ごった煮

17

■　騎士　■

夢を見ました
貴女は私の後ろで小さく蹲っていて
カタカタと震えていました
私は両手を大きく広げて
貴女の隠れる穴を守っているのです
目の前にはとても恐ろしいものが
大きな腕を振り上げていて
私は抗うでもなく
防ぐでもなく
その腕をじっと見つめているのです
その腕が振り下ろされても
私は動くことはなく
一人を信じ続けるのです
大丈夫
私が崩れ落ちる前に
彼は必ず貴女を助けに来るでしょう
大丈夫
それまでは私が貴女を守ります
この身を貴女と彼にささげます
私がたった一人
信じた男に託します
貴女の幸せ　私の想い
ほら　声が聞こえる
彼がくるまで私は立ち続けます
振り下ろされた腕がもう一度掲げられても
立ち続けます
足が有る限り
貴女がいる限り
振り下ろされる刃が有る限り
彼がこの場所に辿り着くまでは

■　ホントウの愛　■

君は真実の愛を知っているかい？
彼は静な微笑みを
その白い顔に宿して僕にささやいた
首をかしげる僕の目の前にたつと
彼は右手を振り上げる
その後ろには崖
昇りはじめた太陽
右手の何かが光を反射する
じゃあ特別に君だけに見せてあげる
彼は右腕を振り下ろす
薄く筋肉の付いたその胸に
僕の顔に液体がふきつける
それは目が覚めるように赤く
かと思えば水のように透明
どちらが真実の色なのだろう
赤か　無か
溢れ続ける液体に目を奪われている僕を
顔ごと自分の視線に合わせると
彼の唇が僕の唇に触れた
一瞬にして口内に広がる鉄の味
僕の目は透けるように細い彼の髪を眺めるだけで
動けない僕に彼はもう一度微笑んだ
僕は君にこの命をささげよう
そう言った彼の姿は
もうどこにもなかった
僕の顔には赤ではなく
透明な液体がとどまる事なく
流れ続けていた

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