僕がもし取材記者だったら、
イチローは苦手だろう。
イチローは取材には向かない。
取材には向かないけれど、
彼はスーパーマンだし、尊敬できる。
野球で唯一の欠点として、
右打者と左打者では厳密には
左打席が有利というところがある。
ピートローズも左打者と思うので、
ピートローズとの比較の話ではないけれど、
1本単位の数値の競争というものは、
そこまで大騒ぎしなくてもいと思う。
日米合算というのも、
もちろん異質なことの足し算でもある。
それでも僕は、
イチローは偉大だし、
ピートローズよりも偉大な気がする。
ピートローズが途中で日本のチームに移籍したら、
イチローほどの量産は無理な気がするのだ。
気がするだけの話だけれど、
そういう視点も合わせて見たほうがいい。
つまり、
環境の異なる世界での合算のほうが、
僕は価値が高いと思うからだ。
イチローを尊敬できるのは、
そこが凄いと思うからだ。
僕がよく行っていた芦屋のこじんまりした店に、
イチローの大きな写真が額に入れてあって、
店主のご自慢のようでもあった。
いつもそれを見ると、
あのかかわりにくい、
いや、
はっきり言って「面倒くさい」イチローに写真を頼んだ店主もエラいし、
応じたイチローの普通な面を思って、
いつもちょっとほっとするのだった。