恋涙 ~ renrui ~

恋涙 ~ renrui ~

前世の追憶八



会議室を出ると私は頭がこんがらがっていて
思考回路が働かなくなっていた

雪へと誓った想いが揺らぐ・・・夜兎を見た瞬間に湧き上がる想い
自分にも止められずにいる

雪の事は好き・・・だから付き合い続けて結婚も真剣に考えた
でも夜兎と出逢って私の中の何かが彼を求めてる

遠い昔に置いてきた甘い痛みに似ている。

ふらつくように私は屋上へと辿りつく、熱くなった躰を冷ますように
フェンスに凭れ空を見上げる

流れる雲を見詰めぼんやり考えていると突然、頭痛に襲われ蹲る
何かに引き戻される感覚に囚われ私は意識を手放した・・・

その間私は夢を見た・・・毎朝見ていた夢に続くような
ぼんやりした三日月が闇夜にその姿を現し彼女を照らす。。。彼女は待っていた
《彼》を

高鳴る心音を聞きながら彼が来るであろう道を見詰めていると背後から
彼女の背を包みこむように抱きしめら彼女は思わず声をあげそうになる

その声はださせなかったのは彼の声だった、優しい低めの声と息が耳に
かかる・・それだけですぐに彼だとわかった彼女はクルリと向きを変え

彼に抱きつくように彼の首に手を回すと愛しさで心がいっぱいになる
二人に言葉など無用だった、触れ合うだけでお互いの気持ちが伝わる

人知れず逢うように闇夜にその存在を溶かすように彼女と彼は毎夜逢瀬を
繰り返し・・・時間を紡ぎ《愛》を育てていった・・二人の関係を知るのは
毎夜その姿を変え愛しい彼の姿を照らし出す銀色の月だけだった

そして彼は彼女をきつく抱きしめると愛しそうに彼女の名を囁いた

           ― 梓・・・ ― と

私は彼の呼ぶその声と同時に現実に引き戻され・・・鉛のように重いまぶたを
開けると心配そうに見詰める雪と夜兎の姿が飛び込んでくる

雪は呼びかけるように私に向かって名を呼ぶ

『梓・・・分かるか?梓?』

私は雪の呼びかけに応えるように笑みを零し上体を起こそうとするも
鉛のように重い躰は言う事と聞かず・・私はもう一度意識を手放した





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