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2006.04.05
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23:30。
通勤電車。

電車に乗り込む。
ドアのすぐ脇に立つ。
読みかけの本を開く。
宇多田ヒカルとダニエルキィスの対談集。

途中駅でドアが開く。
人が乗り込む。

突然、懐かしい香りがした。


**************

その日は朝から雨だった。

「晴れてたらよかったんですけどね~」

敷地内の満開の桜を窓から眺めながら
担当者は言った。

「雨桜を観賞しながら帰ります」

アポが終わり、帰社を急ぐ。
都内までは約2時間。

13時からは大切な会議だ。

雨脚が収まる様子はない。

ブルーの傘にさくらの花びらのスタンプ。



普段は健康的なeating habitが
なんだかムショーにjunk foodな気分で、ウェンディーズへ駆け込む。
テイクアウトして、バーガーを頬張って、そこからがもうひと仕事。

そろそろめまいがしてきた23時。
仕事に見切りをつけて、帰り支度をし、いつも通り電車に乗った。



***************

彼は潔癖性というくらいキレイ好きだった。

セーターは毎回クリーニングされていて
ドレスパンツはアイロンがかけられ折り目正しく整っていた。

顔を寄せると、いつもきちんと剃られた頬からは
シェイビングジェルの香りがして
洗い立てのニットの香りと混じって
くすぐったい気分になった。

彼はヘビースモーカーだった。
ひと呼吸で、タバコの3分の1が灰になるほど深く吸うから
3口で吸い終わった。

ものの15秒。

彼のCivicにはいつもIce Age*があって
それはwhole saleで買いだめしたもの。

ヘビーに吸った後は、ガムを噛む。

そしてまた吸う。
その繰り返し。

私とキスするときのためにガムを噛んでいたのか
それはわからないけど、ニオイ消しになっていなかったことは確かだ。

強烈なたばことミントの味。

4年過ごした、大好きな味。

*******************

電車に乗り込んできた男は何の変哲もないサラリーマン。

香りは、タバコとミント。彼そのもの。

思い出した。
潔癖で不器用で短気でまじめな彼。
たばことミント味。



ちらちらと眺める私を不審そうに見返すサラリーマン。

気まずくなって、手元の対談集に目を落とす。

宇多田ヒカルが自分の書く詞について語っている。


「最後のキスはタバコのFlavorがした。」


今ここで言わなくても。

*****************


*Ice Age: アメリカのガムのブランド








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Last updated  2006.04.06 00:49:23
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