カレの帰国


カレが日本に帰国する日が来た。
私はカレに手紙を書いて、
早朝、空港に向かった。

意外にお別れっていうものは、あっさりで、
人前で泣けないっていう性格も兼ねあってか、
私は決して空港で泣くことはなかった。
本人もしんみりというよりかは、
あっさりしてたし余計かな。笑

この場所に、この学校に、カレがいる生活が当たり前すぎて、
私は本当のところ、カレがいなくなるって事実を、
現実として受け止めてなかったのかもしれない。

でも一人になって、学校の見慣れた風景を見て、
そこにもうカレがいないんだ。
私は、もうカレに一生会うことがないのかもしれない。
そう思うと、涙が出てきた。

しばらくして、私も夏休みで日本に帰国して、
他のページに書いてある、元彼君とお別れをした。
全てをすっきりさせて、新しい一歩を踏み出そう。
そうしないといけないんだ。って私は必死だった。

9月、新学期になってまたアメリカに戻ってきた私は、
何かを振り払うように、自分磨きに必死になってた。
その頃から仲良くなり始めた姫って友達には、
「あんたあの時すごい気合いの入れようだったよね。笑」
ってよく言われてた。

10月になって、カレが仕事が始まる前に、一度、
ここに遊びに来るらしいって噂を聞いた。
実際、本人にもチャットで聞いてたりしたのかな。

私は、その時、カレに会ってしまうと、
また気持ちが元の位置まで戻ってしまうって思った。
元彼を傷つけたこと、自分なりに必死になってたこと、
全てが水の泡みたいになるのはイヤだ。

だから私は、友達がシアトルに遊びに行くのに便乗させてもらう事にした。
カレがここに着く日にシアトルに発って、
カレが日本に帰った後、ここに戻ってくる。
絶対に会うことのない、完璧なスケジュールだった。

私はこの時カレに会わないようにした事を、
今でも後悔していない。
それが、あの時の私にとっては、最良の選択だと思うから。
会ってしまっていれば、きっと、こんな風に、
冷静になって、カレの事を考えることができなかったはずだから。

この後私は、カレのメールアドレス、
カレからもらったメール、カレの携帯番号、
メッセンジャーも全部Deleteした。
カレとの2ショットの写真も捨てた。

こんな風にすることで、カレとの接点をなくして、
忘れようって必死になってた。
だって、もう会うことがないはずだから。

だけど・・・悲しい事実は、
こんなに必死になっても、
時間が経っても、カレが完全に思いでとして、
私の心の中に存在することは、
決してなかった。


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