自律神経機能障害


 身体の恒常性を保つために種々のシステムが存在するが、自律神経系はその中の1つである。すなわち外界からの刺激に対して、あるいは内臓からの刺激に対して身体の恒常性を保とうとする。刺激としては、皮膚や骨格筋あるいは関節への機械的及び温度刺激(痛みなど)、内臓に対する充満刺激(飢餓感、満腹感、尿意、便意)心血管系に対する圧刺激(血圧など)がある。それらの刺激に対し自律神経である交感神経た副交感神経は、反射的に、すなわち脳の支配を受けることなく反応して身体の恒常性を保つ。脊髄に損傷を受けると、損傷部位以下の自律神経反射機構が障害され、様々な異常症状を呈する。
1.起立性低血圧
 第5~6胸髄以上で完全損傷がある高位脊髄損傷者では、麻痺域が広く、内臓神経(交感神経)も機能を失うため、下肢や腹部内臓の血管収縮機能が障害される事によって、臥位から急に坐位や立位なると、血液は麻痺域に移動し、特に腹部内蔵の血管床に停滞することになる。その結果循環血液量は急激に減少し、低血圧をきたす。低血圧状態では脳貧血になり、ひどい場合には失神することもある。

2.体温調節障害
 Th5以上の損傷者に多く見られる。自律神経機能が高度に障害されている脊髄損傷者では、熱の放散を調節している血管運動や発汗作用が著しく障害される。このため外界の温度に適応出来なくなり、うつ熱による発熱や極端な低体温に陥ることがある。
1)うつ熱
脊髄損傷者では知覚障害部の発汗機能はなくなるか低下している。上部胸髄損傷者や頸髄損傷者などでは、麻痺域も広く、発汗による体温調節が機能不全を起こしている。したがって、気温が30℃以上になる夏の暑い日は、うつ熱状態になり、体温も38℃くらいまで上昇することがある。このような場合には、熱型いわゆる弛張熱ではなく、体温は37.5~38℃くらいまでであまり変化はない。全身状態も良好で、重症感もなく、食欲もあり、対象者はわりと元気である。
2)過高熱
 頸髄損傷急性期に、体温が40℃以上に急激に上昇することがある。麻痺部位の皮膚の発汗が止まってしまうなど、麻痺に二次的な原因もあるが脊髄損傷部の浮腫が上行して、体温調節中枢に影響を与えるためとも考えられている。いずれにしても頸髄損傷急性期の持続する高体温は、生命予後を不良とする要因となる。したがって、脊髄損傷急性期の過剰な補液は、脊髄損傷部の浮腫を増強することになるので注意しなければならない。
3.自律神経過反射
 この症状は、第5~6胸髄節以上の高位損傷者にみられる。麻痺域からの刺激が、発作性に高血圧を誘発することを主徴とする反射現象である(図参照)この現象は原因となる刺激を取り除かない限り、高血圧が持続する。高血圧によって、眼底出血や頭蓋内出血を起こす可能性があり注意が必要である。このようなことがしばしば起ると、日常生活やリハビリテーション訓練の障害になり、社会復帰が困難となる。しかし、対象者自身がこの反射を的確に認識することで、麻痺域における異常を知るサインとすることが出来る。特に尿意と便意を失っている脊髄損傷者の場合は、頭痛、発汗、鳥肌立ち減少、徐脈など、この反射による症状を、尿意、便意の代償として日常生活に活用することが出来る。このことを代償尿意、代償便意という。
1)自律神経過反射の症状
・発作性高血圧
・発汗
・頭痛、頭重感
・潮紅
・徐脈
・鳥肌立ち現象
・鼻閉
・胸内苦悶
・悪心、嘔吐
2)原因
 臨床上経験する症状のほとんどは、麻痺域の骨盤内臓器、たとえば膀胱や直腸などの拡張が原因になる。また、褥瘡や足指の陥入爪などが原因となっていることもあり、膀胱、直腸に原因を見出せない場合は、麻痺域に対する注意深い診察が必要である。

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