白いうさぎ前編 | かめ＠ゴミスティピョンの小説と日記

白いうさぎ　前編

「白いうさぎ」

あなたの存在を感じているとき、私の五感は研ぎ澄まされる。
あなたが居なくて寂しいときに、あなたを思い出して幸せな気持ちになれるように。

あなたが喋る時は、その一言一言を聞き漏らさぬように。

あなたが笑う時は、その笑顔を目に焼き付けておくように。

あなたの匂いも、あなたの熱も、あなたに触れられた髪の感触も、

あなたの全てを忘れないため、私の五感は研ぎ澄まされる。

まるで指の一本一本にまで血が流れていることを感じるくらいに、鋭く研ぎ澄まされる。

あなたが居ない時、それでも私は寂しくなるの。

どんなにあなたを思い出しても、思い出せば思い出すほど
私は寂しくなるの。

だから私は、あなたがいなくては死んでしまう。

あなたのそばに居られなくては死んでしまう。

一人では寂しくて死んでしまううさぎのよう。

私はうさぎ。
あなたの前では、一匹の白いうさぎ。

あなたに恋をした、白いうさぎ。

「おまえさ、あいつからなんか聞いてる？」
「ん？いや、特に何も聞いてないけど。・・・どした？」
「実はさ・・オレふられちゃった。」

・・あらら。ふられちゃったか。
まあ、正直時間の問題かと思ってたけど。

「・・そう。」
「・・うん。」
「・・原因は？」
「なんか、オレのこと好きじゃなくなったからって。」
「それだけ？」
「うん。それだけ。」
「そう・・。あの子らしいね。」

なんて励ましたらいいんだろう。
私はあなたに、なんて言えばいいんだろう・・・。

元気出しなって。
女はあの子だけじゃないよ。
ほら、周りもっと良く見てみなよ
あなたのこと好きだって女の子もきっといるって。
ほら、良く見てよ。
きっと、目の前に。
ほら・・・。

「まあ、元気出しなって。」
「うん・・」
「女の子は他にもいるって。」
「・・そうなんだけどさ・・・。」
「周り、もっと良く見てみなよ・・・」
「うん。周りね・・。ありがとう。・・それはわかってるんだけどね。」
「・・うん。」
「今のオレはあいつのことしか考えられないからなあ・・。」

・・がーん。それじゃあ続きが言えない。
もちろん、本気で言うつもりは無いんだけど・・。

「今日は、飲もうか。こういう時は飲むのが一番だよ！」
「・・うん。そだな。」
「今日はとことん付き合ってあげるから。どっちかが潰れるまで飲み比べしよう！」
「えー、おまえと勝負しても勝てる気しねえよ」
「もちろん、私は負ける気してないよ！覚悟してね。」
「ははは。まじかよー。」

・・ははは。まじかよー。・・・
冗談よ。あなたを無理やり元気づけようとしてるの。
あなたがやっと笑って、私はいま、すごくほっとしてるんだから。

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