Supica's room

Supica's room

ナニモノカの謀略、又は策略 ―風車―



しばらく園内の様子を眺めながら春の訪れを感じた。

公園にある小さな丘に上ると、気持ちのいい春風が僕の体を吹き抜けていった。

春風はやがて薫風へと変わるだろう。

薫風はやがて秋風へと変わるだろう。

秋風はやがて木枯らしになり、一年を通して地球を駆け巡るのだ。

僕らの人生は風車のようだ。



クルクルと廻る。

クルクルと巡る。



僕らはそうして出会ったのだ。

摂理に順ずるように、運命と言うレールの上を慎重に渡り歩くように。

小さな丘の上にある大きな木の下で、彼女は髪を靡かせていた。

凛とした雰囲気を漂わせたその空間は、まるで抽象的な別世界にいるような感覚だった。

白いワンピースから伸びるすらりとした細い腕。

その腕はゆっくりと静かに、そして滑らかに動き、僕の位置を捉えた。

僕らは惹かれ合った。

そしてその空間的状況を理解する。

ナニモノカの謀略か策略か。

どうでもいい。

ナニモノカは砂時計を逆さにして、砂を底へ落としだしたのだ。

それはもう始まったことなのだ。

頭上に大きな雲が訪れると、僕らは太陽から隠れるようにキスを繰り返した。

いろいろな過程を越え、いろいろな結果を受け止めた。

草木が生い茂り、柔らかな風に触れる頃、僕らは出会ったのだ。





彼女はベッドの中で丸くなり、僕の心臓の音を聴いた。

「まるで海の深い深い底にいるみたい。」

と彼女は言った。

彼女の艶やかな髪の毛はベッドの上に散っている。

「不思議な人。」

それから僕らはどうでもいいことをとりとめもなく話した。

金魚を掬うように丁寧に、それは続けられた。

誰にでも持ちえる内容でもあったし、誰にでも持ち得ない内容でもあった。

そして、夜は僕らを優しく迎えてくれた。




朝が来ると、トースターがパチンと弾けた音を立てて僕を起こした。

部屋の中には、こんがりと焼けたトーストの匂いと、コーヒーの苦味を含んだ香りが漂っていた。

「あなたはジャムよりピーナッツバタークリームが好きなんでしょう。」

と彼女は言った。

僕はピーナッツバタークリームがたっぷりと染み込んだトーストを四枚ほど食べた。

彼女は僕がトーストを薦めても、コーヒーを一杯飲んだだけだった。

それから僕らは映画を観に行った。

内容は恐ろしく酷いもので、僕は途中から観るのを止めた。

彼女にも、僕は外で待ってるから、と言ったのだけれど、お金を払った以上外に出るのはもったいないと言われたため、席に座っていなければならなかった。

僕はスクリーンの一点をじっと睨み、どうでもいい考えをめぐらせた。

映画が終ると、僕らは近くのシェーキーズに入り、大量のピザとパスタをたいらげた。

こんなに食べているのによく胃に入るな、と僕は思った。

彼女もあんな酷い映画を観たことは初めてだったし、これからの人生でもありえないだろう、という見解を述べた。

僕らは車の中に戻って重なり合うように眠った。

僕は夢を見た。

夢の中で僕の体はどろどろと溶け出し、彼女と融合をしてしまった。

始めは皮膚が溶け、次に筋繊維が溶け、骨が溶けた。

ついには細胞レベルでの融合も果たし、僕らは塩基配列を同じものに組み替えた。

やがて細胞は恐ろしいほどの振幅で振動を始め、摩擦によって僕らは燃え出した。

月が綺麗だ。

吸い込まれるように僕らの灰は天へと上っていった。

しかし、やがて天へと上ると吹き荒れる風によって地球を駆け巡った。

何度も何度も廻った。

そして、僕らの灰は、ある国の、ある町にある、ある公園の小さな丘の大きな木に降り注がれた。

その下には僕らがいた。



目が覚めると、オレンジ色の太陽が沈んでいた。

辺りは長い影をひれ伏せ、太陽を拝んでいるようだった。

彼女は寝息をたて、腕を枕にして横たわっていた。




続かない。



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