アロマ姉さん繁盛記from南房総

アロマ姉さん繁盛記from南房総

私には何も無い


23才の若さで、生真面目そうな彼女が、今度は美容関係の仕事についてみたかったと緊張しながら語る様子を見ながら、私は迷っていました。

美容関係の仕事?
きれいでおしゃれな仕事に見えるんだろうな。
この子が、弁当を座って食べる暇もなく、立て続けに入れられる仕事、中までお客様のベッドの周りを這いずり回り、他人の体を中腰でなでさすり続ける肉体労働のこの仕事に

「私のやりたかったのは、こんな仕事じない!」
と言い出すまでにどのくらいの月日があるのだろうかと・・・
すでに、一人の他の候補の女性は決めてあるのに、それをこの子に変える決め手はあるのだろうか。
あるなら気づきたいと。

「なにか聞きたいことはありませんか?」
何度かそう問いかけてみました。

「あの、ほかの人たちは資格を持っているのですか?」
こう、たどたどしく質問してきました。

「あ、みんなが資格がある中で、自分だけが何もない状態ではじめるのが不安なのですね?だれも、資格なんか持ってないから大丈夫だよ。」

「え?」

「アロマは国家資格制度ではないから、なくても仕事はできる。
私は、持っていますよ。
私が資格を取ったのは、自分に自信がないから。
アロマの資格もピンキリだし、あっても無くてもどんな資格でも、それはお客様にはわからない。

でもね、私は自分の心の中の小さな自信がほしかった。
それは、自分に自信が無いからだよね。自己満足のため。
自分で自分を支えるためだけに取ったんだよ。

資格なんか簡単に取れる。
でもね、経験は簡単にはその手にできないんだよ。

重ねた年月と、その手だけが覚えてゆける事がある。
アロマの学校はいくらもある。
でもね、現場で日々の経験をつませてくれるところは、早々にないんだよ。
毎日コツコツ経験をつみ、ほしくなったらいつでも資格は簡単に取れる。何も不安がることはない。」

それを聞いていた彼女の心が何を感じたのか、その時、私にはわかりませんでした。



もう少し、何か決め手がほしいと、彼女の今の職場の様子を尋ねてみました。
周りのほとんどの人たちは、国家資格を持ち働く中で自分は事務の補助職であった。自分だけが何もない...自分には何もない...好きなことも、打ち込めることも、何もない...

「そっか、自分だけが取り残されるようで辛かったんだ。」
そう問いかけると、彼女の目から涙があふれ出てしまいました。



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