。
目的は、友を止めること。
・・・護ること。
サリアスをユングリーへ送ること。
・・・望むもの。
友の死を見るより自分の死であって欲しい。
・・・祈ること。
破亡の舞。
天地流転森羅万象輪廻転生。
その舞は、神々が地上の子を愛し、祝福と福音を与える代わりに、代償として己の命を捧
げる舞であると、伝説は語る。
誰も試したことはない。
本当にあるのかも定かではない。
ティナは破亡の舞になにか関わりがあるのだろうか。
世界が・・・
いったい世界がどうなるのか。
アルスが見たタロットは鏡面世界という、地上の楽園と地下の魔界とが砂時計の中に上下
で別れている、そんな絵柄だった。
今は、出来るだけのことをしよう。
サリアスと、ティナの進道を見定めよう。
この、命が尽きるまで!
教会の扉が静かに開く。
アルスは深い祈りで気づかない。
アイティーはアルスの姿を確認すると、すっと扉を戻し、引き返していった。
夜が訪れた。
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