アルタクセルクセスの王宮址遺跡

アルタクセルクセスの王宮址遺跡

2004年08月02日
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カテゴリ: 映画
 今日もいい天気である。


 さて今日は夕方S君と映画「華氏911」を見に行くつもりである(先週後半からドイツでも公開されている)。ところがそんな矢先、何の因果かこんなニュースが・・・
(以下引用)
「華氏911」…偏った映画、と首相が不快感
 イラク戦争とブッシュ米大統領を痛烈に批判して話題となっている米映画「華氏911」について、小泉首相は2日夕、「政治的な立場が偏った映画は、あんまり見たいとは思わないね」と不快感を示した。
 首相は映画好きで知られ、この週末も東京・築地の映画館に出かけてエルビス・プレスリーの映画を観賞したばかり。だが、今月中旬から日本でも一般上映される「華氏911」について、記者団が「見に行く予定は」とただすと、首相は言下に「計画はないですね」。
 「監督のマイケル・ムーア氏は大統領に追随したとして、首相も批判しているが」との記者団の指摘にも、「ブッシュ批判、小泉批判、批判ばかりしてもいいことはないんじゃないの」と憤まんやるかたない様子だった。
 「華氏911」は、今年5月のカンヌ映画祭で最高賞「パルムドール」に選ばれた。全米公開後は記録的ヒットを続ける一方、政治的色彩が濃い作品として、保守系の市民団体などが反発している。(読売新聞)


 首相、批判も結構ですが、一度見てからになさったほうが良いのでは・・・?

 メンテナンスがあるそうなので、映画の感想など日記の更新は明日(3日)になります。どういう映画か楽しみだ。
華氏911 コレクターズ・エディション

 さて映画の感想だが・・・。映画そのものとしての出来は、やはり「ボウリング・フォー・コロンバイン」のほうが良かったと思う。前作のほうが毒のある笑いがあったが、今回の映画はテーマがテーマだけに笑える所があまり多くない。予想していたよりもかなりシリアスな内容だった。全体の印象はニュース映像を切り貼りした、という感じである。イラクでの日本人人質事件の映像も少しだけ挿入されている。あと日本のテレビでは絶対にカットされそうな凄惨なイラクの映像が出てくるが、日本で上映するときはどうなるのだろうか。
 ムーア得意?の突撃取材はあまり出番が無い。イラクに行った兵士やイラクで息子を失った「愛国者」の母親へのインタビュー、そしてアメリカ議会やサウジアラビア大使館、そしてホワイトハウスの前での「アポ無し取材(?)」が出てくる。
 前半ではブッシュ政権のサウジアラビア、武器産業、石油企業との癒着ぶりが描かれる。9・11テロの実行犯の多くがサウジアラビアの人間だし、ビン・ラディンがサウジの富豪一族の一員というのも分かるのだが、なんだかサウジアラビアに対する敵意というか悪意が気になった。まああの国は確かにろくでもない国だとは思うのだが・・・。
 後半ではイラクでのアメリカ軍の暴虐が描かれるが、日本のいわゆる反戦運動のように、例えば自衛隊の基地の前でデモをするような頓珍漢な反戦ではない(戦前の帝国陸軍と自衛隊を混同する人には当然の行動なのだろうが・・・。そういうデモは永田町でやれば良い)。ムーアの目はイラクに送られたアメリカ兵個々の事情に向けられ、批判の矛先はブッシュ政権とアメリカという階層的な社会制度に向けられる(彼の主張はますます「階級闘争」っぽくなってきた)。上院議員で息子を軍隊にやっている者は一人しかいないということで、ムーアは議会に登院する上院議員に直接軍への志願のパンフレットを手渡そうとする。
 今のアメリカは言うまでも無く志願兵制だが、田舎で職も無い若者たちにとっては軍隊というのは重大な雇用機会の一つである(何か明治時代の日本みたいな・・・)。こういうアメリカの「田舎者」(敢えて言う)が英語すらろくに通じないイラクに送られ、市民に紛れてどこから攻撃してくるか分からないテロリストの脅威におののきながら日々を送る。アメリカ兵は屈託なくウォークマンで音楽を聴きながら、動くものには全て反応して射撃してしまう。テロに協力する疑いのあるイラク人の家に踏む込んでも、家の中に居るイラク人の女たちはアラビア語で泣き叫ぶばかりでアメリカ兵の英語は通じない(ついでながら、僕は両方とも多少だが分かる)。

 思ったよりもひねりも皮肉も無く、ストレートな主張だった。確かにブッシュ政権批判にはなっているが、思ったほど「偏った」内容でも無かった様に思う。もちろんムーアを含むアメリカ人が依存している石油の安定供給とか、フセイン政権の悪行、そしてアメリカ軍以上にイラクの一般市民(や外国人。昨日はアメリカ軍に物資を納入しているトルコ企業のトルコ人運転手まで殺され、その様子がインターネットで配信された)を殺戮している「武装勢力」のテロ活動(「レジスタンス」という人も居るようですが、レジスタンスならそれこそ非暴力でするほうが効果があるだろうに)への批判などといった視点は出てこない。
 僕はかなり単純な人間なので、「映像の力」に弱く(普段のニュースはラジオとインターネットのみ)、この映画をみるとやはりアメリカ軍のイラク駐留に一瞬疑問を持ってしまった(イラク戦争自体は今でもやらでもの戦争と思っているが)。映画を見終わった後は黙りこくってしまった。ムーアの映画だから、と言って軽妙なものを予想していくと期待外れに終わると思う。
 それとカンヌ映画祭の金賞受賞の際にも日記にも疑義を書いたが、正直言って映画の出来としてはそれに値するかどうかは甚だ疑問である。テーマというか扱う内容や主張で選ばれたのだとしたら、カンヌは所詮その程度の、政治に左右される映画祭か、という言いたくなる。編集賞・監督特別賞くらいだったら納得だったのだが。

 まあ小泉首相が仮にこの映画を見ても、それほど動じる(「感動した!」)ことはないだろうと思う。もう知ってることばかりだろうし。映画ファンなら見ても損は無いと思いますがね。





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最終更新日  2005年09月12日 22時21分17秒
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