わたくし。(1)


起きる時間より15分前に一度鳴らして軽く目を覚ます。
そうして起きる時間にまた鳴るようにしておく。
人は15分寝ると眠気が取れるらしい。
テレビで見た効果的な昼寝の仕方だ。
これで朝の目覚めが良くなるかは疑問だが、
なんとなく良い気がして毎日そうしていた。

目覚ましが鳴った、また朝が始まる。
きっと同じような朝を何度と無く繰り返している。
でもわたしはそれを気にしない、
それが生きるために必要だと知っていたから。

目を覚ましてから、流れ作業のような身支度と通勤風景。
今日も会社ではたくさんの仕事が待っているのだ、この流れは崩せない。
責任感とは不思議なものだ。
自由に思い描いた人生を歩んでいたことさえ忘れさせてしまう。
昔のわたしなら逃げ出したくなるようなこの毎日も、
責任感が強く支えてくれているのかもしれない。

ここで働くようになって10年が経った。
何も知らなくて怒られ、皆で陰口を言い合った頃。
見える景色は同じだが、今は陰口を言われる立場になった。
過去を振り返り、懐かしくも恥ずかしくも思う。

今、むかしのわたしが歩んできた道筋を、この若い子達が歩いている。
年代が違えば考え方や言葉遣いも変わった。
その世代もだんだんと大人になり、またその次の世代へと引き継がれていく。
わたしの上の世代が残してくれたものを、しっかりと伝えなくてはいけない。
もちろん、仕事から教えることになるのだが。


話をしてみるとなかなか面白い。
ちゃんと考えているし、いい笑顔をする。
でも子供の笑顔だ、無邪気に笑う。
仕事とはなんだろう、その笑顔を見ながらわたしは考える。

もちろん生きていくため、大事な家族を守るため。
わたしの場合はそうやって大人になってきた。
いや、なろうとしてきたのかもしれない。
必ずしもそれが全てに当てはまるわけじゃない。
若い子らに押し付けても文化が違う。そこは悩んでしまう。


そして同じ玄関をわたしは開ける。
そこには家族の笑顔がある。
この笑顔の為に毎日をすごしているのだ。
これはハッキリと言える。
責任感の源だろう。

同じ生活の毎日、
わずかづつの家族としての成長と仕事人としての成長。
積み重ねの先にある幸せを満喫していく・・・


しかしわたしは微かに眠る、燻った感情を意識している。

つづく。

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