リンゴ認知把持


今回は、「あなたは、今、リンゴの置いてあるテーブルの前の椅子に座っています。少しお腹がすいてきたので、そのリンゴを手にとってたべました。この行為を、脳の機能から、感覚の入力と運動出力の関係を推測し、視床・運動野(運動前野・補足運動野・帯状皮質運動野・一次運動野など)・小脳・大脳基底核などの用語を用いて記載する」について以下に述べる。

2.テーブルの上にあるリンゴを認知する
(1) 視覚の伝道路
 網膜内で光受容器である視細胞(杆体と錐体)から情報を受けた双極細胞が神経節細胞に連絡する。この神経節細胞の軸索は束になって眼球後壁を貫き、視神経となって後方に走る。視神経は視交叉後、視索と呼ばれて脳内に向かうが、人の視交叉は半交叉をなし、網膜の外側半(耳側半)からの線維は同側の、内側半(鼻側半)からの線維は反対側の視索へ行く。すなわち、左右の網膜の右半分からきた線維が右側の視索を、左半分からきた線維が左側の視索を構成する。言い換えれば、視野の左半分は右の脳へ、右半分は左の脳へ伝達される。
 視索の線維のうち、一部は上丘や視蓋前域に至るが、大部分は視床の外側膝状体に達して終わる。これらの視索線維の終止部位からあとの経路と機能的意義は以下のとおりである。
 外側膝状体に達した線維はここで次のニューロンに連絡し、このニューロンの軸索は視放線という束を形成して大脳半球の後頭葉内側面にある視覚野に行く。この経路は視覚情報(何を見ているか。この場合リンゴを見ている)を認識するために機能している。
 上丘に終わる線維は視覚刺激に対する眼球や頭の動き、特に対象物を網膜の中心でとらえるときの動きにとって重要である。上丘からは網様体を介して外眼筋支配の運動核(動眼神経核、滑車神経核および外転神経核)に連絡する経路がある。また、上丘から直接あるいは毛様体を経て頸髄に至る経路があり、頸筋支配の前角細胞に連絡し、対象物をとらえるときの頭の動きに変わる。

図1:一次運動野の身体部位支配領域の広がりを示す模式図

3.テーブルの上にあるリンゴを手にとる
(1) 一次運動野からの出力
 脳内部の出力先として、大脳皮質の他の部分(感覚野や高次運動野へ向かうもの)、大脳基底核、間脳の視床に出力が送られる。これらの出力によって、一次運動野は脳の広範な部分とコミュニケーションを行い、どのように連動を行うかという情報を脳内に配送する。脳幹の中脳、橋、延髄に存在する多数の中枢に出力し、そこを介して小脳へ出力したり、運動の出力情報を送ったりする。
 一次運動野の出力細胞は、いくつかの脊髄運動細胞集団に興奮性の信号を送ってその活動を高め、同時に他の細胞集団の活動を抑制する。それらの出力は、運動細胞プールに直接送られるものと、介在細胞を中継するものとがある。ここで皮質脊髄路が脊髄に達して行う働きをまとめると、いくつかのグループに属する脊髄運動細胞の活動性を高める、介在細胞の働きを制御する、いくつかの脊髄運動細胞を抑制する、脊髄反射を調整する、脊髄から脳へ送られる体制感覚情報、すなわち皮膚・筋・関節の情報の強さを脊髄レベルで制御する、というような多様な働きを同時に行っている。
 一次運動では筋の支配の組み合わせで活動させたり、抑制したり出来る構造になっている。日常行う動作を考えてみると、そのほとんどは複数筋をいろいろな組み合わせで動かし、その他の筋は動かさないことで成り立っている。したがって一次運動野の機能単位からはひとまとまりの筋に対して、興奮と抑制の組み合わせを出力されると考えられる。
(2) 一次運動野への入力
図2:一次運動野へ入力する脳の諸中枢

 これらは、高次運動野からくる皮質間入力、体性感覚を伝える皮質間入力、皮質下の中枢から上行する入力に大別される。
 高次運動野のうち、補足運動野、運動前野、帯状皮質運動野は一次運動野に直接入力を送っている。これらの入力は、随意運動の実行に先行する過程、すなわち運動の選択・構成・誘導・準備などのさまざまな過程における情報を一次運動野に送る。
 体性感覚で処理された触覚・圧覚や運動感覚などの情報を伝えるもので、この入力によって、一次運動野は運動遂行のときに、身体の各部分がどのように動いているかを知り、運動の補正などを行いやすい仕組みになっている。また上頭連合野は手足や体幹を含めた身体の全体的な位置関係を統合的に処理しているが、その情報もまた一次運動野へ送られる。この入力情報は、目標に向かって手を伸ばすなど、全身の動きを伴う運動の誘導の誘導や調節に役立つと考えられる。また、運動前野は与えられた視覚情報をもとにして、次に行う動作の仕方を決め、一次運動野細胞が、運動で使うべき筋の組み合わせパターンと、それらの出力の集合としての大きさを規定する。

4.参考文献
奈良勲、鎌倉矩子:解剖学:2002年:医学書院:p296-298

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: