すずめ、月へ飛ぶ

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タコ足配線・SとM子


タコ足配線は大変危険です。

電気の容量をオーバーすると、コードが過熱し、火災の危険があります。

使わない器具のコードは抜きましょう。

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以前働いていた会社に、
30歳そこそこで課長になった人がいた。

彼の名はS。
イタリア帰りで、どっか有名な貿易商社からヘッドハンティングされてきたらしい。
いつもイタリア製のスーツに、ブルガリの香水をアホのようにつけているインチキ臭い人だった。

彼は異常にモテた。
当然と言えば当然かも知れない。
三ヶ国語を操り、出世街道まっしぐら、オシャレな風貌。
そして何より、イタリア仕込みの口説き文句。
褒め方や情熱的な視線は、とても日本男児のそれとは違っていた。
彼が髪を切ってきただけで、女子社員は私の所までわざわざ来て、「Sさん、髪切ったんですよ」なんて報告する始末。つうかあたしもその日切ってきたんじゃ!

私は彼には全く興味がなかった。
バリバリの日本男児が大好きだから。
不器用で結構!無愛想でなんぼ!←いえ、別に愛想のいい人も好きですけど^_^;

そんな私の熱い気持ちがSさんに伝わってしまったらしい。
「他の女の子と君は違う」
とかいう怖ろしく日本人離れした文句で誘われた。

それに気付いた彼の部署の部長さん(実際はイタリア帰りのSが実権を握っているらしく、頭が上がらないらしいが)。
私のところにこっそりと来て、
「Sは結婚してる。あいつには気をつけろ」
と密告してくれた。

ある土曜日の休日。
Sから突然電話が掛かってきた。
「今、すずめの家の近くに来ている。親睦会という事で逢おう、駅前のコンビニのところに六時ね」
有無を言わさず、勝手に電話を切った。

何だかその時、いやーな予感がした・・・。

仕方なく駅前に行くと彼が立っていた。
「今から、ちょっと飲みましょう」
強引に隣の駅の近くにある居酒屋に連れて行かれた。
会社の課長だからそんな変な事はしないだろう・・・という私の甘い考え。

ところが甘かった。
彼は店の中で突然とんでもない行動に出た(書けない・・・)。
そして熱い熱い口説きが始まった。
私は「奥さんいるんじゃないですか!」と、
切り札を掲げた。
彼は青ざめ、「知ってたのか」と言う。
「それでも俺はすずめといたいんだ。~以下略~」
「気持ち悪いです!私は全然一緒にいたくありません!」
「そういう気の強いところが好きだ」
「勝手に解釈しないで下さい!」

押し問答の末、店を出ようとした。
ところが・・・どうしてだろう・・・立てないのだ。
そんなに飲んでいないのに・・・。
頭がグルグルして、立てないのだ・・・。

彼は強引にどっかのビルの非常階段まで私を引っ張り。
以下略(書けるか!)。
私は今も未練タラタラの彼(その時も一時音信不通だった)の写真まで持ち出し、
「私が好きなのはこの人です。嫌いな人にこんな事されても気持ち悪いだけです!」
と階段転げ落ちながら戦い、逃げ果せた。

次の日から彼の顔を見る事さえ、恐怖になってしまった。
声がするだけで、手足が震えてしまう。
彼からの言い訳の電話や、仕事中の挑戦的な態度も恐怖感をより一層煽り。
大勢の前で、「あの夜に」とか言って仕事中にワインやら何やらプレゼントを渡されたり(社長にあげたけど)。
女子社員からも総攻撃を受け、生きた心地がしなかった。

私は会社を辞めようと決めた。

同僚のM子(こぼれたミルクの日記の彼女)に話したら、
「えー、Sさんと??いいなあ、ずるーい」
と全く理解してくれない。
それどころか、
「どうしてすずめなんかと。あたしの方が全然いい女なのに、Sさん誰でも良かったんだねー、あたしなら全然いいのにな、いいなあ」
って、そんな事私だって分かってる!なダメ押し攻撃。

そしてSに近付き、本当に付き合いだした。
凄い!凄いぞ!M子!

ところが、M子の話によると、Sには奥様の他に、イタリアに一人、日本にM子入れて三人、恋人がいるらしいのだ。

不満気に私に電話をしてきたM子に私は、
「M子だって五人いるじゃん」
と言った(先日の日記に『同じ会社の既婚の中年男性』とあるのがSの事)。
「あたしはいいの!女なんだから!でもSさんに五人もいるのは許せない!」

(-_-;)どうして女だといいのだろう・・・・。

更にSは、M子に開き直って、「それを理解してくれないならば別れよう。イタリアの彼女は俺の為に、俺の名前の刺青を入れてくれた。それが愛だろう(謎)。君も刺青彫れとは言わないけれど、刺青に見合う愛の証明を俺にしてくれ」
と言ったらしい。

(-_-;)刺青に見合う愛の証明??アムロちゃんもビックリ。

そしてM子は別れてしまった。
Sからは「今後一切、会社で君と会っても俺は無視する。君のメールアドレスも電話番号もたった今、削除します、さようなら」というメールがきた。逆ギレかよ。
SはM子にまさか五人も恋人がいるとは知らないのだ。
刺青が出来ない位で、そのキレ方は何なんだろう。

にせイタリアンめ!破滅しろ!

それにしても、Sの五人と、M子の五人とで、計十名が入り乱れ・・・。
タコ足配線にも程がある!
ショートしてしまえ!!



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