夢のかけら




ケンタ君は、大きな化け物に追いかけられていました。
どんなに逃げても逃げても、化け物は大口を開けてケンタ君を追ってきます。

ケンタ君は、そんな怖い夢を見ていました。
夢の中の話だから、ケンタ君が化け物に捕まっても、夢から覚めればなんてことはありません。

けれど、これが夢だということに気がついていないケンタ君にとっては一大事。
このままじゃ食べられてしまうと、ケンタ君は今にも泣き出しそうです。



・・・・・・

一方その頃空の上で、サラという女の子が、きらきら光る小さな宝石のようなものを集めていました。

「これは、明日見る夢にしようかな。そしてこれは、あさって見る夢。」

サラは、好きな夢を自由に見ることができました。
きれいな宝石のようなものが、夢のかけらです。

「明日見る夢はとーってもきれいな夢だわ。」

サラが楽しみにしている明日の夢は、とってもきれいで、形もまん丸でした。
でも、あんまり円いきれいな夢だったものだから、サラがふと目をはなしたすきに、コロコロと転がっていってしまったのです。

「あー!待って、明日の夢!」

サラが転がる夢に気がついて追いかけた時にはもう遅く、円い夢は地上へと落ちていってしまいました。

「あーあ、せっかくの夢だったのに。」

サラは、なんとも残念な気持ちで、落ちていった夢をずっと空から見つめていました。



・・・・・・

「ママ、怖い夢見た。」

化け物に追われていたケンタ君は、夢から覚めました。
そして、もう眠れそうになくて、お母さんの寝ているベッドへとやってきたのです。

「あら、仕方ない子ね。こっちいらっしゃい」

お母さんは、ケンタ君を自分の隣に寝かせました。

「お母さんが一緒に寝てあげるから。もう安心よ・・・。」

ケンタ君はお母さんのぬくもりを感じながら、安心して眠りました。
そして、今まで見たこともないようなとってもステキな夢を見ました。



・・・・・・

サラが落とした夢は、ある男の子にたどり着き、その子がそれまで見ていたトゲトゲした夢と入れ替わりました。
サラは空の上から、サラが落とした夢を見て微笑んでいるその男の子を眺めていました。

サラは、夢を落とした時のガッカリした気分が晴れて、今はもうとても幸せな気持ちになっていました。



おわり

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