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カテゴリ: Tomoest
その28 ~悪戯と報復(いたずらとほうふく)~



「んーっ…。ちょっと悪戯しちゃおうかなぁ。」


ふと思いついた。

せっかくのいい機会だから、これを逃さない手はないわよね。

さっきの仕返し…。なにが『Tomoest』よ。

課長が言い出したことかもしれないけど、広めたのはたぶん理紗だ。


だからこれぐらいの可愛い悪戯なんて許されるわよね。


うんうん、許される許される。どうせ『酔っ払ったもん勝ち』ってことわざもあるしね。



洗面所に近づくとドライヤーの音が聞こえる。




チャンス!


後ろから攻めて…。



「理紗~! たいへん! い、いたの。女の子のお化けが!」


ワザと鏡に映らないように隠れて声を上げてみた。


「ええーっ!」


絶叫と共にガチャンと床に落ちるドライヤーの音がした。この悪戯の代償は意外と高いかもしれない。

あのイオンドライヤーって結構高かったんだけどな…。


「もう! 巴! ウチ、だからいややって言うてたやんか!
 アンタな、悪魔とかお化けとか魔法の本、持ちすぎなんやって!
 そんなん持ってるから、そういう目にあうねん。
 オカルト好きもほどほどにせーな、呪われてからやったら遅いねんで!」





「ちょっと! 聞いてる、巴? いくらウチでもそんなん相手に出来るわけ…。」


え…? これは予想外。てっきり小さく震えていると思っていたのに。

理紗はなんとバスタオルを巻いた姿のままで飛び出してきた。


やっぱり理紗って…友達想いなんだ。

悪戯は半分成功半分失敗ってところね。でも、嬉しい失敗だったかなぁ。





私はにっこり笑って、理紗に金糸雀を差し出した。

金糸雀は何が起こっているのかわからずキョトンとした顔をしている。

一瞬、顔が引きつり悲鳴を上げようとした理紗が硬直したまま止まった。

両手を口にあててなんとか悲鳴だけは押し殺したみたいだった。

その時、体に巻いていたバスタオルがバサッと落ちた。



「理紗、バスタオル落ちたわよ?」

私は何もなかったような顔をしてそう言った。


「お、お化け…!?」


理紗の顔は引きつったままだ。

あれ? 信じた? もしかしてこの金糸雀をお化けだと思っている?

こんな可愛いお化けがいるわけないのにね。でも、まずいかな。


「あっ、この子は金糸雀。雛苺と同じローゼンメイデンの第2ドール。
 お化けじゃないわよ。理紗、脅かしてごめんね。」

「お化けとちゃうの?」

「うん。ほらよく見て。こんなかわいいお人形がお化けのわけないでしょ。」


金糸雀はきょろきょろと私と理紗の顔を交互に見て自分が何に利用されているのかわからない感じだ。

そして理紗は恐る恐る手を差し出して金糸雀を受け取った。


「人形? ローゼンメイデン? この子が…?」


理紗は金糸雀を抱きかかえて、まだ理解できていない様子で金糸雀を見つめている。


「金糸雀、その人は私の友達の理紗っていうの。怖くないから大丈夫よ。
 それからごめん。理紗を脅かすのにあなたを使っちゃった。」


あっ、いけない。笑いがこみ上げてきた。口に手をあててクククっと笑った。

その時ようやく理紗は気づいたみたいだ。


「あー! 巴、騙したなー! あっちゃー。やられたわ。
 ウチともあろうもんが、こんな手に引っかかるなんて…。
 ほんま、しゃーないなぁ。くやしいけど負けを認めたるわ。」


何が負けなのかわからないけど、こっちは勝ちってことでいいのよね。


「なにかしら?」

金糸雀が困った顔をしている。まだ事態が理解できてないみたい。

ドールだけにおもちゃにされちゃったって感じよね。あ、悪いの私か…。


「わーっ! しゃべった!? この子、しゃべれるん?」


「当たり前でしょ。ローゼンメイデンなんだから。
 それよりさ、理紗。いくら暑いからっていつまでも素っ裸じゃ風邪をひくわよ。」

私は足元のバスタオルを指差してそう言った。

驚いた顔で足元を見る理紗の顔が真っ赤になる。


「へっ? あっ、もう! 巴ったらすけべえやなぁ。人の裸ジロジロ見たらお金取るよ。」

そう言って、理紗は金糸雀を左手に抱えたまましゃがんでバスタオルを拾った。

金糸雀を降ろせばいいのに…。


「えーっと、金糸雀ちゃんやったっけ? ウチの名前は理紗って言うねん。よろしくな
 それから、あそこにおる酔っ払いのおばちゃんの一応…友達やから。」


…って、どういう紹介の仕方しているのよ。しかも『おばちゃん』!?


「うん。そうなの。ともちゃん、お酒臭くって、カナ、顔を上げれなかったかしら。」


…って、アンタもそうかい!! しかも『おばちゃん』を何気に肯定されてる!?



じゃあ何? さっきまで私の胸に顔をうずめて泣いてたのはそういう理由だったの?


ドールに酒臭いって嫌われる私って…。なんだかすごいショックだわ。


「あれ? それじゃ金糸雀、理紗はお酒臭くないの? 理紗だって私に負けないくらい飲んでたわよ。」


金糸雀は返事をする代わりに首をブンブン振った。


「そらそうやわ、それが女としてのエチケットって言うもんや。常に清潔さを心がけんとなぁ。
 ウチが普段から言うてるやろ、もっと女を磨けって。」


そんな事、言われたって…。さっきまで一緒に飲んでたの誰よ。


「そんな格好で言われたって説得力ありません!
 理紗だってもう少し恥じらいってものを意識しなさいよ。」


理紗だって裸じゃん。隠すとこ隠してから言ってほしいものよ。



「何言うてるん。こんなセクシーなお姉さまに向かって。なあ、カナちゃん?」


金糸雀はどう答えたものか指を口にくわえて理紗をじっと見ていた。




                         …つづく。





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最終更新日  2006/10/31 04:03:13 AM
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