闡鐓魔界・ヴァルセムス

闡鐓魔界・ヴァルセムス

12章 闘技場偏 下



(合図か!?)

足腰に力を入れる
押しつける力の弱まったハルバードを左に反らし、瞬間的に跳ぶ
刹那、今居た場所にオーガが投げた斧が通り過ぎる


―沸き立つ地の力 目覚めろ龍脈よ―


動きが鈍くなったモンスター達から離れ詠唱を開始する


―生贄をささげ その洗礼を受けよ―

「グランドダッシャー!」


岩石を盛り上げる攻撃は大範囲である、
しかしその攻撃はオルクスとモンスターを間さらに分けるように外れた

※※※※※※※※

「で…脱出の手順だけど…あなたが闘ってる間に、私は脱出ルートの確保して、この笛で合図を送るわ」
「合図って…歓声の中聞こえるのかよ」
「一応…かな。元はエルフ達の連絡手段をサイバックの研究所から、モンスターの飼育の為に改造しただけだし…ほら」

懐から取り出したのはオーボエ
それを吹くと滑らに音が流れた

「それに人にはあまり聞こえないし、この闘技場のモンスターを操れる」
「…で、ハーフエルフの俺にも聞こえるはず、と…」
「ま…まあそう言わず…」
「仲間にはバレないのか?」
「その当たりは任せて」
「ふん…それで、合図のあとは?」
「なにか魔法とかで煙幕を作って。出来るだけ長時間に。そうしたら私がそちらに行くから。」
「来るって…モンスターがいる中にか?」
「大丈夫。私はテイマーよ。それじゃあ…行くわ」
「おい、あとひとつ質問がある」
「?なに」
「名前は?」

※※※※※※

場内は煙幕に満ちている

「メル!どこだ!」
「こっち。それと腕輪」

声がする方向に人影――メル・モデラートから腕輪が投げ渡される
オルクスとあまり変わらない背に、ゼニスブルーの髪
さらにスカイブルーの瞳が、華を出す
すぐに腕に付け、ついていくと端の壁に梯子がかかっていた
壁自体、上には返しがあり、素手では登れないようになっていた

「登ったら左に。最初の扉に入って真っ直ぐ。二つ目の角を左にいけば、闘技場の裏口につくから、あとは何とかやって」
「合流地点はオゼット!またあとでな」
「ええ。お互い生き残りましょう」

※※※※※※※

「さて…」

煙幕が続く中、メルはオーボエを取り出し、旋律を奏で始める
唸りをあげていたモンスター達は大人しくなり、メルに近付いて行く

「みんな、力を貸して」

※※※※※

オルクスは言われた道を真っ直ぐ歩き、時には兵士達から隠れつつも、二つ目曲がり道をいく

「…さてと、そこら辺の兵士でも捕まえて、アセリスがいる場所を吐かせないとな…」
「ほう…また貴族狙いか?」
「!?」

声は上から来た
落下しながら踵を落として来た

「チッ…!」

バックステップで回避する、空振りをした踵はそのまま床へ衝突し、床はいっきにへこむ

「!……お前は」
「また会ったな。少年よいや…オルクス=リィルマクスよ」
「あの時の…たしか囚人達のリーダーだったかな」
「実力などを考慮され今ではそうなっている。しかし、今お前はどこに行こうとしている」
「俺の命だ。人生だ。王なんざに決められてたまるか」
「人を虐殺することが人生と?」
「生きる上での結果だ。好きで殺してるわけじゃないさ。ところで…道の邪魔だ…どけ」
「…一人の動くことで多くの者が動く…その中の長としての責任がある。…お前を連れ戻す」
「それは残念…だ!」

そう言いつつも、回し蹴りをする

「甘い!」

囚人は回し蹴りの軌道に合わせ、体を瞬時に移動させる
そのスピードは速く、あっと言う間にオルクスの後ろに回り込んだ

(飛鷹翻歩だと!?)
「ふっ…!」

今度は囚人から左のミドルキックが来る
オルクスは振り向きかけたところで左腕を縮こめ、防御を取る。しかし…




ミシッ



「!ぐ…」

そのキックは押さえ切れず、右の壁に叩き付けられる

「っ…!!(まずい)」

囚人はオルクスにさらに追い討ちをかける

「終わりだ」

その言葉と同時に旋回し、後ろ回し蹴りへと繋げ踵が迫る。
気付くと同時に体が動く

「今度こそ止める!」

両腕を重ね、防御姿勢を取る

「止められるものか!!」

※※※※※※※※

ズウゥン…
「…?」

煙幕が晴れる頃には既に闘技場内にはモンスターの姿しかなかった
観客達のどよめきからすぐにモンスターは収納され、警備兵などが捜索などをかけたが、完全にオルクスの姿はなかった
無論メルは煙幕がまだ残っているうちに逃げている

今は収納所にいるが先ほどの地鳴りは、モンスターが闘っている音や観客達の歓声とは明らかに違う

「まさか…ね?」
「おいメルさん、用事は済んだか?」

一瞬ビクリとするが、声の主はオルクスいわく、おっさんからだった

「えぇ。あとは私たちが行動を起こせば…」
「本当にいいんだな?」
「全部さっき話したとおりです」
「分かった。俺たちはあっちで待ってるよ」



*****************


周りにはモンスターしかいない
そんな場所にメルは居た

「ふう…」
『大丈夫?』

 何も無い所から光が生まれる

「こんな騒動を起こせば、同僚の人達に迷惑をかけるわね…」
『それでも…やるのね』
「えぇ…彼らの為に。長年の願いですもの」
『………』
『「…皆が元は野生で過ごして来た」』
「セクト…」

隣の檻から声がする
赤いカマキリのような姿をした…「デットリーインセクト」というモンスターが語りかける
メルはその名前から一部を取り名を付けた
しかしその言葉はメルにしか伝わらない

『しかし人間の歓楽の為に連れて来られ、抗う者に容赦すらしなかった…』
「そして、檻では生き地獄、闘技場では一方的な生きるか死ぬか…」
『「そう思っていた…が、お前が現れてから皆は少し変わった。少なくとも人間を恨むのでは無く見返そうと…」』
「それでも…多くの仲間を無くしたわ」
『「しかし、そうして来たことで人間達は多く生きて来た。昔とは違う」』
「…でも」
『「そのために今日行動を起こすのだろう」』
『それも首謀者だけどね』

周りから見れば、奇妙な光景
今はメルにしか分からない2人(?)と一匹の会話だった

※※※※※※※※

「うおおぉぉぉ!!!」
「はあぁ!!」

もはや通路は完全にボロボロになり、今は空き部屋で闘っていた
しかしその痕跡を残すように、連続で壁が貫通していたり、天井も装飾が崩れていた
その闘いに衛兵が気付かないのは、今だ闘技場の周りを探っているからだろう

「(やばい…そろそろ王宮兵士と教皇兵士が来る頃だ。こいつ、今までのどいつよりも闘いを把握している。
 まさかほとんど魔法も使えないとは…まさに息も吐かせぬって奴か)」

やっと離れたが息が荒く、相手がいつ来るか分からない為、ほとんど気休めに近かった
こちらの攻撃はほとんど体術だった
詠唱が出来ず、無詠唱魔法で応戦するが、砕かれ、躱される
相手からの攻撃は回避できる。しかしそれでも避けきれず、
一部の攻撃により、痣や打撲、口内も切っていた

先ほどの後ろ回し蹴りは、そのまま受け止め切れず、壁を貫通するほど吹っ飛ばされた

「(ここまでやるとは…しかし型が荒い。常に魔法との連携からくる連続攻撃を得意としていたのか。)」

囚人も無傷では無かった
腕に手錠をしている以上、ある程度回避は困難になる
主に上半身に攻撃を受けている、腕からは血も出ている
オルクスは速さを重視した攻撃のせいで、痣などはあるが、その強固な筋肉によりダあまりメージは受けていないと言えた

「(…時間は迫る、かなり強い、脱出が出来ない…やばい。このままじゃ…)」
「オルクスよ、ひとつ聞いてよいか」
「…?なんだ」
「何故アルトラル家の一家を殺害した。それも一人のみを残して。」
「お前に話す事なんて…ない!」

―閃く雷―

「ぬっ!?」
「ライトニング!」
「飛葉翻歩!」

囚人は雷をギリギリで避けると同時に仕掛ける

「言わないか!ならば今までの罪、償ってもらうぞ!月華流麗!」

気の込められた回し蹴りが3連続で放たれる
しかしオルクスはステップで確実に躱している
最後に空中にサマーソルトが来るがこれも右に周り躱す

「いくぜ…!」
「させん!鷹爪襲撃!」

そのまま空中から急降下攻撃が来る

しかし

「何!?」

その落下攻撃の先には既にオルクスはいない
それどころか視界に居なかった

「馬鹿が…こっちだ!」

今度はオルクスが後ろに周っていた
しかし距離は遠い

「魔術なぞやらせん!」
「誰が使うかよ!氷舞円!」

さらに踊りながら距離は開く。
しかしそれは射程を確保するための行動だ

「この量の氷は躱せないだろ!」
「まだだ、発!!」

氷が来ると囚人は体を縮める
そして急激に全方位に気が発せられると大量の氷は砕かれた

「…ふん」

―紅き痕を残すは凍てつきし爪―

両手に形成される氷爪
距離は約10メートル

お互いにほぼ同時に走り出す

先に仕掛けたのはオルクスだった
右腕を引き、一気に氷爪で突く
狙いは胸部。牽制の一撃だ
それを悟った囚人は頭を下げ前転をするように避ける
しかし背中を地面に付けず、そのままニールキックへと繋げる
身長の差で「こめかみ」にいく攻撃だ
オルクスは右に避け、左腕で囚人の体を狙いに行く
しかし踏み込もうとした瞬間、囚人の体が更に旋回し、残る左足がハイキックのように顔が狙われる
その事に気付いたオルクスはいち早く足を踏み込み、後ろに跳びつつ上半身を反らすようにして、顔に掠りながらも躱す

「虚空氷爪!」

今度はオルクスがアイスクロウで包まれた手で虚空拳を放つ
その瞬間、虚空拳でアイスクロウは砕かれ、氷が同時に飛ばされる
囚人は横に受け身を取りながら躱し、立ち上がり走ろうとした瞬間
腕と肩に虚空拳が叩き込まれ、両者の動きは再び止まる

息が荒くなったオルクスはひとつの提案をする

「決着を付けようか…」

対する囚人は多少息があがっているだけでまだ闘えるだろう

「よかろう、私の渾身の一撃で迎え行こう」

囚人の右足が少しずつ光る。
気を込められている証拠だ
オルクスもアイスクロウの残る右腕を前に掲げると、ちらちらと周りを漂うマナが収束し始める







そして














横の壁が…砕かれたのだった

囚人によってでは無かった

「…!?」

土煙が視界を阻む
お互いに視認することが出来なくなった

「(今だ…!)」

オルクスは今まで破壊されて来た道を戻り、走った

「一体何事だ…?」
「グルル…」
「オーガだと…まさかモンスターの脱走か?!」


※※※※※※※※


「作戦その2、モンスター及び囚人達の脱走」
「混乱に応じて各自脱出。感謝してるぜ、メルさんよ」

共に行動をしていたのはメルと囚人だ

「えぇ。あなた達も今までよく耐えたわね。隊員さん」

隊員とよばれた男は―オルクスいわくのおっさんだった

「よしてくれ、それに元隊員だ…あの日から除名だ」
「そうだったわね…アルトラル家殺人事件の容疑者として」
「あぁ、あの貴族についてからあの小僧には会った事は無いがな。…たまたま休日だったあの日に事件起こしやがって…」
「………」
「仲間も多く死に、今では6人だ。あいつら脱出出来るかねー。」
「数日前に死んだ事になってるから、なんとかなるとは思うわ。これはもう1人と数十匹の脱出よ」
「この虫もそのうちの一匹か」
「えぇ、それよりも急ぎましょう。約束の時間までにあなたはフウジ山岳に行かなければならないのだから」
「そうだな。そういや…あんたはこの仕事放棄していいのか?」
「問題ないわ。だって数日前から長期休暇になってるもの」
「ちゃっかりだねー」


※※※※※※※※※※


「居たぞ!脱走者だ!」
「けっして逃がすな!追え!」
「くそ…もう少しだってのに」

オルクスは裏口から逆走していた
 いざ外に出ると辺り一面が援軍に来た兵士が明らかに多くいた
そして周れ右。騒がしい闘技場内を再び走る事になった
右にいったり左から来たり、扉から来れば床から出て来たり、天井に上ったり…

「完全に魔力を探知されてるな…」

元の通路を走り十字路につくが左右後に一個大隊はある兵士の群、前に走るしかなかった

「追え!絶対見逃すな!」
「大人しくお縄につけぇー!この餓鬼があぁ!!」
「た、隊長落ち着いてください!」
「落ち着いてられるか!たった1人のハーフエルフなぞに苦戦を…」
『いい加減、黙りやがれぇ!』
「てぇったいぃ~!!」
「フレイムラァーンス!!!」

狭い通路に並んだ兵に対し、前方貫通攻撃は効果テキメンだった


※※※※※※※※※


-闘技場前の広場-

「きゃ…また地鳴り?というか…騒がしいし、何故闘技場から人が逃げてるのかしら?あのー…」
「あんたもはやく逃げろ!モンスターや囚人が脱走したんだ!」
「モンスターが?それは大変です!救助支援をしないと!」
「ぁ、おい!どこにいくつもりだよ、そっちは闘技場~!」


※※※※※※※※


「そろそろ時間か…」

先ほどオルクスと闘い、後にオーガなどのモンスターと闘っていた囚人は遠くを見据えるように目を細める

「…あの少年は…一体何を求めてるものか。…どちらにせよ、楽には死ねぬな……」

囚人は水色の長髪を翻し、その場をあとにするのだった…


※※※※※※※※


「…じゃあ…連絡を取りたい時は、闘技場の受付に」
囚人と行動したテイマーは再び檻に戻り

「ま…まて…」
兵士達は焦げつつも犯罪者を探し回り

「あれー、ここはどこかしら?」
1人の少女は迷い

そして犯罪者は…

「よし!やっと出口…」
「居たぞ!捕まえろ!」

再び闘技場内を走り回るのだった…


※※※※※※※※


「ん?…君、大丈夫?」
「ひっ…」
「怯えなくていいよ。それよりも怪我して無い?」
「…パパに会いたい」
「パパはどこにいるのかしら?」
「今日は闘技場で出るんだぞって言ってた…でも途中でモンスターがいっぱい来て…」
「迷ったのね、なら一緒にパパを探しましょう?」
「お姉ちゃんと?」
「そうよ、だからほら、行きましょ?」
「うん」
『あそこに人がいるぞ』
「…あれ?兵士?」

離れた角から数人の兵士がよってくる

「こんなところでなにをしているんだい。危ないから外に行きなさい」
「この子親とはぐれたそうで…」
「囚人以外はみんな外だよ。さあ行きなさい。ここは今、犯罪者やモンスターが逃げ回って危険だから…」
「おぃ、奥から何か向かってくるぞ?」

兵士たちはその方向に目を向ける
来るのは、濃い青―藍の髪に緑葉のマントを羽織った―

「…!オルクス・リィルマクスだ!!捕らえろ!」
「脱走したハーフエルフか!」
「あら…」

兵士達はオルクスに向かう
しかし兵士のうち二人が魔術ではない、何かによって、鎧を破砕されながら後に吹き飛ぶ

「く…ここは通さぶぱぁ!」

残りの1人も兜が跳び膝蹴りにより砕かれ、倒れた

「脱走した犯罪者ってあなただったのね?」
「ん?だ…れ………アセリスか?」
「そうよ。ていうか今忘れてなかった?私です!アセリス・スィラーロです!」

少女―アセリスは大きな声で自分を名を言うが、服装は以前の学生服では無く
ゆったりした緑の長袖の服で黄色のロングスカートだった
しかも髪は後で纏められている

「ん…なんだこの餓鬼は?」
「あ…大丈夫。この人は優しい人だよ」
「だれが――」
『逃がすな追え、追え~!!』

遠く離れたところに大量の兵士達が向かってきた

「ちっ!…そうだアセリス!お前に預けた書はどこだ!?」
「え…あ、待って。荷物の中に………あった。これでしょ?」
「よし!」


―異形の猛虎、牙は鋼、爪はルキン(超金属)
 銀のものなり 天地トワズのその走り 我が前ににて見せたまえ―


呼ばされた銀の毛並みの先からは紫電を発する虎の形をした精霊―ルネが現れる

『…お呼びでしょうか』
「手元から離してすまない。今は逃げたい。力を貸してくれ」
『仰せのままに』
「あ、オルクス君待って」
「なんだ」
「私達を乗せてってくれないかしら?
「はあ?」
「此所、モンスターがいるのですもの。危ないから外まで乗せてって」
「ふざけるな!あの兵士供に護衛でもさせろ!」
「……ダメよ。あなたにはまだまだ聞きたいことがあるの」
「自分でなんとか――」
『主よ、何か来ます』
「…!?…ルネ!雷磁結界だ!!」
『承知!』

瞬間的に、目の前に薄い雷の壁が出来る

そして結界を張られてから数秒後、兵士達のほうから何かが光り、雷の壁に衝突する
が、壁は強固だった
連続して兵士達からの魔術を受けてもびくともしなかった

そしてオルクスはルネの背に乗ると…

「…さっさと乗れ、野放しにしておいたら、こっちが危なくなりそうだ」
「♪ほら行きましょう」
「わっ!」

アセリスがルネに無理やり乗り、その後に少年を無理やり乗せると
オルクスはルネを走り出させ、エルブンマントのフードを被る

「次を右…いいか、出口から出たら止まってやる。その間に餓鬼を下ろせ」

アセリスはなにか喋ろうとするが、ルネのスピードに驚き黙る
ルネは今走るというよりも跳んでいる、のほうが正しかった

「俺が援護する。そのうちに抜けろ」

そう言いつつ、角を曲がると10人ほどの兵士が向かってくるところだった

「見ないように目をつぶっててね?(…あの…殺さないでくださいよ?)」
「…(ギリッ)気絶はさせるからな!」

何故我慢して言うことを聞かなければいけないのか
そのことに苛つきが出てしまうオルクスだが、堪える

「ライトニング!」
「ぐあぁ!」

兵士は倒れた、しかし更に後の方に人影が二つ

「ドルイド…?あいつらが魔力を探知してたのか!」

ルネのスピードに合わせ、加減をした虚空拳を敵の顎を狙い、気絶させる
すぐに右に曲がる
すると奥には外への出口あった

「兵士がいるからな、一気に跳び越せ!」

するとルネはさらにスピードをあげる
アセリスは恐れつつも尋ねる

「だ、大丈夫なの!?」
『問題はありません』

その問いにルネが答える、その間に目の前に出口が迫り、跳んだ




一気に視界が広くなる



出口には兵士が居たが、跳び超えるとすぐに見えなくなった


「わぁ…」


少年は感嘆の声をあげる
少し前まで不安だった顔は笑みになっていた


民間人や貴族、兵士までもが跳んだルネを見上げていた


ルネはそのまま、街の下にある民間区に落ちて行き、道に着地する

人はあまりに少なかった
闘技場をから家や宿に閉じ籠ったからである
そしてアセリスは少年をルネから下ろす

「今日の事は家族には内緒にね?心配かけちゃうから」
「うん」
「………」

後ろで黙って見ているオルクスの目はどこか、切なさがあった…

「…いくぞ」
「うん…それじゃあね?ばいばい」
「………ばいばい」

アセリスがルネに乗るとルネはまず、屋根に跳び、次に城壁を飛び越えて行った…

「…おっきいわんこ…」


残された少年は呟くと前から黒いローブを着た人が来る


「ほら、君。お父さん達があっちでさがしているよ?」
「え、本当?」
「あぁ、心配してるから行ってやりなさい」
「うん、ありがとうおじさん」

少年が行くのを見送ると、男性は懐から何かを取り出し、顔に装着する
それは、人の頭蓋を真似したような髑髏の仮面であった

「…ふっ。試して見るものだな。やはり脱出したか。…遺伝の賜物かな」


薄笑いをあげつつ日陰に移動して行くと、体は影に溶けていった…


※※※※※※※※※※※


次の日、メルトキオとサイバックに闘技場から囚人、モンスターの脱走が掲示板の記事になる

『S級犯罪者オルクス・リィルマクス、処刑前日の闘技中に脱走
同時にモンスター約50匹が檻から脱走する
しかし、重軽傷者は多くでたが、死者はなんと0人
王宮兵士は何故あのS級犯罪者が人を殺さなかったのか、もしくは死体を隠したのではないかと調査を続けている

なお、今回の事件には共犯者がいるのではないかと疑いも挙げられており―――』

「うっわー…あいつ派手にやらかしたなー。姿とかを絶つ必要とかあるから・・・
 もしかしたらガオラキアの森に逃げたんじゃね?」

掲示板を遠くから覗く青年は―――マキトと共に行動をしていたスリース・ノーカリスだった





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