鍋・フライパンあれこれ美味
100万ポイント山分け!1日5回検索で1ポイントもらえる
>>
人気記事ランキング
ブログを作成
楽天市場
000000
HOME
|
DIARY
|
PROFILE
【フォローする】
【ログイン】
K/Night
便利屋 in 篠慶学園―前編―
いつも通りの朝。生徒の話し声で賑わう学校の廊下を、ある教室を目指して走っているある男子生徒がいた。
上杉竜矢〈うえすぎ りゅうや〉、十六歳、高校二年B組。
少し癖のある普通の男子よりも少し長めの茶色い髪に、実年齢よりも年下に見られるほどの童顔の持ち主。
そんな竜矢が目指しているのは、高校一年A組。彼の幼馴染がいる教室である。竜矢はその教室の戸に手を掛けると勢い良く開けた。
「みーなぎ!」
すでに何度も来たことのある馴染みの教室の窓際の一番後ろの机にいつも『みなぎ』はいる。椅子に腰を掛け、本をいつも読んでいて、しかし竜矢に気づくと必ず笑顔を浮かべて迎えてくれる。竜矢は『みなぎ』の傍に寄ると、後ろから抱きついた。
「竜矢か。どうした?何かあったのか?」
本を閉じて『みなぎ』は竜矢に聞く。
天生水生〈あもう みなぎ〉、十五歳、高校一年A組、生徒会委員。
整った顔立ちに白い肌、176センチの身長にストレートの腰まである黒髪を竜矢と同じく一つに束ねた、誰もが振り返るような美形の人物。性格もなかなか良く、真面目。身に着けている男子制服は誰よりも水生に似合っている。そして全生徒の上に立つ生徒会委員のメンバーに選ばれるほどの成績優秀者だ。
しかしその水生にも一つ、ある問題があった。
まず、クラス名簿を見てみよう。男子の名簿の中には『天生水城〈あもう すいじょう〉』という名前こそあるが、『天生水生』という名前はない。ならばと、女子の名簿を見る。――― 出席番号一番、『天生水生』――― そう、水生は女だった。
では、なぜ水生が男子制服を着ているかと簡単に説明すると、物心ついたときからスカートをはいたことが無いというのもあるのだが、本人いわくこの顔と身長の自分がスカートをはくなんて不気味だ、怖い、恐ろしすぎる!と言うことで好んで男子制服を着ているとういう訳だ。
「悪いが一限目は体育なんだ。竜矢の話しが急用ではなければ二限目の後の二十分休みで話しを聞くのでいいかな?」
「ん~?別に用があって来たわけじゃないんだ。ただ、水生に会いに来ただけ。」
人懐っこい笑顔を浮かべながら言う竜矢・・・・彼は水生のことが好きだった。
竜矢と水生の父親達が刑事で、しかも同じ職場の親友同士だったため、赤ん坊のときから一緒だった二人。今では竜矢にとって水生は隣に居て当然の存在となっていた。
ただ、水生は頭脳明晰、また勘が鋭かったりする割には恋愛ということに関してだけは、これでもかと言うくらい鈍感なので竜矢のあからさまな行動にも全く持って気づかない。まあ、竜矢もあえて気づいてもらおうなんてさらさら思ってないのだが。
「じゃあ、俺、教室に戻るね。今日も一緒にお昼食べよーな。」
「ああ、わかった。それと、昼を食べた後に昨日依頼された浮気調査をしにいくから。」
「了解。」
竜矢は笑ってピースをすると教室を出ていった。
この学園の中で唯一委員会にも部活にも属さないものが一つある。それは竜矢と水生の二人だけで活動している『便利屋』である。
この『便利屋』、水生が篠慶学園に入学したときに竜矢が『将来刑事になるんだったら絶対修行になる』と発案したもので、本来なら将来の夢を同じくした竜矢の兄、そして水生の兄もこの便利屋に入るはずだったのだが、『面倒くさい』の一言で片付けられ、いじけた竜矢の姿に見兼ねて水生が賛成して出来たものだった。もちろん水生も将来は父親の職業の刑事になりたいと思っていたので、この便利屋に入ることにはためらいは無かった。
始めのうちはあまり繁盛こそしなかったが、水生の推理力、洞察力に竜矢の運動力、野性的な勘等によって今では数々の事件(?)を解決し、依頼の絶えないほど有名なものになったほどだ。その依頼のほとんどが生徒会長でもある水生のいとこからなのだが・・・・。
そしてこの物語の事件もやはりそのいとこから依頼されたことから始まるのだった。
―――― その日の放課後 ――――
H・Rが終わり、生徒達は帰る人、部活へ行く人、委員会へ行く人、掃除場所へ行く人と、それぞれ教室を出て行く。
そんな中、水生も帰る人の一人で帰り支度をしていたのだが、ある人物に声を掛けられる。
黒い腰までのストレートな髪を結わくことなく流れるままに背中に流し、長身の少しつり上がった目の水生と同じ顔の人物。
天生水城〈あもう すいじょう〉、十五歳、高校一年A組、図書委員、水生の双子の兄。
水生と同じく容姿端麗で成績優秀。少し意地悪な性格だがそれは時折見せる水生と同じこぼれるような笑顔でカバーしていたりする。女性に興味が無いので彼女はもちろん居ない。かといって男に興味があるわけでもない。水生とその弟が一番好きというシスコン、ブラコン野郎。その次が両親と竜矢と竜矢の兄なのだが、今は水生のことが好きな竜矢のことをあまり快く思って居なかったりする。
「水生。俺さ、ダチに頼まれて掃除変わんなくちゃいけないんだ。ちょっと竜矢達と一緒に図書室で待っててくれないかな。」
「その竜矢達は確か今日掃除だよ。まあ、ゆっくりやってなよ。私も依頼主に依頼結果を報告しに行かなくてはならないしさ。」
「うん、でもみんなを待たせちゃ悪いからさ、なるべく早めに終わらせるよ。じゃあ、図書室でな。」
水城は水生の肩を軽く叩くと教室を出ていった。その姿を見送った後、水生も教室を出るが、廊下に見覚えのある人物が居るのに気づいた。相手のほうはすでに水生に気づいており、軽く手を振っている。
「あれ、『そうま』じゃないか。」
彼がここに居るということは・・・・・嫌な予感を胸に抱きつつ歩み寄る。『そうま』と呼ばれた黒髪に碧眼の人物はそんな思いを抱いている水生をよそににっこりと微笑んだ。
麻生蒼麻〈あそう そうま〉、十八歳、高校三年A組、生徒会委員長、水生、水城のいとこ。
もう血筋というべきか、やはり容姿端麗の成績優秀で毎回学年トップ。いつも水生と竜矢達を心配している優しいお兄さんタイプ。しかし使えるものなら何でも使うという性格で、手間の掛かる問題はすべて便利屋を営んでいる竜矢と水生に押し付けるという一面も持っている。手先が器用で、機械をいじるのが好き。自身で小さいものだが機械を作ることもある。将来の夢はみんなと同じで刑事を志望。
「やあ、水生。良かったよ、会えて。もしかしたらもう帰ったかも知れないと思ったんだ。」
「・・・・・・・・良かったな。帰ってなくて。私は蒼麻の話を聞く前に帰りたいんだけどな。」
引きつる顔を何とか抑えている水生に対し、蒼麻は楽しそうに話す。まるで人の不幸を楽しんでいるかのようだ。本人は全くその気は無いのだが・・・・。
「それで、もうわかっているとは思うけど、便利屋に依頼したいことがあるんだ。今依頼することはあまり口外したくないから出来れば静かな、人のあまりこない場所で話したいんだけど・・・・。」
「嫌だ。その依頼、断る。」
「嘘ッ!何で!?」
即答された蒼麻は、信じられないと言うかのようなりアクションをするが、さして動揺もしていない様子だ。必ずこの依頼を受けてくれるという自信の表れなのか、その顔に笑みさえ浮かべている。
「だって、蒼麻の依頼はいつも厄介なことになるじゃないか。だから今回は、絶対に受けないからな。」
そう言い放って踵を返す水生。だが、
「・・・・・発信機・・・・・。」
蒼麻の呟いた言葉に足を止める。
「今なら追跡機も付けて作ってあげるんだけどな。」
「その話、本当か?」
前々から欲しかった発信機と追跡機。依頼をこなすのにそれがあればどんなに楽だろうかと、いつも思っていた。それが、無料とまではいかないが、安価で手に入るとなれば、飛びつかないわけがない。この時ばかりは蒼麻が機械を作れて良かったと切実に思う。ただ、それで依頼を受けるというのは何か情けないような気もするが・・・・。
水生は一息つくと蒼麻に言った。
「さっきの依頼、受けようじゃないか。」
その言葉に蒼麻が満足げな笑みを浮かべたのは言うまでも無い。
「ここでいいよな?どうぞ、椅子に座って。」
居るとすれば勉強をしているか、本を読んでいる人くらいしかいないその場所に蒼麻を通し、座らせる。
水生が話を聞くために選んだ場所は図書室だった。
「で、依頼内容は?」
鞄から手帳を取り出し、水生自身も席につく。それを待った後、蒼麻は口を開いた。
「この頃・・・・生徒達が突然居なくなってしまったという話を聞いたことがあるかい?」
「少しだけだけどな。噂で耳にしたことがある。でも、その生徒はちゃんと見つかったんだろ?」
「まあ・・・・・一応な。でも彼等全員殴られていてぼろぼろだったよ。」
「・・・・・・暴力事件・・・・ね・・・。」
水生は呟く。その言葉に蒼麻は頷いた。
「聞いた話によると、犯人はこの学校の中学生で特徴は、こげ茶の髪に紅い瞳らしい。水生達にはその特徴に合った人物を見つけて欲しいんだ。」
「それはわかったが・・・・。」
今まで動かしていた手を止めると水生は顔を上げる。
「そこまでわかっているのならなぜ自分で見つけないんだ?蒼麻なら今の特徴を聞いただけでどこの誰かぐらいすぐ探し出せるだろ。」
「うん、まあ、やろうと思えば出来るんだけど、ちょっと気になることが合ってね。」
「気になること?」
「そう、犯人のことでね。」
蒼麻は指を組むと真っ直ぐと水生を見据えた。
「犯人は事件を起こす前、消えた生徒たちにどうやらいじめられていたらしいんだ。これは直接その生徒に聞いたんだけどね。その時の犯人はいたって弱気でオドオドしていたらしい。で、そこまではいいとしよう。だが、そこからが問題なんだ。犯人は事件を起こす。理由は多分、復讐するためだろう。これはあくまで俺の推測だけどね。でも、その時の犯人の様子が事件を起こす前と明らかに違うらしいんだ。どこか小憎らしくて生意気な感じの、強気な顔をしていたらしい。まるで別人だったと、全員が全員言っていた。」
「・・・二重人格ってやつかな?解離性同一性障害〈かいりせいどういつせいしょうがい〉とか言う・・・・。」
「その線もあるかもしれないね。あるいは・・・・。」
椅子から腰を上げると蒼麻は机に手を置いた。
「水生達と竜矢達と同じ、双子、ということもあるかもしれない。」
「双子・・・・・か。」
その言葉に、蒼麻の今までの話に、水生は今日のある出来事を思い出していた。
――――― 高校一年A組 一限目 体育 ―――――
外はカラリと晴れ渡った夏日よりだった。梅雨の季節だったので湿気が多く、蒸し暑い。少し動いただけでも汗が流れ落ちるくらいだった。
そんな中、生徒たちは校庭で思い思いに喋っている。
一方、水生はというと、先生に頼まれ体育倉庫にライン引きを取りに行っていた。途中途中には中等部の生徒らしい子達が理科の授業らしく花壇の花を観察している。
広い校庭を横切り、校舎脇にある体育倉庫に着くと、水生はその扉を開けた。
「・・・・・・っ・・・・!」
「・・・・・・?」
開けた瞬間、誰かの声が聞こえたような気がした。
水生は扉から手を離し、辺りを見渡す。すると、中等部の生徒らしい人物が、高等部の生徒であろう人物に、校舎裏に連れていかれるところを目撃した。あの様子は普通とは言いがたい様子だった。
深く考える前に水生は走りは始めていた。
「・・・・・・まえが・・・・だろ?」
連れこまれた生徒が居る場所に近づくたびに、断片的に誰かの声が聞こえる。はっきり聞こえたのは ―――― 『お前が生徒たちを殴ったんだろ?』という言葉だけ・・・。
しかし、連れこまれた生徒は否定しているようだった。その声が、恐怖で極限まで達したとき、やっとのことで水生はその場所に着いた。
「何をしているんだ?」
息を整えぬまま、水生は相手に言う。
「何をしているんだ、と聞いているんだが。」
未だに中等部の生徒から手を離さない二人に、水生は眼光を鋭くさせた。
「ちっ・・・・おいっ、逃げるぞ。」
生徒は手を離すと、舌打ちして水生が来た反対の方向に走って行った。
追いかけるか、中等部の生徒を助けるか、迷わず後方を選ぶとうずくまっている生徒に近寄った。
「大丈夫か?」
「・・・・・・。」
声を掛けるが返事は無い。服は乱れ、観察記録を書いていたと思われるプリントが地面にばらばらに落ちている。根元でうずくまる体は小刻みに震えていた。
「大丈夫か?」
もう一度、今度はゆっくりと声を掛ける。すると、生徒がゆっくりと、しかし怯えた様子で顔を上げた。
「・・・・あっ・・・・。」
怯えた目が水生を捉える。生徒には水生までもが自分に危害を加える者だと思っているのか、口は思うように動かず開閉するだけで、目には瞳いっぱいの涙が溜まっていた。
水生はそんな生徒の前にしゃがむと、目に溜まった涙を拭って、ゆっくりと話した。
「私はアイツ等とは違う。お前に危害を加えるつもりは無いよ。だから、安心して欲しい。」
水生は微笑むと手を差し伸べる。生徒は一瞬躊躇ったが、その手を取ると立ちあがった。
生徒はこげ茶色の髪に大きな紅い瞳の、可愛らしい少年だった。身長も水生の胸辺りまでしかない。
「怪我は無さそうだな。良かった。」
服についた土を払ってあげながら水生は言う。弟を見ているかのようだった。
「あのっ・・・・。」
「ん?どうした?」
生徒は一瞬口篭もる。が、いきなり勢い良く頭を下げて一目散に走って行った。
「・・・・?一体・・・どうしたんだろう。」
戸惑う水生。その様子を陰で見ていた人物が一人いた。
――――― 昼休み 図書室の中 ―――――
机の並ぶその場所の一番奥の窓側の一番右側の席に竜矢と水生は向かい合って座っていた。
「どうだ?様子は。」
「うん。結果は・・・・白、だな。水生、確認してくれないかな。」
「わかった。」
竜矢は耳にあてていたイヤホンを水生に渡す。水生は一、二分聞いた後、竜矢の言った通りだ、と一言言うと、手帳に結果を記入した。
イヤホンから流れてくる音、それは人の声だ。もっと正確に言うと、竜矢達が座っている場所から反対側のそして三つ前の席に座っている生徒二人の声だ。一人は依頼主の恋人、もう一人は浮気相手じゃないかと依頼主に思われている生徒だ。
竜矢と水生は昼食を終えた後図書室に入り、二人を見つけた後、その生徒達が座っている机の裏に盗聴機を仕掛けたのだった。
「はあ~・・・・終わったぁ~。」
「ご苦労様、竜矢。」
盗聴機の電源をオフにして、水生は言った。それは竜矢にとって他の誰に言われるより嬉しい言葉だった。
「じゃあ、俺、盗聴機取ってくるな。壊れたり無くなったりしたら困るし。」
「頼むよ。私はちょっと借りたい本があるからそこの本棚にいるな。」
言って水生は机のすぐ後ろの本棚を指差した。
「うん。わかった。」
お互い立ちあがるとそれぞれ目的の場所に歩いて行った。
竜矢は怪しまれないように細心の注意を払いながらターゲットの生徒達の机の前に行くと、素早く机の裏に付けてあった盗聴機を取る。そのままズボンのポケットにしまうと、先程まで座っていた机に戻った。いや、戻ろうとした。不意に、竜矢の足が止まった。
「・・・・・?」
何か動いた。本来なら動くはずが無い本棚にしまってある本が微かながら動いたような気がした。だが、その本棚の真下にいる水生は気づいていないらしい。取り出した分厚い本のページをペラペラとめくってはしまい、取り出してはページをめくっている。
(俺、疲れてんのかなぁ。だって本が動くはずないし・・・・。)
眉間を押さえ、顔を上げる。そしてもう一度本棚を見た。
「・・・・・!」
今度ははっきりと動いた。ゆっくりと徐々に前に出ていく。まるで意志を持ったかのように・・・。
あそこに水生をいさせてはいけない・・・・そんな考えが頭をよぎる。無意識のうちに竜矢は走り、水生の手を掴む。
「 ――――― ?!」
水生の手から本が落ちる。顔は困惑している。かまわず引き寄せると、その直後に先程まで水生が居た場所に分厚い本が何冊も落ちてきた。
「 ―――― な・・・・。」
それを見た水生は絶句する。
カウンターに居た水城がそれに気づき、走り寄った。
「二人共、大丈夫か?」
「大丈夫だよ。水城。」
手を離し答える。水城は、良かった、と笑うと、床に落ちた本を手に取った。
「おっかしいなあ。こんな重くて分厚い本、そう簡単に落ちるはずないんだけど・・・。」
不思議そうに呟く水城。竜矢は何か考えているようだ。水生は ――――
「どうしたの?水生。」
動こうとしていなかった水生に気づき、竜矢は顔を覗きこんだ。
「ん、いや。何でも無い。」
「そう?」
「ああ、大丈夫だ。」
いつも通りの笑顔を向ける。何か引っかかったが、あえて何も言わず、竜矢は水城と一緒に本を片付け始めた。
水生はもう一度先程まで見ていた場所を見る。
図書室の出入り口 ――――― 本が落ちた、その後出入り口に向かっていった生徒。こげ茶色の髪に紅い瞳 ―――― 水生を見たその顔は、どこか笑っているように見えた。
「・・・・なぎ・・・・水生。」
「・・・・・・ん?」
気づくと目の前に蒼麻の心配した顔があった。
「どうした?ボーっとして。」
「うん・・・・。」
一度は気づいたもののまだ何か考えているらしい。返事をしたのはいいが、問いには答えなかった。
蒼麻はまた座ると水生の言葉を待った。
「蒼麻・・・・発信機と追跡機はいつ頃できるか?」
不意に水生が喋る。蒼麻は何か気になったが後回しにし、答えた。
「早くて二、三日で出来ると思うけど・・・・でもどうしてそんなことを聞くんだ?」
「どうやら私は犯人の次のターゲットらしい。」
苦笑気味に言われた言葉は蒼麻を驚かせた。
「えっ・・・どうして・・・。一体何があったんだ?」
詰め寄る蒼麻。水生は指を組むと今日あったことの全てを話した。
「・・・・・・そうか、そんなことが・・・・。」
先程とは打って変わって険しい顔になった蒼麻が呟く。立ちあがると机に手を置いた。
「わかった。なるべく早めにあの二つを作っておくよ。」
「ありがとう。蒼麻。」
「水生はあまり無茶をしないようにな。」
蒼麻は水生の頭をクシャリと撫でると図書室を後にした。
「へえ~、そんなことがあったんだ。」
学校からの帰り道、水生は竜矢達に今日あったことと蒼麻に依頼された内容を話した。
「その依頼、本当に受けても良かったのか?」
そう言ったのは水城だ。今日、今さっき危険な目に遭ったのに蒼麻の依頼を受けたことでかなり心配しているようだ。
「水城の言う通りだ。本当に大丈夫なのか?」
水城の意見に同感したのは竜矢の兄の『たつや』だ。
上杉竜也〈うえすぎ たつや〉、十六歳、高校二年C組、生徒会委員、竜矢の双子の兄。
癖のある茶色の髪を一つに束ねた、この四人の中で一番背の高い人物。竜矢とは違い、童顔ではなく大人びた顔で、落ち着きがある。また、勉強があまり得意なほうではない竜矢に対し、竜也は成績が良かった。四人の中のリーダー的存在だ。
「大丈夫だろ。何も一人でやるって訳じゃないし。竜矢がいるからな。」
「大丈夫だって。いざって時は俺が水生の事守るしさ。」
言って二人は顔を合わせると、がんばろうなー、と口を揃えた。どうやら今更依頼を断る気は無いらしい。水城と竜也はため息をついた。心配事が明日からまた増えるかと思うと、またため息が出る。
「ったく、本当にお前達はいつも心配ばっかりさせるんだから。何かあったら俺達にも言えよ?力になれるかも知れないから。」
「そうだ。二人だけで無理にでも解決しようなんて思うなよ?そう言うときは俺達に言うんだぞ。」
まるで子供に言い聞かすように竜也と水城は言った。この言葉は依頼を受けたとき必ず二人が口を揃えて言う言葉だ。竜矢と水生は笑う。心配してくれているのが嬉しかった。
「わかったよ。」
「大丈夫だって。」
二人につられて竜也と水城も笑った。
赤い夕日がとても綺麗だった。
「水生。」
「ん?竜也か。珍しいな、お前が図書室に来るなんて。」
この間の蒼麻の依頼を受けてから三日後。竜也は図書室で水生と会った。
「ああ、ちょっと調べることがあってな。そう言う水生はどうしてここに?」
「私か?」
水生は手に持っていた本を顔の辺りまで上げると竜也に見せた。
「私はこれを返しに来たんだ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そ・・そうか。」
竜也の顔が引きつる。本の題名は『知ってお得!犯罪者、空き巣、泥棒の行動の仕方、心理!』。
一体、この図書室のどこにこんな本があったのだろうか?いや、その前に水生はどうやってこの本を見つけ出せたのか?
「陸也〈りくや〉さんがさ、私が小さいころ、『犯人の手の内を知ることはとても重要なことだ!だから、いつか必ず知っておくんだよ。』って力説していたのを思い出して、この間借りたんだ。」
(父さん・・・・。)
内心ため息をつき、竜也は頭を抱えた。それに水生は気づく。
「どうしたんだ?竜也。」
「いや、何でも無い。気にするな。それより、依頼のほうはどうなった?」
「ああ、あれ?」
水生は本を降ろすと竜也と一緒に歩き始める。
「犯人の名前と学年はわかったんだ。蒼麻のおかげでね。確か、中学一年B組の、『きりしま ふう』と『きりしま じん』の二人だったな。」
「二人?」
「そう、二人だ。双子なんだよ。『きりしま ふう』と『きりしま じん』は。」
借りていた本をカウンターに返し、竜也の調べものに付き合いながら水生は言う。
「それでな、『ふう』の方が兄で『じん』の方が弟なんだが、いじめにあっている方が『じん』の方らしいんだ。それで、ここからは私の考えなんだが、『じん』をいじめていた生徒を『ふう』が怒って事件を起こしたんじゃないかって。でもな。」
「でも?」
「証拠が無いんだよ。殴られた生徒も報復が怖いらしく話してくれない。」
後半へ
TOP
篠慶学園TOP
ジャンル別一覧
出産・子育て
ファッション
美容・コスメ
健康・ダイエット
生活・インテリア
料理・食べ物
ドリンク・お酒
ペット
趣味・ゲーム
映画・TV
音楽
読書・コミック
旅行・海外情報
園芸
スポーツ
アウトドア・釣り
車・バイク
パソコン・家電
そのほか
すべてのジャンル
人気のクチコミテーマ
アニメ・コミック・ゲームにまつわる…
川崎行ったり、銀座行ったり
(2025-11-25 01:00:05)
フォトライフ
源氏物語〔34帖 若菜 55〕
(2025-11-24 11:30:05)
どんな写真を撮ってるの??(*^-^*)
三連休最終日、オートバイを洗車♪
(2025-11-24 19:45:04)
© Rakuten Group, Inc.
X
共有
Facebook
Twitter
Google +
LinkedIn
Email
Design
a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧
|
PC版を閲覧
人気ブログランキングへ
無料自動相互リンク
にほんブログ村 女磨き
LOHAS風なアイテム・グッズ
みんなが注目のトレンド情報とは・・・?
So-netトレンドブログ
Livedoor Blog a
Livedoor Blog b
Livedoor Blog c
楽天ブログ
JUGEMブログ
Excitブログ
Seesaaブログ
Seesaaブログ
Googleブログ
なにこれオシャレ?トレンドアイテム情報
みんなの通販市場
無料のオファーでコツコツ稼ぐ方法
無料オファーのアフィリエイトで稼げるASP
ホーム
Hsc
人気ブログランキングへ
その他
Share by: