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2015.05.24
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カテゴリ: 突発性難聴体験記
突発性難聴治療のゴールデンタイムは2週間といわれており、治療開始は早ければ早いほどよいことに間違いは無い。高圧酸素治療(HBO)についても当然早く始めた方がいいのだが、 前にも述べたシステムの矛盾 が早期からのHBOを妨げているのが現状である。

最初に受診、または紹介された病院にたまたまHBOの設備があり、なおかつそこの耳鼻科医がHBOの効果を知っているという条件が揃わないと無理である。(設備があっても耳鼻科医がHBO反対派という病院が実際にあり、そこではHBOは行えない。)・・・すなわち何度も言うが運次第である。

HBO治療開始のタイミングと治療効果の関係について調べた論文 「高圧酸素療法を併用した突発性難聴522症例の治療成績」
が2000年に日本で出されている。香川労災病院での症例を基にしたものである。RCTではなく後方視的検討なので突っ込みどころはあるかもしれないが、症例数が多いのでかなり説得力がある。
(ここには敢えて引用しないが、図1のグラフは特にRCTでないことに留意すべきで、高圧酸素治療群には重症例が偏って入っていることが本文を読めばわかる。従って高圧酸素治療群の方が成績が悪いのは当然なのである。)

この論文で注目すべきは以下のグラフである。
両群の比較.jpg

I群は発症7日以内にHBOを開始できた患者で、具体的には最初から香川労災病院でステロイド+HBOを開始した患者か、最初他院でステロイド治療を行っていたが極早い時期に香川労災に紹介されたおかげで発症7日以内にHBOを開始できた患者である。
II群は前医でステロイド治療を受けて無効であり、かつ紹介時期が遅く発症8日以後にHBOを開始した患者である。(私の場合こちらに入る)



「著明回復」や「回復」などの細かい定義は本文を参照していただければいいが、改善率はI群で66.6%、II群で38.8%と発症7日以内に開始した方が断然成績がいい。 発症7日以内に開始すれば7割近くの例で聴力が改善するのである。

さらにHBO開始時期を細かく分類して比較したのが下のグラフ。(紛らわしいが、この文献では高圧酸素治療をOHPと略している)
日数と予後.jpg

縦軸がHBOを開始した時期で、開始時期が遅いほどHBOの効果も低くなるのがわかる。特に発症15日以後の開始例からガタンと効果が落ちる。
実は私はこの文献を入院前に読んでいたので、何としても発症14日以内にHBOを受けられるようにと考えていたのである。(実際にはシステムの問題と、私のとまどいから17日目からの開始になってしまったのは以前書いた通り)

昨日今日と長々と書いてきたが、結論は自明である。
突発性難聴に対してHBOは有効であるが、発症7日以内、ギリギリ遅くとも14日以内に開始しないと効果が期待で きない ということである。

しかるに現在の医療システムの中で発症7日内にHBOを受けるのはかなりむずかしい。多くの場合ステロイドの効果が無かったときに初めてHBOのある施設に紹介されるからである。
どこにHBO設備があってかつ突発性難聴に使用可能かなどを患者の側で調べて強引に計画を立てていかないと無理なので ある。
患者の立場というのは弱い。患者から担当医に自分の希望をあからさまに主張するのは憚られる、あるいは担当医に全てをお任せすべきと考える人の方が多いだろう。しかし実は突発性難聴に限っては耳鼻科医も何がベストかわかっていない。医学的な矛盾が無い限り患者の希望が最優先されるべき疾患なのである。





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Last updated  2015.05.24 14:58:32
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Re:突発性難聴 高圧酸素治療・・・やるなら一刻も早く(05/24)  
てつろう さん
はじめまして。
突発性難聴で検索してこちらのブログに辿りつきました。
私は右耳の突発性難聴の疑いから耳鼻咽喉科で治療を受けました。発病後2週間で若干の耳鳴りおよび眩暈は残りましたが幸いにもほぼ聴力は恢復しております。
難聴の程度が軽かったことと、低音部の聴こえが低下していたことから、低音障害型感音難聴と暫定的に医師から診断されています。
低音障害型感音難聴は再発を繰り返すことが多いことと無事な左耳の突難罹患の恐怖から、HPやブログ含め難聴に関するさまざまな記事を読んできましたが、高圧酸素治療の効能についてこちらほど明確に説明された文章には初めて出会いました。
突発性難聴の治療は、まずステロイド、効かなかったら高圧酸素治療などその他の療法という順序で行われるものだと理解していましたが、高圧酸素治療はむしろ最初に施した方が予後が良いという香川労災病院での症例には驚きました。
かつ、ご自身の体験から、最初から高圧酸素治療を受けることが現在の医療制度のなかでは運用上極めて困難なことも痛烈に浮かび上がってきます。
突発性難聴カテゴリの記事を全て読みましたが、現役医師としてかつ患者の一人としての克明な記録はたいへん貴重なもので、私には得るものが大きかった。
突発性難聴治療が社会的合意のなかで円滑に進められるようになるのは残念ながらかなり先のことになりそうですが、自分と家族と友人を守るために先生のブログは少なくとも私のためになります。ありがとうございます。 (2016.11.19 14:44:56)

Re[1]:突発性難聴 高圧酸素治療・・・やるなら一刻も早く(05/24)  
てつろうさん
ありがとうございます。
病気というのは本当になってみないとわからないものですね。医師でありながら専門が異なれば一般の方と同じで不安や苛立ちの中であがいてしまいます。長々と書かせて頂いたグチのような闘病記が少しでもお役に立てれば幸いです。
おっしゃるように低音障害型感音性難聴は繰り返しやすいという点で典型的な突発性難聴とは別のカテゴリーとしているテキストが多いようです。しかし、なにしろ原因がわからないままに耳鼻科医も「ステロイドぐらいしか無いな」というスタンスですから、患者側がある程度意思表示していかないと現状から何も変わらないのかなあと危惧しております。
uHearなどのアプリで定期的に自己聴力検査を行うのも耳を守る一法かと思います。とにかくお互い耳を大事にしていきましょう。 (2016.11.23 01:41:03)

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