アルバム売りさん

アルバム売りさん

2007.01.17
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カテゴリ: こころもよう
突発的な出来事があって、指折りかぞえてたおでかけがポシャりました。

握り締めたちからが強いほど、
握り締めた指をこじあけるのはホネですね。
あたしの手に握り締められてた期待は、
グーに硬直した5本の指をなんとか広げたその瞬間に、
どさっと床に落ちました。
そう。
消えてなくなったわけじゃない。



ほんの少しの間、滑り落ちてしまっただけ。
拾い上げて、もう一度大切にあたしの手のうちに戻してやればいい。
爪のあとがつくくらい、ぎゅっと握りなおしているうちに、
愛娘が微熱のカラダをひきずるように帰ってきました。
ありゃまぁと、
薬を飲ませて布団に連れていき、
熱いポトフでも煮てやろうと、
鍋の上をゆらゆらゆれる湯気をぼんやり見つめて自分に話しかけました。

きっと、これがあたしの流れ。今日は家でリンを迎える流れだった。


クークー眠るリンにイッテキマスと言いおいて、
今日の突発的な出来事、知人のお通夜に出かけました。

自治会長もされていた故人は享年59歳。
痩せていたけれど鼻筋の通った九州男児。少し父に似た風貌の方でした。
9月に入院された時にはもう癌が進行していて、みるみる痩せていかれました。
あたしが知ってるその人は、病院でベッドから辛そうに起き上がったその人でなく、
穏やかに微笑む、遺影のその人なのでした。

私の知ってる故人は、一人で暮らす、まじめで、陽気で、忍耐強いおっちゃん。
亡くなる直前には、病院から『外泊』を薦められて自宅に1泊を2度ほどされたけれど、
近所に住む娘さんは故人のひとり暮らしの家に泊まることはなかったそうです。

ねえ ませさん。ませさんは、流れに逆らったことがありましたか。


そして今、我が家のお風呂に入ってる人は、あたしがお通夜から帰宅してしばらくするとやってきて、
ガスと電気が止められ食べるものもないので助けてくれと言うのです。
そして風呂場の脱衣所から顔をのぞかせて、あたしにこう訊いたのです。

湯船に入ってもいいですか。

彼に会うたび、あたしの心は深く暗く沈みます。
知的な障碍を持つ彼にも、彼の流れがあるはず。
その流れを乱すワルイヤツにつけこまれ、彼の流れは今、ひとつところでよどんでしまっているのです。
早く、自分の流れを取り戻してください。











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最終更新日  2007.01.17 23:33:19
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