美術準備室

美術準備室

MちゃんとAちゃん2

MちゃんとAちゃん2


ある日、Mちゃんがこんな提案をしてくれた。
「せんせ、ウチひまやから、Aちゃんの相手してみてもいいよ。」

Aちゃんはすでに不登校に陥っていた。
朝になると泣いてしまう。
学校に行かなければいけないと思えば思うほど、
体が思うようにならない。
制服に袖を通すことさえできなくなっていた。
だから、
この提案が私にとっては何よりもありがたかったし、
何よりもAちゃんの力になると思った。
そこで、Aちゃんにこのことを話すと、
Aちゃんはとても喜んだ。


水曜日、二人と連絡を取り合い、
2時間目の始まる頃、準備室にAちゃんが登校し、
その時間にMちゃんも来て、
ちょうど授業の空いている私と3人で話をするということに決まった。

そして、昨日。
朝の職員打ち合わせの時間、
今日、こういう事情でAちゃんが登校し、
卒業生のMちゃんが来ますので、ご了承ください、と報告した直後のこと。
女性養護教諭(私よりちょっと年下)が言った。
「ちょっと、それってあかんのとちがう~?」(私より年下であるが、思いっきり『ため語』である。)
さらに
「なんぼ卒業生でも、第3者が学校内で生徒とカウンセリングするのはあかんやろ~。」

私「でも、私も一緒なんですよ。」
養護教諭「先生と一緒でもねえ。まだM(ここは呼び捨て)は病気が治ってないのに、
A(ここでも呼び捨て)にとって決していい結果にはならへんと思うんやけど。」
私「Mちゃんやからわかる、っていうこともあるんやないですか?
とにかく、今日のところはこらえてもらえませんか?
もう、二人には連絡してるし、今さら断るということは私にはできません。」
養護教諭「それに、校長、教頭は知ってるのぉ?」
私「いいえ、まだ言っていません。」(言ったら断られるのに決まってるやろ!!)
養護教諭「校長、教頭が知らんのに、そういうことはやったらあかんやろ~。」

しつこいので、ここで私は無理に打ち合わせを終了した。
振り切って教室に上がる。
そのまま1時間目の授業に突入した。

しばらくして、主任が私を廊下に呼び出した。
「さっき、校長、教頭に報告してきたんですけど、
やっぱりだめでした。
すみませんけど、すぐに二人に連絡して、断ってくれませんか?」

やっぱりね。。
学校は体制のことが一番大切なんだ。
子供ひとりひとりのことを大切にする、なんていい格好を言いながら、
結局は外側のことばかり気にする。
体制を崩されそう(そんな気なんてさらさらないけどね)だと思うと、
徹底的に阻止しようとする。

アホらしいやら情けないやら。

こんなことなら、黙って、こっそりとやればよかった。


でも、主任に思いだけはぶちまけてやった。
職員は、Mちゃんのことを誤解している。
Mちゃんが在校生のとき、どれだけMちゃんのことを理解してやってきたというのだ?

養護教諭は、自分を通さなかったことが腹立たしいのだ。
(一応彼女は不登校対策職員である)
だって、Aちゃんは保健室なんて大嫌いなのだから、通しようがないのに。

Aちゃんはおねえちゃんと話したがっている。
おねえちゃんが来てくれるから、自分も制服を着て登校する気になったというのに。

MちゃんはだれよりもAちゃんの気持ちがわかってあげられるのに、
そして、ついこの間までこの中学校の在校生だったというのに。。


それでも、事態は変わらなかった。
だから、二人に連絡し、学校で会うということは断った。
しかし、すぐに別の手を打ってやった。
MちゃんがAちゃんの家に行き、二人で話すという方法に変えてやった。


Mちゃんは快諾してくれ、Aちゃんも喜んでくれた。




この日、放課後、Aちゃんの家庭訪問をし、
Aちゃんのお母さんも、Mちゃんのことをとても喜んでくれた。
これからも、Mちゃんとお付き合いしていきたいと言ってくれた。

また、Mちゃんとはその後会って、お茶を飲みに行った。
Mちゃんは、ほんの短い間に、ちゃんとAちゃんのことを理解してくれていた。
「せんせ、Aちゃんは、すごい精神年齢の高い子やね。
中1の子があそこまで考えてるなんて、びっくりした。
それに、先のことがすごくわかってる。
きっと、読解力もすごくあると思う。」

ほんとにその通りなのだ。

Mちゃんは、しっかりAちゃんをわかっていた。


それなのに、うちの教師たちといったら、
いったい、AちゃんやMちゃんの何をわかっているというのだろう?

養護教諭も、校長も、教頭も、
体面ばっかりが気になって、
そして、ちょっとでも自分たちと違う動きをしようとする人間を
まるで反体制分子とでもいうように、潰そうとしてくるのだ。


教育っていったい何だろう?

生身の人間、
枠にはまる子ばっかりじゃない。
いや、枠にはまらないからおもしろい。
これからいろんな形に変わっていく、そういう不思議さ、そういうすばらしさがあるから、
私たちの仕事はやりがいがあるんじゃないのか?

こうやって、
いかにもきちんと、見た目きれいに体裁だけ整えて、
この学校は、いや、この中学校教育は、
いったいどんな方向へ進みたいのか?


木曜日のことは、決して忘れない。
絶対に許さない。
二人の、将来ある子供のことを、
格好だけ気にして抹殺しようとする、
こんな恥ずかしい、こんな情けない、こんな非情な行為を、
私は絶対に許さない。
これを教育だと言ってのけるのなら、
こんな仕事に携わって行きたくない。




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