人工生命体に宿る心。そこには、希望と禁忌が、ほぼ同じ比率で交じり合っている。 科学がもたらせるかもしれない、大いなる可能性のひとつであり、同時に、人が決して犯してはならない領域だとも思えるからだ。しかし、最終的にわたしたちの良識は禁忌の方に重きをおいてしまうのだろうか、心の宿った人工生命体の物語には、往々にして切なさと悲壮感と、そして来るべき悲劇を予感させる何かがある。 だからこそ、架空の物語などにおいて「本来、感情を持ち得ぬ存在が抱く感情らしきもの」は、哀切や感傷を引き出す装置としてよく使われてきたのだろう。心を持っていないはずの存在が抱える感情の揺らぎは、その不自然さとある種のタブー感をもって、むしろ生物の感情以上にこちらに強く訴えてくる。この効果を利用し生命や心の大切さを説いた作品には、古くは『ピノキオ』があるし、手塚治虫の『鉄腕アトム』もそうだと思う。 最近、この手法を用いた、極めて切ない、それでいて美しい映像作品に出会った。とは言っても、映画やお芝居ではない。宇多田ヒカルという歌手が歌っている『can you keep a secret?』という歌のプロモーションビデオ(以下PV)だ。 「な~んだ、そんな話かぁ」などと言って、読むのを放棄すること無かれ! このPVは、本当に傑作なんだから…。