『あかいふうせん』父子家庭日記

『あかいふうせん』父子家庭日記

父子家庭のはじまり



私はいったん実家に戻り息子の様子を見た。

当時2歳半のD君は昨夜私が病院へ駆けつけた後突然目を覚まし泣き出したという。

父と母がいくらなだめても全く泣き止むことなく、夜中ずっと泣き続けたそうだ。

明け方5時頃になり泣き疲れたようにコロッと寝たと父が話したが、それはまさに

妻が亡くなったと同時だった。ママが旅立つ前に会いに来てくれたのかな?本当に

不思議なこともあるものだ。

D君は昨夜の大泣きがウソのようによく寝ていたので私はすぐに病院に戻った。病院

の前では妻のお父さんから連絡を受けた友人が待っていた。事情を説明し、霊安室

へ行くと6時頃はまだわずかに温かかった妻の身体は氷のように冷たく硬くなってい

た。友人達は霊安室に入るなり堪えていた涙が溢れ妻の前に泣き叫んだ。 11時葬儀

屋から送迎車が来て病院を出発。私は担架に横たわる妻の隣に座った。「本当に死

んでしまったのか?」分かってはいても受け入れられない。妻は葬儀屋で身体を洗

って、洋服を着せたあと帰宅した。しかし、私たちの家ではなく実家への帰宅とな

った。私はD君にはどうしてもママの姿をみせることはできず四畳半の部屋に妻を寝

かせ戸を閉めた。

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