月の旅人

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華麗なノイシュバンシュタイン城

華麗なノイシュバンシュタイン城


昨日の夕食が嘘のように、ビュッフェスタイルのおいしい朝食を終え、8時にはホテルを出発した。向かった先はノイシュバンシュタイン城。ディズニーランドのシンデレラ城のモデルとなったことでも有名な白鳥城である。
この城はバイエルン国王ルートヴィヒ2世が建設した中で、最もユニークな城ともいわれている。生涯愛してやまなかったヴァーグナーのオペラに捧げる夢想の城なのだ。が、王が居住したのはわずか170日で、ミュンヘン政府から「王に相応しからず」と判決が下された3日後に湖で謎の死を遂げてしまったらしい。今も真相は闇の中だとか。

そのノイシュバンシュタイン城を目指し、牧草地や畑などが続くのどかなロマンチック街道を2時間近くひた走った。可愛い小さな町もいくつか通り抜け、1度、牛の通行待ちでバスが止まり、自転車で先導するおじいさんについていく牛の群れが車窓の下を通過した。右側の彼方に山頂に雪をかぶった美しい山並みが見えた頃、添乗員さんが、
山の向こうはオーストリア「あの山脈の向こうはオーストリアです」
と教えてくれた。
「すっご~い。あの向こうにオーストリアがあるんかぁ。日本やったら山の向こうも日本でしかないし、なんか感動~」
そんなことを言った私に、それまでほとんど眠っていた妹も身を乗り出してデジカメのシャッターを切り、私にも「いい写真撮れた?」と訊いてきた。私はそれに頷き、
「セレクトせなあかんくらい撮った。寝てたら綺麗な景色見逃すえ」
と妹に言う。もう充分に眠った妹は、その先はずっと車窓の向こうで移り変わる景色を眺めていた。

ルートヴィヒ2世が幼少期を送った、彼の父の城であるホーエンシュヴァンガウ城が見える土産物屋でバスを降り、そこでトイレを借りて10分ほど店内を見たあと土産物屋の外に出ると、入口正面に黄色の車体のミニワゴン車が停まっていた。ドイツの郵便局のマークを見つけ、それが郵便局の車であることを知った私は、その前に立って記念撮影するべく妹に向かってポーズを取っていた。するとちょうどその時、制服らしき黄色の半袖Tシャツに紺色の制帽とズボンを穿いた恰幅のいいおじさんが店内から出てきて、私を見つけるなり満面の笑顔で近づいてきてガシッっと力強く肩を組み、一緒に写真に写ってくれた。
それを見ていたツアー同行者のおばさんが「ええなぁ! 私も撮ってほしいわ」と言っていたが、おじさんは私が「サンキュ~!」と言うなり大きな手で握手してくれて、すぐさま車に乗り込んで去って行ってしまった。
ちょっと急いでいた風だったのに、一緒に写ってくれてどうもありがとう♪


ノイシュバンシュタイン城店を警護するように立っている騎士の鎧の横に立って互いに写真を取り合い、その後添乗員さんに導かれてノイシュバンシュタイン城の近くまで登るリムジンバスに乗った。くねくねとカーブする山道を走り、10分ほどで降車場に着く。そこからは徒歩での移動である。
まずは、ノイシュバンシュタイン城を見下ろすことのできる吊り橋へと向かった。まさにノイシュバンシュタイン城を見るためにあるような吊り橋だ。
そんな吊り橋から見る白鳥城は、晴れ渡った空の下、背後に雄大な緑の平原と湖、そしてはるか彼方にオーストラリアとの国境である山脈を従え、青い屋根を頂いた白亜の優美な姿を見せていた。
吊り橋への道と城への道の分岐点へ戻り、山道を下ってホーヘンシュヴァンガウ城を望み、いよいよノイシュバンシュタイン城へ。
道中、思わせぶりに木立の間にその姿を覗かせていたノイシュバンシュタイン城に到着し、その高い尖塔を見上げると、その傍には三日月が青々とした空の中遠慮がちに薄く姿を見せていた。

可愛い兄妹入城するにはチケットを買い、それに記載された番号が入口の電光板に表示されるまで待たなければならない。
その間、城門の内側で同じく入城を待つ家族連れの中に綺麗な金髪のと~っても可愛い兄妹を見つけ、妹と2人して「可愛い~っ♪」と言いながら彼らに手を振っていた。男の子は4、5歳くらいで女の子は2歳くらいだろうか。男の子は恥ずかしがり屋なのかあまりこっちを見てくれなかったが、女の子のほうは最初はじっと私たちを見ているだけだったが次第ににこっ~っと笑顔になり、腰の辺りで小さく手を振り返してくれるようになった。
「おっ、(気持ちを)掴んだで! 今や、写真撮りっ」
それまでにも可愛い子供たちをたくさん見ていた私たちは、今度見つけたら絶対に写真に収めなければと意気込んでいたのだ。妹がデジカメを構え、私がぶんぶんと手を振り続ける。
が、写すには距離があって小さくしか撮れず、妹と「ハ~イ」とか「ハロ~」とか言いながら近づいてみた。すると、彼女たちの父親が写真を撮るなと言いたげに彼女の顔の前に手を広げて隠したが、それを横にいた奥さんに怒って払いのけられた。f(^^;) ごめんねと笑顔で私たちに言った奥さんは、女の子にカメラのほうを見るように指差し、女の子はまた私に手を振ってくれた。おかげで飛び切りの笑顔の可愛い写真が撮れ、「サンキュ~」と言ってデジカメの液晶を彼女と彼女の家族に見せてあげる。「Oh~♪」と万国共通とも思える声をあげ、「綺麗に撮れてる」だとか「すごい」だとか英語で言われ、おばあちゃんらしき人が「よかったね~」と女の子の頭をぽんぽんと叩いた。
「ベリー プリティー」と私が女の子のほっぺをつんつんしながら言うと、「Very beautiful girl♪」と母親とおばあちゃんがにこにこと女の子のほっぺをぷにぷにとつまんだ。「バ~イ!」と手を振って私たちがその場を離れてすぐ、その家族を含む外国人一行がノイシュバンシュタイン城へ入城していった。

ノイシュバンシュタイン入場11時15分になり、電光板に427番が表示されていよいよ私たちの入城である。他の日本人のツアーグループと一緒に入城し、50人ほどの大人数となって廊下を進んだ。
レジデンツと同じくここでも撮影は禁止されているため、とにかく目に焼き付けようと天井から壁から床までくまなく眺める。係りの人が日本語の案内をテープで流してくれるため、その説明に従って目を移していった。
侍女たちが寝起きしていたという、それでも充分過ぎる素敵な部屋を通り抜け、中央に大きなオーブンと調理台のある広い厨房を通り、2階へ。
2階には大理石や金をふんだんに使ったきらびやかな玉座の間があり、2層の吹き抜けになったドーム型の高い天井には太陽のモザイクが施され、その中心から96本のローソクをつけた重さ900kgの王冠の形をした巨大なシャンデリアが下がっていた。その下の床には大理石のモザイクがびっしりと敷き詰められていて、踏んで歩くのがもったいない気がした。
玉座の間を出て、とてもそうは見えない豪奢な食堂を抜け、王の寝室へ入った。ネオ・ゴシック様式の樫の木でできた重厚な天蓋を持つ豪華なベッドがあり、蛇口が白鳥になっている洗面台に、見事な渓谷を眺めることのできる半円型のテラス、そしてこれまたネオ・ゴシック様式の木枠に囲まれた王専用の礼拝堂までもがある絢爛豪華極まりない寝室だった。
そして白鳥の首をかたどったドアノブを持つ今を抜け、等身大の白鳥の花器があるヴィンターガルテン(冬の庭園)と名づけられた窓辺に面した日当たりのよい空間を通り、グロット(洞窟)に出た。もちろんこれは人工である。城の中に洞窟を作るのは伝統的な手法だったらしいが、ノイシュバンシュタイン城のそれはルートヴィヒ2世の希望によりかなり本格的なものになっていて、本来は小さな滝まであったらしい。
まさに地底に迷い込んだような錯覚を覚えるグロットを潜り抜け、執務室を通って階段を登り、3階の歌手の間へ入った。現在もクラシック音楽の演奏会が行われるという。絵画や装飾で飾られていない場所はないほど壮麗な広間は台形型の天井から黄金の王冠型シャンデリアが下がり、窓辺と廊下側には燭台と呼ぶにはあまりに豪華な黄金のそれが幾つも並んでいた。舞台の奥には遠近感のある深い森が描かれ、そこにだけ空間の静けさが漂っているように感じられた。
そうしてまだ未完成の部分も多いらしいノイシュバンシュタイン城の見学を終え、白い壁の長いトンネルのような通路を通って城外へ出た。

ノイシュバンシュタイン城をほんの少し下った場所から先刻の土産物屋の傍までを往復している馬車に乗って下山しようかと思ったが、人数が揃わないと出発しないという馬車に乗って遅れてはならないと、結局徒歩で下ることにした。途中、お店でソフトクリームを買っていた一人旅のおじさん2人と一緒になり、時々言葉を交わしながら思いのほか早く土産物屋に辿り着いた。

集合時間まで、店内やその外で写真を撮ったりしながら時間を潰す。
そして全員が揃い、そこから少し下った所にあるレストランで昼食を取った。おいしい料理とそうでない料理は交互にやってくるものなのか、このレストランの料理もそれはそれは塩辛くて食べられず、大半の人が残すことに……。それほど塩辛いにもかかわらず、テーブルには塩と胡椒が置かれていた。
「これにさらに塩かける人なんているのかな……」
同じテーブルになったおばさんが言った。ほんとに。そんな人がいたら、絶対に味覚音痴でしかあり得ないに違いない。(ーー;)

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