急性期



【状態像】
・初期症状は、理由のない“生活態度の変調”として現れ、周囲の人との接触性、疎通性が障害される。
・昏迷、興奮状態を呈することもある。
・発症後、しばらくは病識が保たれていることもあるが、次第に自分が置かれている状況に対する現実味を欠くようになり、感情や意志の表現は唐突で、統一性に欠けた行動が目立つようになる。
・表情は、冷たく、硬く、緊張し、何かに怯えているような、あるいは困惑や途方にくれた表情を示すこともある。
・ときに、しかめ眉や尖り口のような奇妙な表情、あるいは独語・空笑などが認められることがある。
・患者の内面では活発な体験が営まれて、患者はしばしば不気味で、異様な緊迫感におそわれ、不安な状態にあることは察することができる《妄想気分》。
・妄想などの異常体験も、このような不安、緊張感に根ざしている。
・現実的不安でなく、現実との接触性は失われていく。
・わずかな刺激で不安定になったり、反対に病気による疲れが出たのかのように活動性が低下し反応がほとんどないといった状態が見られる。
・このような症状が発現する前に神経症様症状を呈することもある。

【急性期の作業療法】
急性期では、作業療法士との1対1の関係、侵襲性の少ないパラレルな場(場を共有しながら、人と同じことをしなくてもよい、集団としての課題や制約を受けず、自分の状態や目的に応じた利用ができ、いつ誰が訪れても、断続的な参加であっても、わけへだてなく受け容れられる場)を利用し、安心・安全を保障(その状態を保つ意味)し気を遣うことなく安らげるようにする。不安、混乱が大きく病室にこもっている人にとっては、病室から出ることさえままならず、やっとでてきても作業療法室に入れないこともあり、そのような場合は、作業療法士が病室を訪れる。病室を訪れる場合、訪問者である作業療法士は他人の家や部屋を訪れるときと同様の配慮が必要である。
作品を目的とした積極的な作業より、好きな音楽を聴いたり、ちょっと気晴らしに何かをしてみたり、活動を強要されない場で過ごす、といった受動的な活動や休息の場を提供する。これは、作業をシェルターとして用いることで、不用意に侵入する脅かしのない場を提供することである。作業療法の導入にあたっては、関わる作業療法士を観てもらう時間的ゆとりを提供し、心配と関心をもってそばにいることを伝えることができればよい。急がない、焦らないことが大切である。そして、不用意に相手の精神内界に入ることなく、どうしてよいか判断がつきかねているような場合や、自分の気持ちをうまく表現できない場合などに、少し支えたり判断を助けるなど母性的な関わりが主となる。現実との関わりにおける自我の補助や代理の役割といえる。
少し関係ができると、治療者を万能視した依存と共に要求が増える一方、攻撃的になるなどアンビバレンツ(両価的:相反する思考、感情、願望などが同時に生じる。相反する方向への動きが同時に起こる状態)な感情が生まれることもある。アンビバレンツな言動は治療者との関わりの始まりともいえる。相反する気持ちを受け止めながら、受け入れられないことははっきり示し、近づき過ぎたり離れ過ぎたりしないよう、一貫した関わりを保つことが安心感を与える。アンビバレンツな感情は、ときに行動化(acting out)を伴うが、その瞬時に逆転するようにゆれる気持ちを受け止めながら、社会規範に沿った対応が必要である。作業活動の中で、適応的な行動化の機会を作り、基本的欲求を満たす機会を提供する。発散と気分転換を図りながら(退行の保証:確かに請け負うことを指す)、患者に起きる基本的な欲求を満たし、現実的なかかわりへとつないでいくことが必要である。
また、作業を共にすることで生まれる共有感覚を生かして、作業活動に伴うリズムや身体感覚を少しずつ自覚できるように働きかける。

【実際の急性期作業療法】
 個人作業療法が主である。そばにいて、空間(場)、時をともに過ごし、関係を作ることがその内容であるが、これは何かを作るというより、一緒に過ごすことが大事であり、それが遊びであってもかまわない。関係の構築の意味でも約束は必ず守らなければならない。clientへのアプローチは原則として非強制的、非言語的である。強い促しや作業療法の必要性を説くことは、自分を「脅かす人」として作業療法士をイメージ化させることになるので避けなければならない。活動の結果として現実検討を迫り過ぎないように、支持的対応をとることが大切である。さらに興味に耳を傾け、兆しを察知しなければならない。

【急性期の作業療法士の特徴】
1.管理的な行為が少ない為、他スタッフ(医師・看護師など)と違ったclientとの関係を構築できる。
2.時間に自由度があるため、clientに対して同じリハビリテーション日時を設定できる。
3.することがきまっておらず、活動は決まっていてもやり方が決まっていないことが多い。何もしなくて、その場にいるという活動もある。一緒に何かをする、考える、休むという過程である。

【結論】
 統合失調症に伴う障害に対する急性期作業療法は、ほっと安らぎ、日常生活における安心、安全感を取り戻し、現実との関わりを回復することが目的である。適度な賦活と鎮静のバランスが必要で、安静のためにといつまでも働きかけをしないことも活動性を引き出そうと時期や状態を考慮せずに働きかけすぎることも、共に慢性化の原因となりやすいので注意が必要である。

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