輝き煌めくカオス

輝き煌めくカオス

中国土産


商売をしていると、いろいろな事態に出会うことがあり、男性の物差しで計れないデリケートな女性の心理に、頭を抱えるときがある。
私の所は宝飾品とアクセサリーの店だから、お客は女性ばかりと考える人がいると思うが、意外に男性客も多い。第一、婚約リングを買いにくるのは男の人が多く、結婚記念日や彼女の誕生日のプレゼントなど、純情な買い物は圧倒的に男性なのである。しかしその反面、女房に顔向けできないことを仕出かし、申し訳に買うとか、バーのマダムに高価な贈り物をするなど、真面目な私にはよく分からない買い物をする人もいる。
とんでもないときに、
「主人の服のポケットにお宅のレシートペーパーが這入っていたが、一体なにを買たんですか!」
と、尖った声のご婦人の電話がかかり気の弱い私はどんな受け答えをしたらいいのか胸を痛めることもある。
そんなときは後で
「ドジ!関係のない者にまで心配かけるな、もっとうまくやれ!」
など一人怒鳴ってウサを晴らす。
 我が店で、もっとも女性への贈り物を買う上得意がいる。近くの会社々長のT氏なのだが、ご自分用に買ったブレスレットでさえ、いつの間にかホステスの腕にはまっていて驚かされる。その遊び好きのT氏が、近ごろはバーでなく感心なことに習字の稽古に通っている。
この日も
「今日は稽古の日なんだ」
と浮き浮きした顔でやってきた。なんでも最近、漢字の国、中国に旅行して素晴らしい字を沢山見てきたのだそうだ。習字の師匠にもお土産に買ってきたかったが、びっちり詰まったスケジュールのため残念ながら買えなかったという。私は一階の催事場で”中国物産展”をやっているのを思い出し、
「ひょっとすると、お土産になるものがあるかもしれませんよ」
と教えた。
「イヤー、本当にいい所を教えてもらった。中国の物なら何でも揃っている。おかげで義理がはたせる」
上海公司と印刷された袋を持ったT氏は、大喜びで帰ってきた。そして、
「気の利いたブローチを選んでくれない」
と、店員にたのむと一緒に品定めを始めた。私は、習字に行くのに何でブローチが必要なのか不思議だったが、丁度そのとき顔見知りの客がみえ、そちらの応対に気をとられてしまった。

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