回復期



 作業療法士とある程度関係ができ、現実的な活動に関心が向くようになった時期から退院や社会生活に向けて現実検討や生活適応技能の指導、訓練を行う時期をいう。臨床上は回復期を前期と後期に分ける。

【回復期前期】
  回復期前期は、生活技能の学習訓練より病相期から抜け出た後の疲れや乱れたり低下した      心身の基本的な機能、生活のリズムなどを回復することが必要な時期にあたる。早すぎる訓練が病的状態への引き篭もりや受身的、依存的な行動を引き起こしやすいので注意が必要である。
  作業療法士に対する個人依存を生かし、『他者と共に何かをする』、『誰かのために何かをする』、といった他者とのかかわりのなかで、自分が行っていることや行ったことを通して、『無理をしなくても他者に受け入れられる体験』の機会を多くする。
  他者に受容される体験、作業による具体的な体験を通して、自分の能力や限界を知り、『自分の病や障害と折り合いをつけながら、現実的な対処に向かう準備』が始まる。
【回復期後期】
  回復期後期は、社会生活に向けて現実検討や生活適応技能の指導、訓練を行う時期にあたる。統合失調症は認知的な障害を伴うため、具体的な作業活動による『作業遂行能力の評価』、共同作業を通した他者からの『是認、注意、激励を通して自己概念を明確にする』、といった実際に経験したことを通して当人が気付いていくという過程が有用である。
  生活に見られる障害は、認知障害など統合失調症という病理が原因と考えられるものや病気になったために十分経験されていないもの、未経験によるものである。自己能力の現実検討と共に、生活への適応に向けた技術の学習、今までの方法を少し変えてみる(オルタナティブ、代替法)、社会資源や人的資源をうまく利用できるようになるといったことが援助の目的となる。適応技術の学習には、生活技能訓練(SST)が用いられたりするが、統合失調症は認知障害もあり、場面をイメージして行うロールプレイなどの効果が般化しにくいという問題もある。生活に関連した具体的な作業活動を用いるという作業療法の特性を生かした生活技能訓練が有用である。
実際には、
1.日常的な近所との適度な付き合い方
   日ごろの挨拶、ごみの出し方など
2.薬の自己管理
3.お金の管理
自動振込み、銀行カードの利用など
4.さまざまな社会資源の利用
   生活保護、障害年金、医療保険などの制度の利用
   福祉事務所、保健所、職業安定所、市役所(役場)など公的な機関の利用
   銀行、精神衛生相談員などの利用
   デイケア、授産施設、共同作業所など施設の利用
   公園、デパート、市場、風呂など街のなかの使えるものの利用
5.自分に合った食生活の工夫などについて具体的な体験を通した学習が適しているが、大きな変化を求めすぎてはならない。熱心な治療(援助)者ほど、かける期待が大きくなりやすいので注意が必要である。多少難があっても本人にとって負担のない程度が良い。そして何もかも一人でできるようになる努力よりも、
6.困ったときの援助の求め方が身についていることのほうが大切である。
7.人によっては就労・就学に向けた援助が目的となる
認知の障害に対しては、終わりのない訓練に陥ることのないよう、補助具を使用し、認知機能の歪みを人が補助したり、生活環境の調整を行うことで社会生活、社会参加の機会を多くするといった視点も必要である。
  実際に社会参加が始まると、いかにこころのゆとりを保つか、些細なことを大きなストレスにしないかといったことが大切になる。そのためには、誰でもいいから気軽に自分の悩みを聞いてもらえたり、相談にのってもらえる人の存在が大きい。また、仲間の溜まり場、ソーシャルクラブ、デイケア、何かの集まりごとなど、ここなら気を遣わなくてすむ、気疲れしないといった場が大きな役割を果たす。
  急がない、無理のない生活が第一で、一日でしなければならないことも二日でできればいい(二日で収支)といったくらいのこころのゆとりが大切である。

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: