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Impression-紅蒼-
サブミッション1
この町にもいくつかの盗賊がいる。ヴォイエッチももそのひとつだ。
ヴォイエッチは頭目、キングを中心に、実戦部隊をナイト、情報部隊をクイーン、地上部隊をジャック、その他の仕事をジャック、という構成になっている。
この中のナイトに属するのが咲羅 秋、そして龍埜 剣の二人だ。二人は紋章師という肩書きを持つ。
紋章師というのは体に模様を彫ることで使えるようになる、いわばある種の魔法である。魔法よりも現実的で使うことのできる効果は少ないが修行しんきてもすむので国民は進んで紋章を彫ろうとした。しかし紋章を彫ることは、身の破滅を招く、という噂があり、国王が国民に禁止してしまった。
そして二人は盗賊で紋章師、ということを隠さなければいけない理由があった。なぜなら二人は人気アイドルグループDay timeでもあるのだから。
「ナイルの本。ロブ完了~。」
二人は海岸に止めてあった船の中で、剣は本をめくりながら歩いていた。秋はイヤホンをはずしてポケットにしまうとつけていたゴーグルを手に持って言った。
「逃げられたらどうしよ~かと思った。」
「でもお前、突然紋章使うのはなしな。まじでびびったんだからよ。」
「あ~そっか。ゴメンね。だってさぁ、逃げるのはちょっとルール違反だよね。あーいうのはダメ、結構ムカツク。」
「さっさとキングに届けて休もうぜ。ライブした後の仕事はさすがにつらいな、さすがに。」
「ん、そうだね。」
エレベータを待ちながら、剣はふと気がついた。本に何も書かれていない。まったくの白紙だ。事前情報によれば、古代文字で何か書いてある、と聞いてはいたが・・・。
「剣~。閉まるよ、ドア。」
もうすでにエレベータの中に乗っていた秋は言った。おう、と言って剣は本を閉じエレベータに乗った。
ブリッチに入り、剣はキングに本を渡しながら言った。
「本当にそれ、本物なワケ?」
「ん?どういうことだ。」
キングはこの船の船長。そしてこのヴォイエッチの盗賊長、つまり頭目だ。30を過ぎたらしいが、まだまだ若い。この船の中でも信頼できる人物だ。
「何も書いてないし。それに触った幹事羊皮紙ってカンジでもねぇし。」
「む・・・。イズナ、解析しろ。至急だ。」
キングから本を受け取りイズナはスキャンを通した。イズナはこの中でも情報に関するクイーンに所属し、その仕事内容は事前のターゲット情報、解析、さらに秋・剣がアイドルとして活動できるのもこのイズナが情報操作しているからだ。イズナは少しおかしな男だが、秋も剣も、そしてキングもいいやつだと知っている。
「・・・ん~、そうだねぇ。」
「まったく・・・なんて事だよ。せっかくの宝を盗まれちまうなんて。」
椿は部下に怒鳴りながら言った。
「でも相手が紋章師ならしかたがないじゃないっすか~~。」
部下の一人、サンが言う。その言葉に椿は更に怒鳴り散らした。
「そんなんだから奪われちまうんだよ。あんなガキやチビに・・・。」
ふと、椿は思い出したように自分の部屋に入って勢いよくドアを閉めた。今日はもう解散だよ、その言葉に部下達はようやく解放される、といったうれしそうな顔で引き上げていった。椿は部屋の中でたくさんある引き出しをすべて開け、紙を散らしながらある資料を探していた。
「なんか探し物?」
「あぁ、そうだよ。」
「手伝おっか?」
「あぁ・・・、って。なんだい、お前達。一体どうやって部屋に・・・。」
ソファーの上から話しかけていたのは秋だった。剣は秋と背中合わせに
たっていて椿の方を見た。椿がまた秋に視線を戻すと秋は笑いながら手を振った。
「レディの部屋に無断で入るなんて感心しないねぇ。」
「てかオバさんの部屋に興味ないし。」
剣の言葉に椿はなんだって?と声を荒げた。
「私のどこがオバさんだよ、私はまだ25だよ。」
「あーはいはい。っていうかこういう世間話しに来たわけじゃないし。秋、あれ。」
「あ、そうだった。」
秋は背負っていたリュックの中からナイルの本を出して椿にそれを渡した。椿ははじめ意味が分からず立ち尽くしていたが、すぐにまたいつものとおり怒鳴る。
「なんのつもりだい。」
「返すよ、それ。持ってても意味ないし。」
秋は再びリュックを背負いながら言う。その意味が分からず椿が聞き返すと剣が言った。
「俺達が調査する前にそっちが動いたから仕方なくこっちも動いたけど・・・、まぁあの手の美術館には当たり前かな。」
「は?」
剣は棚の上においてあった装飾品を見ながら言った。
「それ、真っ赤な偽物。」
「なんだって・・・それじゃあ。」
「俺達がしたこと、椿さん達がしたこと。全部むだだったワケ。」
秋の言葉に椿はショックを受けたようで自分のデスクに手をついてため息をついた。と、手に当たった資料に目が止まり椿は目を見開いた。
「んじゃ、帰りはちゃんと表から出るさ。」
剣はそう言って広間に続くドアを開けた。帰るぞ、と言ってどんどんと進む剣に、秋も行こうとしたが椿の一言に立ち止ってしまった。
「探し物は見つかったのかぃ?」
秋はいつもと表情を変えて椿を睨んだ。
「あの有名な盗賊団、ルシファーに所属し、己の望みのために一晩でルシファーを壊滅させた・・・。と。」
資料を声に出して読みながら椿はちらりと秋を見て更に言った。
「今度はヴォイエッチも壊すのかい?」
秋は近くにあった置物を殴り倒した。椿は一瞬驚きながらも秋の目を見る。秋の顔は、どこか恐怖さえ見える。
「その話・・・誰かにしてみたりしてみてよ。その時が、貴方の最後の時だ。」
「それがアンタの本性かい?」
椿の持っていた資料をちらっと見ると、目にも止まらぬ様な速さで奪い取りこう言った。
「俺は俺。本性なんて、そんなもんはないよ。探してるだけさ、探して見つかるのであれば・・・そうだな。何に変えても手に入れたいんだ。」
「・・・。」
秋はうん、と言って話を終わらせると紙をクシャ、とつぶしながら部屋を出ようとして最後に一言言った。
「それと、俺はルシファーの仲間になった覚えも所属した覚えもないよ。」
冷たくて、切なくて、悲しい目。
「どうした?秋。」
「ん?何で?」
「いや、どうしてそんなに帽子深くかぶってんのかと思って。」
ニット帽を深くかぶっている秋に剣は指を差しながら言った。普通の通行人にまぎれながら二人は歩く。秋は苦笑いをした。隠し持っていた紙の束を強く握りながら。
きっと今の自分はほどい顔をしているから。ほんの少しだけ・・・自分を隠したいだけなんだ。
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