鍋・フライパンあれこれ美味
100万ポイント山分け!1日5回検索で1ポイントもらえる
>>
人気記事ランキング
ブログを作成
楽天市場
077351
ホーム
|
日記
|
プロフィール
【フォローする】
【ログイン】
★☆自分の木の下☆★
11.総司の誕生日
──それは、運命だったのかもしれない
『おい、何やってんだ?』
たわいない出来事。
『ったく、雑魚どもが……』
その時の貴方は、とても輝いていて
『無事か?』
貴方の深く澄み渡った瞳に、自然と吸い込まれていく。
『お、ヨシヨシ。おいオマエ これに懲りたら、ココに近づくんじゃねーぞ』
その時、自分は恋におちたッス!
……………『ッス?』
体育大会も終わり、全校生徒がようやく登校してくるようになった六月。茜は珍しく、登校時間内に通学路を椿と共に歩いていた。
「おはよう椿ちゃん。ってアレ、茜?! どうしたの? まだ、授業が始まる時間じゃないよ? ほら、帰ってやり直さなくちゃ!!」
出会って早々にこんな言葉を投げつけたのは、優雅である。
「おはよう優ちゃん」
「ちょっと優雅、なによ今の言葉は。あたしだって、たまにはちゃんと起きて時間通りに学校にきたりするわよ!!」
優雅の言葉を気にするでもなく、いつも通り優雅に挨拶をする椿の横で、茜は息巻きながら言った。
「年に2、3回くらいだけどね~」
笑いながらいう椿の言葉に、優雅も「そういや、そうだね~」と、笑いながら肯定する。
「あんたらねぇ~……」
半分、諦めたように肩を落としながら、茜はため息をつく。この二人には、何を言っても無駄だ。特に、椿。優雅だけならまだ訂正の余地はあるのだが、椿が絡むと事態はややこしく、茜の悪い方向に進んでいく。こういう場合は、何も言わずただ黙って事の成り行きをおとなしく見守るに限る。椿とつきあい始めて13年、ようやく身につけた学習能力だ。
「あ、総ちゃんだ。」
茜をからかうのに飽きたのか、椿は前方に欠伸をしながら歩いている総司と浩也を発見する。今日は珍しく、総司の周りに女が群がっていない。
「総ちゃ~んっ、ジロゥちゃ~ん! おっはよー!!」
思いっきり手を振りながら叫ぶ椿に気づいた総司は、そこで立ち止まり椿たちが追いつくのを待った。
「よぅ。珍しいな、こんな時間に会うなんて」
その言葉は確実に茜に向けられていた。
「その台詞、総司が言えたモノじゃないでしょう」
苦笑しながら浩也は総司を窘める。浩也は今日も変わらず着物だ。手には風呂敷で包んだ教科書。一方、総司は相変わらず形だけの鞄を持っているものの、今日はその鞄が膨らんでいる。手にも紙袋らしきものを持っていた。それを気にすることなく5人は並びながら校舎を目指す。その辺りだけ、なにか世界が変わったかのように煌びやかでゴージャスだ。周りで同じように歩いている生徒たちは、遠巻きにうっとりとみとれている。
「あっ! はい、コレ。お誕生日おめでとう、総ちゃん」
そう言って椿は鞄から、可愛らしい包みを取り出し 総司に手渡した。そう言われて、茜は今日が6月15日・総司の誕生日である事を思い出す。
「あぁ、サンキュ姫」
「あ、道理で女子たちが今日に限って、総司に寄ってこないのか分かったよ。総司、これは僕から」
思い出したように納得しながら、優雅もプレゼントを渡す。
「わりぃな、サンキュ」
お礼を述べながら、総司は貰ったモノを鞄の中へとしまった。優雅の言葉に、茜は首を傾げる。
「それってどういう事?」
そういや去年の今日は総司の周りには、絶えず女生徒たちがプレゼントを渡してきていた。茜は顎に手をあてて、思い出す。あまりの異常事態に、生徒会総出で事態の収拾に励んでいた。生徒会長に至っては、たまらず「オマエ、この日はもう学校くるな!!」と総司にわめき散らしていた。
「茜、知らないの? 総司のファンクラブたちの掟。三日前ぐらいから流れてたじゃないか。『我らが総司さんの誕生日は、総司さん本人にプレゼントを渡しにいくのは構わないが、総司さんの迷惑になるような行いをしてはいけない。この、誓いを破った者には、それ相応の処罰が下される』って」
優雅の言葉に、茜は最近の行動を思い起こす。確か昨日の放課後は、ジャクレに鳥インフルエンザ検査を受けさせるため、厭がるジャクレを追いかけ回していてそれどころじゃなかった。
「あ~、昨日は忙しかったからなぁ……」
あの後、ジャクレの足を縄で縛って病院まで引きずっていった。受付のお姉さんは、茜の姿を見てしばし絶句した後「何か事件でもあったんですか?」と真剣に聞いてきたくらいだ。
「おはよう椿、優雅。……あら珍しい、茜がいるわ。来る時間 間違えてるんじゃない? まだ一般生徒の登校時間よ、出直してきたら?」
学校の校門前に立ち止まって談笑している彼女たちに躊躇無く話しかけてきたのは鈴菜だった。
「おはよう、鈴ちゃん。校門で何しているの?」
「おはよう椿。今日は誰かさんのせいで早朝持ち物検査よ」
椿に笑顔で挨拶したときとは裏腹に、総司をジロリとにらみつける。しかし総司は我関せずといった顔で「大変だな」などと、ほざいている。
「今現在で収集したアンタ宛のプレゼントよ。責任持って引き取っていきなさい」
ため息をつくと鈴菜はそういって、後ろにある台車に乗せられたプレゼントの山を指さした。
「相変わらず、モテるね総司」
半分呆れ混じりの優雅の言葉に、総司は謙遜することなく「まぁな」と笑う。
「早く行かないと、直にチャイムが鳴るわよ」
「そうだね。せっかく珍しく早く来たのに、遅刻なんて冗談じゃないや! それじゃ、またあとでね鈴菜」
そう言うと、茜たちは鈴菜に別れを告げ校舎へと去っていった。
下駄箱に行くと案の定、総司の下駄箱は溢れかえっていた。入りきらずに床に手紙やプレゼントが転がっている。しかし、それらを盗もうとするヤツはいない。総司の恐ろしさを知っているからだった。
総司たちはそれらをすべて回収すると、教室を目指した。その途中、茜は眉に思いっきり皺を寄せて不愉快そうに「なんでこんな下半身万年発情期がモテるんだろう?」と呟く。それを聞き逃さなかった総司はいつもの人を見下した笑みで「俺だからだろ」と当然のように答えた。
「こぉんなサイテー男のどこがいいんだか……」
けっ……とばかりに唇を尖らせ、目を半眼にしたおよそ可愛いとは形容しがたい顔をしながら茜はまたもや呟く。その瞬間、茜の顔が優雅と椿の前から消えた。あれ? と思ったときには、茜の顔はゲタ箱の中に消えていて後頭部には総司の手がガッチリと捉えていた。
「哀れな………」
優雅は思わず見えないハンカチで見えない涙を拭ってしまったのだった。
昼休みに入り、ブラリスメンバーたちは天気が良いこともあって中庭で食事を取りつつ、プレゼントの中身を調べていた。
「あ、これグッチの最新モデルですよ。あ、見てください。この時計、ロレックスです」
「こっちはポーターの鞄だ」
次々とあげられていく名前はどれも有名なブランド品だった。プレゼントの物色をしているのは主に優雅と浩也で、総司はその横で一緒についていた手紙を鈴菜と椿と分担して読んでいた。
茜はというと、全員が全員 茜の手癖の悪さを知っているので総司の手によってジャクレが繋がれている木に縛り付けられている。口にはもちろん、猿ぐつわ代わりの布が巻かれている。
「え~と“好きです”“今夜、あの場所で待っています。”“愛してる”“連絡してね”……」
「こっちなんて……凄いわよ、見て。“付き合ってくれなきゃ呪ってやる”“貴方を毎日見守っています”“貴方が望むのなら世界を手に入れてみせる”……ストーカーの域に達しているわよ。犯罪者にもモテモテね」
「愛されてるからな」
本望だと言わんばかりの笑みに、鈴菜は手に持っていた手紙を総司に押しつけると立ち上がって校舎を目指して歩く。
「鈴菜さん、どこに行かれるんですか?」
「生徒会室よ。集合かかっているのよ」
億劫そうに言う鈴菜に目もくれず、総司は鈴菜に押しつけられた手紙に目を通す。
「ん、なんだコレ?」
そう言った総司の手には、他のものとは違った雰囲気の便せんがあった。
「なになに?“放課後、中庭で待っています。孔雀院 馨”………クジャクイン? 変わった名前だな、こんな女いたか?」
浩也に手紙を見せながら総司は尋ねる。
「随分、達筆ですね~。孔雀院……これはカオルでしょうか? それともカオリ??」
「そうやな~、俺的にはカオリちゃんかな? 1―C……後輩か。に、しても相変わらずようモテるなぁ総司は。羨ましい越して恨めしい」
「諦めなよ晴貴、誰も総司には敵わないんだから。いい加減、何かと総司に張り合おうとするのやめた……ら………?」
優雅の言葉が小さくなっていく。明らかに、今の会話にココには居るはずのない人物の声が混ざっていた。もしかして…と、全員が声のした方を振り返る。
「「「「「おまえっ!!!?」」」」」
みんなが声をあげた先にいたのは、肩の辺りまで伸ばした髪を金色に染め 薄汚れた服を身に纏った関西弁の男。そう、高校一年の時に総司に勝ち、茜を我がものにするために武者修行に出かけた2-Eの強運の持ち主・井上 晴貴だった。
「晴貴っ! オマエ今までどこいってたんだよ、心配しただろーがっ!」
そういって総司は晴貴の首に腕を回し、軽く首をしめる。男同士特有の馴れあいだ。
「痛たっ……イタタ、痛イて、総司。もぅちょい腕ゆるめてくれ、苦しいわ」
笑いながら総司の腕を叩いている晴貴に椿も声をかける。
「でも、ホントに心配したんだよ。ハルちゃん、今までどこに行ってたの? ハルちゃんがいない間、私………とっても寂しかった」
そういって晴貴を見上げた椿の瞳には涙が、溜まっていた。その横では生徒会室にいったハズの鈴菜がいて晴貴に笑顔を向けている。
「晴貴………おかえりなさい」
「晴貴さん、よく無事に戻ってきてくれました。これはつまらないものですが、受け取ってください」
そういって浩也が差し出したのは、浩也の命とも言われている愛刀だった。
「えっ?!それ、ジローの宝物やんっ!そんなんワイ、受け取られへんよっ」
晴貴は慌てて首を横に拒絶の意を見せるが、浩也は聞き入れず 晴貴の手に愛刀を握らせる。晴貴が困っていると、総司が肩に手を置いて晴貴を促した。
「受け取ってやれよ、浩也の気持ちを」
「総司………。ジロー、おおきに。家宝にするわ」
「よしっ! やっと、全員そろったんだし写真撮ろうよ。記念写真!!」
優雅がそういってカメラを構える。「よしっじゃぁ、やっぱり晴貴は真ん中だな」などと、みんなが晴貴を優しく構う。あぁ、ワイってやっぱりみんなに愛され、必要とされとったんや………などと、晴貴が感動していると、ふいに茜が晴貴の前に立ち 熱っぽく晴貴を見つめている。
「春貴……」
「茜……」
この二人の間に言葉は もういらない。ただ、見つめるだけで想いは伝わる。
「晴貴……」
「茜……」
二人には障害も何もない。二人の周りには、みんなが暖かく見守っている。そうして、二人の距離は縮まって……
「「「「くさいっっっ!!!」」」」」
この叫び声に、晴貴は我に返る。さっきまでの光景は、一体どこに?! 慌てて周りを見渡せば、全員が胡散臭そうな目で晴貴を見ていた。
「え?」
さっきの好友的な雰囲気はどこへいったんだと思わせるみんなの冷たい視線が、さっきの出来事が晴貴の妄想であることを語っている。
「オマエ、くさいぞっ! どこの誰だかしらんが、寄るな触るな近づくな」
思いっきり不満ありありとした表情を隠しもせず、総司は侮蔑の眼差しを向けている。総司の言葉で、晴貴は自分の腕をクンクンとにおった後、思い出したように言った。
「あー……そういや、一週間前から家に帰ってないからなぁ……。風呂、入ってないわ。けど、友情の前では匂いなんて……っっ!!」
と、期待を持って椿を見遣ると、彼女は鼻を摘んでシッシと手を振っている。優雅に至っては「写真じゃこの臭さは現せないからなぁ」などといいながら、晴貴と距離を取っていた。晴貴は最後の希望を持って浩也を見る。すると浩也は手に紙切れをもったまま、あさっての方向を向いている。手にしている紙切れには、「半径12メートル以内に近づいたら排除する。By鈴菜。」と書かれていた。
「せやっ! せめて茜ちゃんはっ!! 茜ちゃんはワイを見捨てたりせぇへんよなっ!!」
晴貴は木に縛られているハズの茜を見つめる。
「ってあれ? 茜ちゃんは??」
そこにいたハズの茜の姿はなく、木の下には食いちぎった跡がついているロープが落ちていた。
「茜ちゃんなら、脱兎の如く校舎の方へ走っていったよ」
鼻を摘んだまま椿は親切に校舎を指さす。椿が言うや否や、晴貴は俊足で校舎の方に消えていった。
「なんだったんだろうね? 今の……」
「つか、何しに来たんだ? アイツは」
放心しつつも、決して写真を撮る手だけは休めずに優雅は呟く。総司はため息を一つ吐くと、ロープが落ちている木の上の方に声をかけた。
「おい、茜。もういいぞ、降りてこい」
すると、木の上がガサゴソと不気味に蠢き、続いてドスンという音と共に茜が文字通り落ちてきた。
「あいたたた……くぅ~っ着地失敗………」
お尻をさすりながら茜は立ち上がる。目にはうっすらと涙が滲んでいる。よほど、痛かったのだろう。
「茜さん、危機感と食の無いときは 本当に運動神経がよくないですね」
声はかけるものの、浩也は手を貸す素振りを見せない。どうやら、自分の手を汚したくないらしい。
「にしても、アイツほんっっとに臭かったね。見てよ、ジャックが悶えてる。総司、あんたジャックに人工呼吸してあげなさいよ」
茜に言われたとおりジャクレを見てみると、確かに泡を吹いて横たわっていた。
「なんで俺が鶏如きに。人工呼吸ってのは、人にしてこその人工呼吸なんだぞ。鶏にするもんじゃねぇよ」
「じゃぁ、鶏呼吸! ジャックは雌よっアンタの守備範囲内でしょ、卵生ませたくらいだし」
「俺は人間だ、鳥呼吸なんて出来るかっボケ! それに卵だって俺が生ましたワケじゃねぇ、あの鳥が勝手に生んだんだろうがっっ!!」
「まぁっ!? この期に及んでしらばっくれる気?! 認知しない気っっ!?」
「認知も何も、あの卵はすでにもう校長のハラの中だろーがっ! もう少し詳しく言うと、もう消化されて排せ………」
ピーッという音と共に総司の顔に、総司宛として送られたプレゼントが投げ当てられた。投げられた方向を見ると、浩也が笑顔で立っている。口元にはどこから取り出したのかホイッスルの姿がある。
「教育的指導」
「ジロウ………てめぇ……」
赤くなった鼻を押さえながら、総司が浩也に突っかかろうとしたとき、丁度タイミングよく昼休みの終了を知らせるチャイムが鳴り響いた。
「あ、早く教室戻らなきゃ。次、確か数学だったよね?総司、そのプレゼントたち どうするの?」
「ん~……置いていく。誰も盗らねぇだろ」
プレゼントに目もくれず、さっさと教室に向かう総司に優雅は「そりゃぁ、その所有者が総司だからね」と半分呆れながら言う。
「総ちゃん、さっきのカオリちゃんって子に会うの? 放課後に」
その椿の言葉に総司は「あー……」とも「うー……」ともつかない言葉をはくと、立ち止まってちらりと茜を見た。総司の視線に茜は胸が一瞬ドキッと高鳴ったのを感じる。
「なっ………なによぅ?」
茜の問いかけには答えず、じーっと見た後 総司は軽く息を吐き、何事もなかったかのように歩き出した。
「…………行く。どっかの誰かさんと違っておとなしくて可愛いげがあって女の子らしいッポイしな」
総司の誰ともつかない物言いに、茜はさっきのトキメキも忘れて突っかかる。
「ちょっと……。それ、あからさまにあたしを指してない? ってか、明らかにあたしのことを言ってるでしょうっ?!」
普段よりも幾分押さえた様子で文句を言う茜に、総司はわざとらしく大仰にリアクションを取りながら言葉を返す。
「とんでも無い。俺は誰かさんとは言ったが、別に茜がとは一言も言ってないぞ、なんだ? オマエ、自分が言われてるって思ったって事は、自分がおとなしくなくて可愛いげがなくて女の子らしくないって事を自覚してたのか。そりゃ関心関心、自覚してるって事は良いことだ。あとは、その部分を何とかするこったな」
そう言って総司は教室に入る。総司の言葉に憤りを感じ、しばらくその場で立ち止まっていた茜だが、二度目のチャイムが鳴ったと同時に、我に返り教室に駆け込んでいった。
「なにさなにさっ総司のヤツ、女の子から手紙貰ったくらいでデレーッとしちゃって! あんな男のドコがいいんだかっ!! そりゃ頭良いし喧嘩強いし、見目イイけど………いやいやっ! だって下半身獣男じゃんっ!! そうだよっ! かわいい(かもしれない)女の子を総司なんかの餌食にさせないために、私が守ってあげなきゃいけないのよっ! そうっっ! 私がこうしてわざわざ出向いているのは、純情可憐な乙女を守るためであって、決して総司が会う気になったコがどんな子かチェックしにいくわけじゃぁないのよ! うん!!」
5限目の授業である数学の時間。茜は毎度のこと廊下に立たされていた。
クラスメイトも他の先生も、もう慣れたもので誰1人、茜を気にする人はいない。それを良いことに茜は匍匐前進をしながら廊下を移動していた。目的地は、総司へのラヴレターの差出人・孔雀院 馨のもと。
「えーっと、新聞部の斎藤瑛太から一二〇円で買い取った情報によると、1-Cは今の時間は体育。授業内容は、男子がサッカー、女子は陸上っと」
ちなみに、一二〇円は茜のなけなしの全財産だったりする。そんな貧乏街道まっしぐらの茜がずるずると、まるでナメクジのように這いずりながら運動場を目指す。
心なしか茜の触覚ともいわれているアホ毛が意志を持っているかのように動いている。本能で獲物を探しているのだろうか。
「カーオリちゃんは、どーれだぁー?」
匍匐前進で運動場が見渡せる草木多い茂る花壇へと場所を移した茜は、その隙間からカオリちゃんを捜す。が、如何せん名前は知っているものの肝心の顔を知らない。
うむむ、しまった、私としたことが………これじゃぁ、匍匐前進までして頑張ってココまできた意味ないじゃないかっ! と心の中で毒つきながら、茜は頭をかきむしる。すると、茜を哀れと思った神の助けだろうか、タイミング良く茜の耳にカオリちゃんを呼ぶ声が聞こえた。
「香里~っ、次タイムはかるの香里だよー」
「ハーイっ」
香里と呼ばれ、呼び寄せた子の元に駆け寄った女の子を見た茜はその場で暫く硬直し、その子を凝視する。
柔らかそうなハニーブラウンの髪の毛はショートカット。髪が覆う顔は小さく、うっすらと桃色だ。その顔の中に綺麗に収まっている各パーツの中でも一番印象的なのはパッチリとした大きい二重の瞳。
ハッキリ言って可愛い。もんのすごくかわいい。総司が好きそうなタイプ。イヤ、世の男が男なら絶対放っておかないくらいかわいい女の子である。
「かっ………かわいいっっ!!」
茜は何かに強く頭を殴られたような衝撃を感じた。
放課後になり、茜はトボトボと足取り重く2-Eに帰ってきた。それにいち早く気づいた椿は明るく出迎える。
「あ、おかえりー茜ちゃん」
「もう授業全部終わっちゃったよー。あ、でも茜には関係ないか」
優雅の身も蓋もない言葉にも茜は耳を貸さず、自分の席に座る。
「で、どうでした? 例のカオリさんは?」
何気なく聞いた浩也の言葉に、茜は酷く動揺し椅子からずり落ちる。
「どっどどどうして、あたっ、あたしがカオリちゃんを見に行ったって!?」
そんな様子の茜を呆れたように見ながら鈴菜は開いていたパソコンを閉じながら言った。
「どうしてって………いかにも気になりますーみたいな顔して総司の顔をチラチラ盗み見しつつ、新聞部の斎藤瑛太からカオリちゃんの情報をなけなしの一二〇円という安い価格で買い取っていたのを知らないとでも思った? そして、廊下に立たされたのを良いことに、その情報を元に実際にカオリちゃんがどんなのか見に行った。アンタの考えることなんてまるわかりなのよ」
容赦のない鈴菜の発言に茜は、再度椅子からずり落ちる。言葉で表さなくても態度でそれが図星であると言っている。
「で、感想は?」
そんな茜の態度をまったく気にせず、鈴菜は淡々と聞いた。
「カッ………」
「「か?」」
途中で言葉を区切った茜を催促するように浩也と椿は聞き返す。茜は一度、大きく息を吸い込むと、吐き出す息と一緒に言葉を発した。
「かわいかった……もの凄く………」
その茜の発言に、椿と浩也は「そうなんだ~」と納得し、鈴菜と優雅は顔を見合わせる。そうして茜に気づかれないよう二人はさりげなく茜から距離を取って小声で話し始めた。そんな二人に気づかず、茜はハッと教室を見渡す。そしてある人物が居ないことに気づき、椿に問いかけた。
「ねぇ、総司は?!」
「総ちゃん? 総ちゃんなら、茜ちゃんが帰ってくる数分前に出て行ったよ?」
椿の言葉に茜は、焦ったように尚も問いかける。
「どこ?! どこにいったのッ?!!」
茜の剣幕に少々、蹴落とされながらも浩也は言った。
「たっ……多分、中庭ですよきっと」
浩也の言葉を聞き終わると、茜は何も言わずに教室を飛び出した。何故、自分がここまで焦るのか分からない。総司のことなんて放っておけばいいじゃないか。でも、気になる。これはきっと理屈じゃない。本能なのだろう。そんないつものとは違った様子の茜に狼狽しつつも、椿と浩也は後を追った。その後ろには、椿たちと違って走らず話しながら歩いて後を追う鈴菜と優雅の姿がある。
「ねぇ、鈴菜しゃん。孔雀院 馨……って知ってるよね?」
「えぇ、1-Cのでしょ。優雅も知っているのね、守備範囲外だと思っていたけど?」
「あぁ、まぁそうだけど。あの人、僕の後輩のクラスメイトで商売の常連客なんだよね、よく総司の写真を買ってくれる」
「なるほ。」
「でもさぁ、あの人ってかわいかったっけ? どっちかっていうと……」
「まぁ、人の印象なんて人それぞれだからね……」
「それはそうなんだけどさ………」
といいながら優雅は胸の辺りで腕を組み考える。
そうしてポツリと言った言葉は綺麗に鈴菜とハモっていた。
「「でも、総司があの人物に落ちるわけがない」」
そんな遣り取りが交わされているなんてつゆ知らず、ところ変わって数分前。
総司は手紙に書かれていたとおり、中庭に足を運んでいた。手には貰った手紙。
正直、総司は手紙でのこういう呼び出しがあまり好きでは無かった。何故かと言うと、こういうタイプは後が面倒だからだ。遊びと割り切ることが出来ず、総司の素行に勝手に怒り傷ついていく。
総司としては遊びと割り切って付き合っているのに勝手に自分が本当の彼女と思いこみ、総司の素行に怒り傷つかれるなんて溜まったモンじゃない。最初から遊びだと言っているにも拘わらず、勝手に傷ついていく。こういう手紙のタイプはこの手のが多い。
出来れば、相手を傷つけたくない……そう総司は思い、この手のタイプは無視し続けていた。が、今回会う気になったのは偏に茜が原因だろう。どう原因しているかは分からないふりをしながら、総司は手紙の主を捜す。
「なーぁにが『中庭で待ってます』だ。いないじゃねぇか」
ぐるりと中庭を見渡してみるがそれらしい人影はまったくない。総司は次第に面倒くさくなり、さっさと切り上げて帰ろうと思い校舎へと続く連絡用通路へと向かった。と、その時、総司は何かに躓いた。
「あっぶね………」
総司はそう呟くと、自分が躓いたものを見る。すると、そこにあったのは人の足だった。男性特有の太い足。その足の持ち主は、あろう事か校舎の壁にもたれ居眠りをしていた。一向に目覚める気配のない彼にむかついた総司は、その男の足を思い切り蹴ってやって文句を言う。
「おいテメェ、こんなところで居眠りこくとはイイ度胸だな」
総司の行動に、その男は目を覚ました。
「見ねぇ顔だな、一年か? こんなところで寝てんじゃねぇよ。俺の邪魔だろうが」
構わず総司は、男の足をグリグリと踏みつけている。遠慮のないその様子に普通の人間は怯え一目散に逃げ出すのだが、その男はまったく怯える気配はなくそれどころか逆に目をキラキラと見開きかせ総司を見つめていた。
彼のそんな様子に総司はより一層、機嫌を悪くする。
「なんだオマエ、なんか文句あんのか?」
すると、男は勢いよく総司の前に立ち上がった。
高い。
総司の彼に対する第一印象はソレだった。総司も高い方なのだが、彼の方が総司よりも高かった。と、いっても大きめの林檎一個分の差だろうか。しかし、彼はそんな総司の視線を気にするでもなく、いきなり総司の両腕を掴むとこういった。
「総司さん! 自分、総司さんの事が好きッス!!」
間。
間。
間。
「は?」
暫くその状態でフリーズしていた総司は、思わずへんな声をあげていた。そんな総司を気にするでもなく彼は、もう一度総司を見つめながら言う。
「好きッス。自分、総司さんのことが好きなんス。自分とお付き合いしてください」
男の言葉に総司は今度こそ怒り、彼の腕を払い落とす。
「はぁっ!? なに寝ぼけたこといってやがる! 冗談も大概にしろよな! 大体、誰だよオマエ!!」
すると彼は、そうだったと呟くと居住まいを正し、改ためたように名乗った。
「自分、1-Cの孔雀院 馨って言います。この間の体育大会で総司さんに惚れました。篤川総司さん、自分と付き合ってください」
そう言ってお辞儀をしながら差し出された手を見つつ、総司は固まっていた。
孔雀院 馨? そりゃ、この手紙を送ってきた子だよな。男? 男なのか?!俺は今、男に告られているのか?!! ちょっと、まてっっっ!!
「冗談じゃない!!!」
総司はそう叫ぶとクルリと向きを変え歩き出す。一刻も早くここから立ち去ってやる。総司の醸し出す雰囲気がそう物語っていた。総司がそんな態度に出るとは思っていなかったらしく馨は慌てて、総司を追いかけ手を掴む。
「ちょっ、待ってくださいっ!」
「だれが待つかっ!」
そういいながら総司は掴まれた腕を賢明に振りほどきながら前進する。
「返事は?!」
馨の問いかけに総司は思いっきり力を入れ腕を振りほどき、叫んだ。
「ノーだっ! ノーに決まっている!!!」
「どうして!?」
総司の言葉に信じられないと言いたげに馨は聞き返す。総司は立ち止まると馨の方へ向き直り、一度深呼吸する。
どうして? そりゃ、そう思うだろう。俺からみてもこいつは多分カッコイイ部類に入る。彫りの深い精悍な顔立ちに、引き締まった筋肉。髪の毛はオールバックにし凛々しい眉毛。顎にはひげを生やしている。間違いなくこいつはかっこいいだろう。女にしてみれば彼氏にしたいと思う男だろう、俺の次に。だがな……。
「俺は男だ! 男に告白されて喜ぶヤツがどこにいるっっ!」
「俺は総司さんに告白されたら嬉しいッス!!」
「んなもん、死んでもするかっっっ!!!!!!」
言い合っているうちにもみ合いへと発展する。しかし、その動きは逃げる総司を捕まえようとする馨という形だった。ふと、気を逸らした瞬間 総司は足払いをされその場に倒れ込む。そんな総司に覆い被さるようにして馨も倒れてきた。
端から見たら総司を押し倒す馨。総司は慌てて起きあがろうとするが、馨の手が総司の手首をしっかりと掴んでおりビクともしない。
「くっそ、放せっ! 殺されてーか!?」
「総司さんに殺されるなら本望です」
総司の脅しにも屈することはなく、あまつ本望とのたうち回る……。もう駄目だ。総司はそう思い、周りを見回す。誰かいないか………。最後の望みを持って見遣ると其処にいたのは………。
≪イチ≫↑
≪ブラウザでお戻り下さい≫
*この小説は、3人で作ったリレー小説です。
順番:≪ララ(管理人)≫→≪イチ≫→≪千鶴≫
ここまで読んでくれてありがとうございます!
ジャンル別一覧
出産・子育て
ファッション
美容・コスメ
健康・ダイエット
生活・インテリア
料理・食べ物
ドリンク・お酒
ペット
趣味・ゲーム
映画・TV
音楽
読書・コミック
旅行・海外情報
園芸
スポーツ
アウトドア・釣り
車・バイク
パソコン・家電
そのほか
すべてのジャンル
人気のクチコミテーマ
楽天写真館
大充実(*^o^)/\(^-^*)
(2026-05-19 12:38:32)
つぶやき
一喜一憂しない
(2026-05-19 10:50:40)
今日のこと★☆
東京ゼロエミポイント
(2026-05-19 13:10:01)
© Rakuten Group, Inc.
X
共有
Facebook
Twitter
Google +
LinkedIn
Email
Design
a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧
|
PC版を閲覧
人気ブログランキングへ
無料自動相互リンク
にほんブログ村 女磨き
LOHAS風なアイテム・グッズ
みんなが注目のトレンド情報とは・・・?
So-netトレンドブログ
Livedoor Blog a
Livedoor Blog b
Livedoor Blog c
楽天ブログ
JUGEMブログ
Excitブログ
Seesaaブログ
Seesaaブログ
Googleブログ
なにこれオシャレ?トレンドアイテム情報
みんなの通販市場
無料のオファーでコツコツ稼ぐ方法
無料オファーのアフィリエイトで稼げるASP
ホーム
Hsc
人気ブログランキングへ
その他
Share by: