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■ おかあさん ■



元気?

うん、元気

新しい生活には慣れた?

朝起きるのが辛いけど楽しいよ

そ なんかいるもんとかあるの? 送ろうか?

ん 大丈夫 あっ 電池切れそうっ

そっか じゃあまた今度ね

おやすみ

おやすみ







■ 点滴 ■



とっとっとっとっ
目の前で一定のリズムを崩さずにおちる水滴
ざっざわざわ
窓の外では木々が風になびく
ゆら…ゆら…
クーラーに吹かれたボトルが揺れ
こちっこちっこちっこちっ
時計はゆったりとすすむ

嗚呼…
退屈だなぁ







■ 時間 ■



大好きで 大好きで
大切にしていた置物
机の上にかざって毎日ながめていた
あんなに大好きだったのに気付かなかった
それがいつの間にか色褪せていた事に
こんなことならどこか日の当たらない場所に
しまっておけば良かったのかな







■ それは理 ■



この世に不変なものはありません
ある日おじいさんは言いました
それはとても素晴らしいことで
そしてとても悲しいことなのです
女の子は首をかしげていました
それから月日が流れました
世の中はとても便利になりました
でも隣りにはもうおじいさんはいません
一人の女の人が空を眺めていました
雲が形を変えながら
流れていました







■ 消えない ■



ちりちりちり
古びた家から聞こえた鈴の音
首輪をつけたみけ猫が
にゃあと一声ないた
あごをなでるとのどをならす
オマエは誰を待っているの?
荒れはてた古家の庭の縁側に
小さな白い固まり
オマエは誰を待っているの?






■ 見せかけの自由 ■



ヒラヒラ ヒラヒラ
いったりきたり
いっけん優雅なその動きには
みかけほどの余裕はなくて
ただただ彷徨ってる
出口を求めて
ヒラヒラ ヒラヒラ
羽を休めることもなく
ヒラヒラ ヒラヒラ
舞い続ける







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