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Impression-紅蒼-
MISSON3
海を平泳ぎしながら秋はそう言って空を見るため仰向けになる。ただ浮かぶだけの存在になってみて余計、水が気持ちいいことにきづいて、しばらくそのまま浮かんでいた。空が高く、まだ青い。しばらく目をつぶってへへっ、と笑うと目を開けて沖まで行くと海岸沿いを溝を蹴りながら進んだ。
海岸一体を覆う影の先を見上げると、ヴォイエッチの本船が見えた。自分が今、家だと思える唯一の場所。秋は濡れた上着を脱いで一度思いっきり絞ると、濡れた体のままエレベータを待った。
「何やってんだ、秋。」
大きな紙袋を持った剣が、変な顔で後ろから秋に聞いてきた。突然なので、秋も驚いたが、隣に同じような大荷物の環を見てあぁ・・・と納得する。今日の朝、二人は町に買い物があると言っていたが、秋はとくに用もなかったので船に残ったのだ。
「海で泳いでた。何か良いものあった?」
丁度エレベータが来たので秋は手でドアを止めて、剣が入ったあとで後ろに続く環に聞いてみた。
「まぁ・・・、そこそこには。」
秋はふぅん、と軽く答えてエレベータのドアを閉める。最上階のボタンを押して、少し上を見る。ぽたぽたと水が落ちるのでタオル欲しいなぁ・・・と秋が考えていると、ビーっとベルが船内に鳴り響き、エレベータがブリッチの階で緊急停止する。環はとりあえず荷物を持ち直して、開いたドアから外に出る。剣はめんどくさそうに外に出て環に事情を説明した。このベルはヴォイエッチの緊急集合用のベルで、このベルが鳴るときは盗賊としての仕事が急に入ったのですぐに集合しろ、ということだ。
「タオル・・・。」
秋はしぼった服を見て、うーん・・・と唸ってやっぱり着れないよなぁとしぼったシャツを見ながら考えていると後ろに気配を感じて振り返る。するとそこにはヴォイエッチクイーンのケイトが、服とタオルを秋に差し出していた。あ、ありがと・・・と言うとケイトは少し頭を下げ管理室に入っていった。どうしようか迷っていたが、少し考えてシャツを着る。普段着ないような前ボタンだが、この際贅沢言えない。タオルを頭からかぶり、秋はようやくブリッチに入った。
「早く座り・・・。・・・どうしたんだ?その格好は。」
キングが不思議そうに聞くのでちょっとね、と言って秋はいつも通り自分の椅子に座った。常にミッションに加わるメンバー、つまりナイトの剣と秋には専用の椅子がある。キングやイズナはそこで仕事をすることが多いので元々椅子が設置されている。ちなみにこの二人はヴォイエッチ設立当初からのメンバーだ。剣も自分の椅子に座っているが環だけはパイプ椅子に座っている。だまヴォイエッチに入ってから日が浅いので椅子が支給されていないのだ。
「急な仕事で悪いな。」
悪いと思うなら呼ぶなよ・・・と心の中で突っ込みながら剣は話を聞く。荷物は端に置いておいたらしい。(環の分も)
「情報局からの話でな。サンリオンの洞窟でのミッションだ。」
サンリオンの洞窟、といえば盗賊の間で知らないものはほとんどいない。それというのもそこがただの洞窟ではなく、たくさんの財宝がそこに眠っており、情報局というところから年に2・3度潜入し財宝を探すように全世界にいる盗賊に電報が入るからだ。そのため盗賊の間でも噂になるほどで、この情報局からの電報があるところは名の知れた盗賊だといえる。秋は環の顔を見て聞いた。
「環は知ってる?サンリオンの洞窟。」
テーブルの引き出しから棒付きの飴を出してそれを口に入れてにっこりと笑う秋を見て少し考えてから環は答えた。
「クレイの海岸にある洞窟・・・だったと思うけど。」
「へぇ~、さすが。・・・ん?でも何で知ってるんだ?」
剣は操作パネルに足を置き椅子を傾けながら聞く。
「聞いたことがあるだけだ。」
「話を戻すぞ。イズナ。」
前方のガラスのフィルターが閉じる。真っ暗な中で、イズナはたった一つのライトで自分を下から照らした。その場にいた全員が怖い・・・と思っているとフィルター部分に映像が全体に映し出される。
映像を映し出すための光で大分周りが見渡せる。
「一応聞くけど~、前回のターゲットは覚えているかな~?」
「はい!!」
秋は手を挙げて答える。
「サザアって言う王家の宝石だよね。俺と剣が見つけた!」
その通り、とイズナは言ってその時盗った宝石の写真をみせると、一応環のために補足する。
「一年前のミッションはサザアっていうクリスタル家の家宝だった巨大ブルーサファイア。これはすっごい手柄だったね~。今回はめずらしく一年も未潜入だけどね~。」
「んで?今回は何なんだョ。」
剣の言葉にそうそう、と言ってイズナは少し微妙な笑いを見せる。
「ミッション。洞窟最深部への潜入と、リーコットっていう剣を持って帰ることだよ~ん。」
「わ~、・・・久し振り。」
ガラの悪い人ごみの中、秋はそう言って洞窟の入り口の近くの岩から海を見渡す。ヴォイエッチの本船から見える海とはまた違った景色だ。クレイという町は、海が綺麗なことで有名な街だ。ヴィレアンというヴォイエッチの船がある街よりも海も町も綺麗だが、そんなこととはお構いなしに盗賊の連中が集まりつつある。
「いいな~、泳ぎたいな~。」
「そんなことあとでしろって。環、用意できたか?」
「あぁ。言われたものは入れておいた。」
リュックを背負い剣はうし、と言って洞窟の中を少し覗いた。
「イイケド。な~んだよ~、ちょっとぐらい話にのってくれたっていいじ~ゃん。」
ぶーぶーと文句を言いながら、肩からカバンを降ろして秋は少し頬を膨らませる。何言ってんだ、と軽く週の頭を小突いて剣はペンライトをズボンのポケットに入れた。秋は別に~、と言ってニット帽をかぶり、空を見上げた。ふと目線をずらしてあっ、と声を上げる。
「なんだよ。忘れもん?」
「ううん、椿さん。」
週の指差す方向にはこの前のミッションでナイルの本を奪い合った盗賊の頭、椿とその部下の姿があった。盗賊としては結構有名で、ブロッサムという。
「知り合いなのか?」
椿の顔を見てから環は秋に聞く。うん、と答えようとしたが秋は少し微妙な顔をして口ごもった。あの日・・・少し怒らせたから、知り合いだけど・・・。
「なんだい、またあんた達かい。」
突然、椿の方から言われて秋はすこしビクついた。しかし椿の方は前と何も変わった様子はなく、いつも通りの挨拶で、いつも通りの話し方だ。
「こっちのセリフだっての。」
剣は嫌々な顔をして言う。椿はふん、と言って秋の顔を見たが秋のほうが先に視線をはずしたので、その隣にいた環に目をやった。
「見かけない顔だねぇ。」
「・・・。」
環としては初めての人であり、椿の様な強気なものとは、見ず知らずのものならまず関わりたくないと思うのが心情だ。剣は仕方なさそうに環の代わりに答えた。
「新しいメンバーだョ。関係ねぇだろ。」
行こうぜ、と言って剣は洞窟に入る。たまきは置いていたカバンを手に持ち、とりあえず後に続く。秋はなるべく目を合わせないようにしてこの場から早く逃げたかったがまたも椿に呼び止められ、仕方なく振り向いた。またあの話かなぁ、あの話だったら嫌だなぁ・・・と心の中でため息混じりに考えていると、椿は小さく折りたたまれた紙を差し出した。
「この前のワビさ。もしもこの洞窟から出れたら行ってみるといい。」
「・・・まだ調べてんの?」
紙を受け取りながら秋は聞いてみる。椿はじっと秋を見てから、視線をはずし、一言関係ないだろ、と言って彼女とその部下もまた洞窟に入っていった。紙をギュッと握り締めてうん、と何に対してでもない声を出して秋も急いで洞窟に入った。
サンリオンの洞窟―、最新の科学機器でも電波が通じなくなるほどで、不用意に入れば死ぬことすらあるという、一般人にとっては近寄りがたい洞窟である。それは経験を積んだベテランの盗賊にとっても同じことで、この洞窟内で余裕を見せることは死を意味する。そんな場所であるこの洞窟に昔から誰も入らない、入れない事を良い事に多くの財宝を故意に隠すものも多かった(とくに昔の貴族・王家の者がほとんどだ)。そこで情報局が見つけて欲しい宝の写真と情報をを各盗賊に送り、その宝を高額で引き取る、という不法取引が起こったのだ。この洞窟内には様々なトラップが仕掛けられており、盗賊メンバーの修行の場とも言える。また、宝を無事に持ち帰った盗賊団は、盗賊としての力を認められる。秋と剣がこれまでに五回参加してその内三回はすべて狙いの品を持って帰っている。この功績からヴォイエッチの名前は世界に多く知られることとなった。
「目的外の宝を発見した時は?」
早足で進む剣に環は聞く。ん?と言って考えてはみるが速度は緩めない。
「どうもしない。とるのは禁止されてるし、見つけたら情報局に連絡するくらいだ。」
「・・・それだけなのか?」
「そう、見つけて盗るのは仕事じゃない。」
「盗賊と泥棒は違うんだよ、環。」
息を切らして秋は言う。少し椿と話していただけなのに、秋としてはこんなに進んでいるとは思わなかった。とりあえず一本道でよかったと思う。椿を含めた他の盗賊も今はただ進むだけだ。岩と岩同士、突き刺さったような感じの壁。少しかび臭い匂いが鼻につく。地面にある土も、すこしぬかるんでいるので歩きづらい。変に体力を使う洞窟内の道、これはまだ洞窟の怖さの一部でしかない。
「確かに盗ることは一緒。だけど俺達盗賊は、ターゲット以外は絶対に盗らないんだ。むやみに盗るのは泥棒の仕事だよ。」
人のものを盗ることは一緒でも、盗賊の仕事には誇りを持たなければならない。と言うかそれを守れないやつは盗賊ではない。それはどこの盗賊でも同じで、世界共通の考え方だ。
「盗賊が良いとは言わないけどな、世間は俺達を認めない。」
歩くのを止めて剣はそう言うとズボンのポケットに入っていたペンライトを出した。
「で、どうしたい?」
意味の分からない環は何も答えられない。剣がどこに行きたい?と質問を変えて、環は剣の奥にある四つの穴に気づいた。大きさはどれも違うが、通れそうな穴は四つ。そして更に環はもう一つ気づいた。他の盗賊がこちらを見ている。三回ターゲットを見つけたヴォイエッチの秋と剣の行動も言動も常に監視されているようだ。
「相手の情報を知るのはいいことだけど、ロコツなのは嫌な感じだね。」
後頭部で手を組み、秋は周りを見ながら言う。
「最終的には盗ったモンがちだからな。で、どうしたい?環。」
「俺は・・・ここに来るのは初めてで・・・。」
「いいんだよ。初めての方が余計な雑念がなくてむしろ良いし。それにターゲットの在り処なんて知らないしな。」
剣はそう言って岩のうえに座る。目は環に向けたまま、どうしたい?と聞いているようで環はしかたなく四つの穴を見た。
「風・・・。」
「ん?」
秋は環の顔を見る。もしかしたら、もう気づいたのかも。秋はへぇ・・・と少し尊敬しながら話を聞いた。
「暖かい風が右から二番目から来ている気がする。こちらに向かっての風だから・・・二番目は外につながっている。だから二番目以外がいいと思う。」
ヒュウ・・・と口笛を吹いてじゃあ?と剣は今度は秋に聞く。
「ってか何で剣が決めないの?」
「去年は俺が道見つけたから。」
むっときて秋は残りの三つの穴を見る。何だかなぁ・・・と少し剣にはめられた気もするがとりあえず真面目に仕事をしよう・・・。
何でも、今回のターゲット“リーコットの剣”は、隠し財宝だったとか。王家の中でも継承者のみに財宝のある部屋のドアの開け方を教えられる、らしい。手で土と岩のひんやりとした硬い感触の壁を触ってみてある一部分の切れ目を見つける。地割れのようだ。
「・・・とりあえず行こうよ。右から三番目の穴。」
亀裂の走る三番目と四番目の間の壁。それを横目に見ながら先に進む。三人が奥に進むのを見て同じようにそこに入っていく者、それ以外の穴に入って行く者、とりあえず様子を見るもの、たくさんいる。この中でもし。何かがあった時助けられるのは自分だけ、洞窟内では誰もが敵だ。
「思ったんだけど。」
決して大きい声ではない、仲間だけに聞こえるような小声で秋は言う。
「隠し財宝って事は、隠してる場所も隠されてるんじゃないのかな。」
剣も環も立ち止まる、言われてみればそんな気がしないでもない。なら・・・と剣は少し考えながら言う。
「穴ではない穴を探す・・・?」
「うん。でも穴ならあるかもしれない。」
秋はここまで走っている亀裂に手を触れる。
「亀裂・・・。」
剣はh-ん・・・と納得したように言う。
「・・・洞窟に亀裂が入るのは・・・空洞があるから・・・。」
環の言葉にそういうこと、と秋は笑っていった。
「とりあえず行くか、亀裂辿って。」
剣がそう言うとうん、と答えて三人は奥に進んだ。なるべく速足で進んではいるが、足場が悪いので思った以上に進めない。三十分以上歩いたところで後ろを振り向くと、先ほどまで後ろをついてきていた(と言ってもごく少数)連中の数が減っていた。剣と環はまだ歩いていたが、秋はとりあえず足を止めて壁に手をやる。なんか嫌な感じなんだけど・・・と思いながら上を見上げる。思った以上に高い天井。三十分以上歩いてきた道は微妙に下り坂だったので、ここは地下と言うことになる。
「秋、行くぞ。」
「うん。」
洞窟内が全て真っ暗と言うわけではない。自然結晶のディーライトと呼ばれるものが洞窟内にまばらに散らばっており淡く緑色に光っている場所がある。三人が進んでいた場所もそのディーライトが密集している場所だった。剣はペンライトのスイッチを切り、まわりを見渡す。亀裂を辿ってきたら、このすこし広い穴が終着地だった。幾度か抜け道もあったが亀裂は走っていたのはこの穴からだけだ。
「火垂。」
「何?環。」
無数のディーライトに手を差し伸べて環は言う。
「俺の・・・クワルの村で似たような光を放つ昆虫がいる。それを火垂というんだ。」
それを知らない剣と秋はふぅん・・・と言ってディーライトを見た。
剣はふと亀裂の先を見て妙な割れ目を見つける。亀裂とは違う割れ目のようで秋と環の名前を呼んだ。
「ここ。これじゃないか?」
「開かないの?」
秋の言葉にとりあえず剣は片手で押してみるがびくともしないので、両手で押してみる。どれだけ押しても動かないので、少し苛立って足で蹴飛ばした。
「あ~もう。何なんだよ。」
「あ、俺閃いた。ほらよく言うじゃん。押してもだめなら引いてみろって。」
秋はあたかも名案と言う顔で言う。しかし環がポツリと言った。
「取っ手・・・ないけど。」
ばぁか、と言って剣は笑いながらその場に座り込んだ。ここはそこまでかび臭くはないし、土もぬかるんではいない。
「ん~~・・・じゃぁ後は・・・。」
考えながら秋は壁に手をつく。するとそこだけ壁がへこみ、割れ目からホコリが立ちゆっくりと開き始めた。およそ一分ほどで完全に開ききった扉の向こう側は、ディーライトがないのかまったく見えない。仕方がないので秋がカバンの中から閃光弾を出した。それのピンを抜いて扉の向こう側に投げつけた。閃光が光だし中がぼんやりとだが見えてくる。人工的に作られたような穴が永遠と続いており、奥まではよく見えない。しかし明らかに洞窟とは違う嫌な感じだ。
「ありそ~な感じだね。」
「だな。環、こっからは本気でいけよ。人工物はトラップがある可能性がある。」
「・・・分かった。」
とりあえず扉ぐらい閉めようかとも思ったがスイッチを探すのも面倒だし、もし戻ってくる時に道に迷ってもディーライトの光が遠くから見えればここに帰れる。目印は見つけておくのがこの洞窟での鉄則だ。
入るか、と言って剣は一歩足を踏み出す。それと同時にばん、と大きな音が鳴って右から矢が飛び左の壁に刺さった。多分あと一歩進んでいたら剣の体を貫いていただろう。瞬間のことで剣も何も反応できなかったらしい。面白いじゃん、と言って剣はもう一歩進んだ。今度は何も起こらなかったが。
「環はこういうの大丈夫?」
多少は・・・と言ってみるが環も相当驚いていたらしい。聞いた話によると環はクワルでは「戦士」と呼ばれるくらいだったらしい。戦士と言うくらいだからまぁ大丈夫だろうと思うが。軽く走る感じで三人は通路内を進む。
最初の矢はただのこけ落としだったのかあれ以来、特に罠らしきものもない。
「・・・あれだけ?」
秋の言葉にさぁ・・・と言ってはみたが、実際これだけ何もないと凄んできた意味がない。
「ったく。」
パキ、と小枝を踏み剣はん?と下を見る。何もない・・・と呆けていると秋が上だ、と突然叫んだので剣はとっさに体を右にずらした。数十本の矢が上から落ちてくる。加速して土の上なのにドスっという音がしてそこに刺さった。どうやらここでは一歩踏み出した場所にスイッチがあったとき、トラップが作動するらしい。
「大丈夫?」
おう、と剣は答えるが左の腕に切り傷があった。かすっただけのようだが。作動させた本人以外には影響がないらしく秋も環も無事だ。しかし小枝がスイッチになってるなんて誰も気づかないだろう。気を引き締めていこう、とお互いに思って更に奥にすすむ。
先ほどの場所からそう遠くない場所で、どこでスイッチが入ったのか秋に向けて下から槍が出てくる。秋はじぐざぐに飛んで逃げるが逃げる場所逃げる場所に槍が出てくるので秋は天井を見て出っ張りをつかまり、そこから遠く離れた場所に着地した。
「なんかさ、トラップ・・・つらくなってる。」
真っ暗ではあるが大分目も慣れてきたので、ライトは使わないようにしている。いろんな意味でつらいミッションだなぁ・・・と秋が思っていると後ろの方でガタン、と音がして秋と剣が一緒に振り返る。50cmほど床が下にずれており丁度そこに居た環が穴にはまってしまったらしい。すると今度は刃が流れるように環に向かって来たので環はジャンプして床から上がった。ガン、と音がして刃が出てこなくなりしばらく三人はじっとそこを見ていた。
「終わっ・・・。」
秋が一息つこうとしたが上下左右の壁から磨き上げた刃がまた飛び出してきて、驚いて三人は左の壁にとびついた。
「終わってないし。」
状況が状況だけに、混乱しているせいか秋は壁をこぶしで思いっきり叩いた。すると今度はギィと音を立てて後ろの壁がぐるん、と半回転する。
「うっそ?」
裏返った壁の向こうは崖のようになっていて、三人はぎりぎりで端につかまった。とっさにしては上出来だ。しかしとっさ過ぎて、なんとも中途半端な格好で、そう長くはもたないな・・・と全員が思っていた。
「・・・とりあえず。ミッションは各自でもやるってのでどうだ?」
剣の提案に、苦し紛れで秋がいいねぇ、と笑って言う。剣が環の方を見ると環も納得なのか、とりあえず笑った顔を見せた。
提案した剣としては、かなりの不本意なわけで。剣はくそったれ・・・と心の中で毒づいて手を話した。どうにかなる、どうにかしてみせる。それがヴォイエッチだ。
闇の中に消えていく三人を、たった一人の人物がみていたことも気づかずに。
続く
MISSON3<完>
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