天使のお気に入り

天使のお気に入り

お願いお月様



ぷう
僕の名前は、ぷう。にこにこ寮に住む、野良猫さ。

 隣の家には、シャムネコの「みーにゃ」が住んでいるんだ。
 みーにゃはいつも、ふわふわの尻尾を揺らし、柔らかな風のように現れて、お日さまのようにきらきら笑い、みんなを包み込む。
そう、僕は、そんなかわいいみーにゃが大好きさ。
 みんなには、内緒だよ。

 だけどこの頃心配なんだ。なんだかみーにゃの様子が変なんだ。
 話しかけても上の空、好きな猫でもできたのかな。
 僕は、にこにこ寮の屋根の上、ひとり、お月様をながめながら、大きくため息をついた。
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みーにゃ

少し曇った空の下、にこにこ寮の屋根の上、ふわふわの尻尾を揺らしながら、みーにゃが現れた。
 いつもより、少し風が冷たい気がする。 
 僕はごくりとつばを飲み、勇気を出して聞いてみた。
「ねえ、みーにゃ。この頃少し変わったね。好きな猫でもできたのかな?」
すると、みーにゃは、だまってうなづいた。
「そっか。よかったね。」
 僕は涙をこらえながら、笑っていった。
なぜだかみーにゃは、何かいいたそうに遠くを見つめた。



 今日は、満月○にこにこ寮の裏山で、みんなが集まり、お祭りを開く日だ。
この夜に、カップルになる猫たちも少なくない。
「今夜、みーにゃもだれかと…」
そう考えると、いつもは、なだらかなこの道も果てしなく続く坂道のようで、僕はもう電池がきれそうだった。
でも、ぼくは、みーにゃが大好きさ。みーにゃが幸せになってくれることはいいことだ。  
そう自分に言い聞かせながら、山を登っていくとやっと頂上が見えてきた。
もうみんなが集まって、ぐるっとわをつくっていた。
ちゃちゃ
「おい、ぷう。ここにはいれよ。」
そういって声をかけてくれたのは、にこにこ寮に一緒に住んでいるこげ茶色のアビシニアンのオスねこちゃちゃだった。



言われるまま輪の中に入ると、ちゃちゃが僕に言った。
ちゃちゃ「このごろすこしへんじゃない?」
この言葉、どこかで聞いたことあるような…。
そう思いながらも僕は、笑ってごまかした。
「そういえば、みーにゃも元気がないような。」
ちゃちゃが付け加えた。
みーにゃは丁度、僕の向かい側。
満月に照らし出される柔らかな毛並みは、銀色に輝いてまるで月から舞い降りた天使のようだ。
 僕は、言葉をなくし目を奪われてしまった。



「そうかあ。おまえ、みーにゃが好きなんだぁ。」
ちゃちゃが冷やかすようにぼくに言った。
「そぉんなことないよ。」
そういった僕の声は、裏返りみーにゃのことが好きなことはちゃちゃにばればれだった。」
「でも、もうふられちゃった。」
僕は、おおきなお月様をみながら、ぶっきらぼうに言った。
「そうかな。」
ちゃちゃは、そういって僕のそばからはなれた。
すると、その時、向かい側に座っていたみーにゃが、僕の方に歩いてきて、隣にちょこんと座って言った。
みーにゃ
「ねぇ。ぷうこの頃少しへんじゃない?」
またまたどこかでって、この前、僕がみーにゃに言った言葉だよ。
僕は心の中でつぶやいた。


「そ、そうかな。」
僕はカチカチに固まって招き猫の置物みたい。
周りの猫たちはみんなわいわい大騒ぎ。みーにゃと僕の間だけ、違う風が流れてる。
みーにゃは僕の目を見て言った。
「ねえ。ぷう。ぷうは、いつもだれをみているの?」
「えっ!?」
(こんなに、みーにゃの事おもっているのに、みーにゃには全然つたわってなかったんだ!)
僕は愕然とした。
「今夜しかない。今日は満月、お月様の力を借りてこの気持ちを伝えたらもしかして、みーにゃも振り向いてくれるかも。」
僕はこの夜に賭けてみることにした。
美ーにゃの透きとおる瞳をみつめて思い切って言った。
「僕はみーにゃがすきですきでたまらないんだ。」
僕は、周りの猫たちがいることをすっかり忘れて大声で叫んでしまった。

一瞬天使がとうり過ぎたようにあたりがずまり、みんなが息をのんで二人を見つめている。

みーにゃはゆっくりと口を開き、微笑みながら話し始めた。
みーにゃ
「ありがとう。 ぷぅ。私ずっと、その言葉をまってたのよ。
 でも、この頃、ぷぅのげんきがなかったから、てっきり、好きな子でもできたのかな。」
って思ってたの。

「まさか、そんな気持ちでいたなんて。私もぷぅとおんなじ気持ちよ。」
「ええ!!!」
僕は、想いもよらないみーにゃの答えに言葉をなくしてしまった。
(みーにゃがぼくを?なんだか信じられない。
でも、これは、紛れもない事実だぁ。)
そう考えると僕はもううれしくてうれしくて、
「やったあ。」
思わず、飛び上がってさけんでしまった。

「やったぁ。」
僕の声に続いてみんなの声が、山の丘の上にひびきわたった。

「よし、今日はみーにゃとぷぅのために、お祝いしよう。」
ちゃちゃはみんなを集めて歌い始めた。
「にこにこ寮の裏山で、まん丸お月様の光をかりて、恋の魔法をかけましょう。
ちちんぷいぷいみーにゃに届け、ちちんぷいぷいぷぅにも届け。」

山の広場は笑いと歌声でいっぱいになりました。


 楽しいお祭りの夜も終わり、僕はみーにゃとにこにこ寮の屋根の上へやってきた。
いつもの場所なのに、特別な場所みたいだ。

ぷう
「ねえみーにゃ。二人とも同じことを考えていたなんて不思議だね。」
「でもよかった。こうやって、思いが通じたんだもの。」
みーにゃは、恥ずかしそうにぼくにいった。
みーにゃに、目の中を覗き込まれて、僕は、うっとりしてしまった。

「ねえ、みーにゃ。月の魔法って本当にあるのかな。?」
僕がつぶやくと、
「そうねぇ。私たちお月様の魔法のおかげで、想いが通じたのかもね。」

そう言うと、みーにゃが、優しく微笑んで僕の頬にキスをしてくれた。

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