第3話【旅立ち】

第3話【旅立ち】


〔世界を救うことができるのは、ハンター?それとも冒険者?〕


コルム大陸



―――母さんと父さんがいなくなってから翌日のことだった。
ルディロスの大きな門が再び鈍い音をたてて開かれ、傷ついたハンター達が続々と流れ込んできた。
ある者はお互いの肩を持ち、ある者は重傷で、軽傷のハンターに背負われた人もいた。

大人のハンター達は皆【ティーナ村】と言う小さな村を守りに行ったと耳に挟んだ。
【ティーナ村】は母さんと父さんの故郷で、村が魔物の群れに襲われたらしい。
そこで【ティーナ村】のハンターが応援をここ【ルディロス村】に要求してきて、大人のハンター達の半分以上が出動した。
だが、村を守りきることはできなかったのだとアコルはわかった。
ハンター以外にも、沢山の知らないハンターや村人が門を潜って来る。
敗北、きっと【ティーナ村】も魔物の巣となってしまうことだろう。


ミニアは泣いていた。家の裏にある小さな広場。
周りを家の背中に囲まれ、普通なら目の届かない場所でミニアは泣いていた。
アコルの両親も、ミニアの父親も、帰って来なかったのだ。
ふと見ると、ライシンが傷だらけの父親と抱き合って笑っているのが見えた。
親が帰って来た子供は笑い、帰って来なかった子供は泣く。
当たり前の行動なのだが、この時アコルもミニアも、それがどうしても不公平で残酷としか思えなかった。

「ミニア」

アコルが木の陰で泣きじゃくるミニアの隣に座った。
ミニアはアコルを無視し、ひたすら泣いていた。
泣くことでこのつらい出来事をなくすかのようにただ泣いていた。

「一緒に夢を持たないか?」

「夢?」ミニアが始めてアコルに質問をした。

「そう、将来の夢を持つんだ。夢を失うことよりも悲しいことは自分に信じられなくなること。今、大切な人がいなくなって、自分を信じることができなくなって、ミニアは泣いている。だから将来の夢を、希望を持てば自信が手に入るんじゃないかな?」

ミニアは涙は止まったものの、口を開かなかった。アコルは話しを続け

「ハンターになろう。ハンターになって、モンスターを殺して、世界の平和を手に入れよう。それが今、世界中の人々が望む世界、俺たちが望む世界だ」

「私は…」

アコルは立ち上がり「さぁ、立って歩こう。立ち止まってたら何も始まらない」とミニアに手を差し伸べた。

ミニアはあまりにも立派なアコルに少し戸惑ったが「うん」とアコルの手をしっかりと掴んだ。
まだ幼い2人の手は、大人のようにがっちりと固く結ばれた…。

―――アコルとミニアは【ルディロス村】の南東に位置する場所に立つ武器屋に立ち寄った。

「スローボさん」アコルが武器の手入れをしている男に話しかけた。

「ようアコルじゃないか」

武器屋の店主【スローボ】は決して有名ではない武器屋を一人で経営しているのだが、アコルは昔からスローボにはお世話になっており、武器を買うときはいつもここと決めていた。

「俺、ミニアと旅に出ることにしたんだ」アコルは重大なことなのに爽やかに言って遂げた。

「え、旅に!?そりゃあ驚きだな。どこに行くんだい?」

アコルの変わりにミニアが「ルナ村です」と答えた。

「ルナ村!?お前死ぬ気か?あそこまで何日掛かると思ってんだ。最近のモンスターも凶暴で、強さも増して来てるって言うし、人間を狙うハンターや盗賊だっえ最近じゃ有名だ」

「だからこうして買い物してんだろ」とアコル。

「おいおい、かなりマジだなぁ」

「だからスローボさん、何か良い武器売って」

「ま、目的が何だかわからないが、今回は大仕事のようだし。アコルには俺が昔使っていた剣【バイヴ】、ミニアちゃんには爪【ルアザン】を無料で売ってやろう」

「「無料!?」」アコルとミニアは口を揃えて叫んだ。

「あ?無料が嫌なら二つで五百万カルツにしてやっても良いぞ」

「う…そりゃあちょっと…」とアコルが自分のお金を数えながら言った。

「じゃあ無料だ」

スローボは無料で渡すことが嬉しそうに笑みを浮かべ、アコルとミニアの胸に押し付け、仕方なく二人は武器を受け取った。

「防具ならペリアンの所に行くと良い、テリオンと比べて性格も良いから良い防具を売ってくれるかもしれんぞ」

と言うスローボのアドバイスで、ぺリオンの防具屋で鎧【シルバーチェインメイル】と籠手【シルバーガントレット】とベルト【プレートベルト】を二個もらい、シェリーお姉さんが営むアイテム屋で、【スモールHPポーション】を二百個頂いた。

そんな冒険の下準備で一日をしている内に太陽は沈み、出発前のルディロスでの最後の夜になるかもしれない満月の夜に、ルディロスのシンボルである女神像を囲んで、アコルとミニアの旅の無事を祈り、ルディロスの住民全てが参加する祭りが開かれた。

女神像を囲うように四つの焚き火が配置され、アイテム屋のペリアンとテリオンが争いながらお酒を売って歩いている。二人の旅立つことなどどうでも良いかのように、女神像前で黒い髭を生やした泥棒のような格好のベテランハンターが酒を飲みながら踊り狂い、ライシンとシルビアが隣でラブラブムードになっていて、フリマ仲間であるルカはこんな時でも店を開いて儲けようとしていた。

「すいません」アコルの背後から声がした。

アコルが振り返ると、そこにはアコルが幼い頃からお世話になっているハンター、アトスがいた。
アトスは伝説の八英雄の一人であり、アコルとミニアの師匠であり、ルディロス村を守る用心棒でもあり、ルディロスの村長の息子でもあった。

「アトス師匠」アコルがアトスの登場に少々戸惑いを隠せなかった。

ミニアもアトスに気がつき「こんばんは」と礼儀正しく挨拶をした。

「ついに明日、旅立つんだね」

「はい、俺達あの謎の魔物について調べなくてはならないんで」

「もう二人ともそんなに立派になってしまったなんてね」

「全てはアトス師匠のおかげですよ」とミニアが微笑む。

「良いかい二人とも。この世界【エプノントリア】は五つの大陸があって、今私たちが立っているこの大陸はコルム、あとの四つの大陸はダステード、ロベンティア、モルロン、エヴィアって言うんだ。エプノントリアの5つの大陸はこの大陸のもとになった神の特性を一部受け継いでいる。そのためか、彼らは互いの存在を最初に認知した時から戦争を繰り返し、それはまるで神の代理戦争のようだった。モルロンとロベンティアは、しばしばコルム大陸を侵略することでコルム大陸の歴史に関わり、よく名が知られているのに対し、エヴィアとダステードはあまり知られていない。ただ両者は「純粋な善と悪の本性を持っており、この世界の存亡をかけ対立している」と推測されていただけだった。かつて神々が全面戦争を通じて得た経験は、彼らが眠っている 大陸で生まれた生命にも一部伝えられ、生命たちも全面戦争を 恐れていた。したがって、エヴィアとダステードはそれぞれロベンティアとモル ロンを全面に出し、モルロンとロベンティアも全面戦争でなく、コ ルム大陸で互いの力の優劣を争う程度だった。それは、コルム大陸での戦いに終わりがないことを意味する。一方、ロベンティアとモルロンは長い戦争の果てに、一部の 者から少しずつ交流を始めるようになり、彼らは次第に純粋 な善と悪から遠ざかりはじめた。そしてはるか昔から続けられ てきた長年の戦争に、疑問を持つ勢力も現れはじめたている。そのクリスタルでこのエプノントリアを大きく変えることができれば、きっと君たちも私以上の英雄になることができると思うよ」

「師匠、俺たちは英雄になりたいんじゃないんです。俺たちはこの世界が、五つの大陸が、全て平和になれるように俺たちは旅に出るんです」

アコルがしんみると言うとミニアが「アトス師匠も旅に出たことはありますか?」と訊ねた。

「それはもちろんありますよ」

「ミニア、知らなかったのか?アトス師匠は【他の四つの大陸を旅した四人の冒険者】の一人なんだぞ。師匠が書いた冒険記特別に読ませてもらったじゃないか」とアコルが言った。

「え、あれって作り話じゃなかったの?」とミニアが驚く。

「ば~か、全部本物の話しだよ」

「じゃああの本に書いてあった【夢幻】【琥珀】【エウロス】って実在する人なんですか?」とアトスに顔を向ける。

「はは、今はみんなバラバラだけどね。このコルム大陸のどこかで元気に生活してると思うよ」

旅立ちの前夜、アコルとミニアに勇気を与えるように、師匠アトスは冒険の知恵や、様々な魔物の弱点を詳しく教えてくれた。ルディロスの夜は、まるで二人の旅立ちを惜しむかのように長かった。長い夜の大きな満月はルディロスでの思い出をほとんど思い出させてくれ、二人と親しい仲間達は祭りの後も満月を眺め、中には涙を瞳から流す者もいた。



―――早朝。ミニアの母、ライシン、ルカ、アトス師匠、ディノ、数人のハンターに見守られながら、アコルとミニアは荷物を抱え、多くのハンターが潜ったルディロスの大きな門がゆっくりと開かれ、二人は「いつかかならず戻ってくるから」とルディロスを後にした。

                            <第3話 終>

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